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“JavaOne”開催直前!世界最大のJava開発者会議の見所をチェック!!

2003年06月08日 19時09分更新

文● 渡邉利和

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Moscone Center
今年も昨年と同じ米国San FranciscoのMoscone Centerを会場に開催される(写真は昨年のようす)

6月10~13日の4日間の予定で、米国San FranciscoのMoscone Centerを会場に“JavaOne(2003 JavaOne Conference)”が開催される。世界中のJavaの開発者が一堂に会する世界最大規模の開発者会議(Developer Conference)として知られるJavaOneだが、Javaを取り巻く情勢が変化するのに合わせて、かつての「Sunが開催するイベント」から、その性格を変えてきている。ASCII24では、このイベントのようすを随時紹介していく予定だが、今回はその見所を簡単に紹介しておこう。



Sunから見た“JavaOne”の位置づけ

まずは、サン・マイクロシステムズ(株)広報部に、Sunの立場から「“JavaOne”とは何か?」を説明してもらった。

「San Franciscoでの“JavaOne”は、今年で8回目になります。開催初期から年々規模を拡大し、2000年頃に最大規模に達しましたが、その後徐々に規模を縮小しつつあります。ただし、この規模というのは参加人数という意味ではありません。Javaの発展期に開催されていたJavaOneには、お祭り的な要素が多分にありました。この頃はJavaの成長期であったため、毎回新製品や新技術の紹介が行なわれ、人目を惹く要素も多かったわけです。しかし、2000年頃からはJavaは目新しいものではなくなり、Javaはごく当たり前に使われる技術になりました。さらに、SunのJavaから、Sunの手を離れ、コミュニティによって育てられる段階に移行したこともあります」。

もともとのJavaの開発はSunが行なったが、一社独占を避け、ユーザーの声を仕様に採り入れていくためにJCP(Java Community Process)を策定、仕様策定の権限を任意参加によるコミュニティに移管した。
「コミュニティでの意志決定プロセスは明確に定義されており、仕様案はJSR(Java Specification Request)という形で公開されてコミュニティによる検討を受けます。従って、現在のJavaはSunが勝手に都合のいいように変更していける存在ではなく、コミュニティが主体となって作り上げるものに変わっています。つまり、開発者が主体的に参加して、自分たちが使う道具を自分たちで作り上げる、という状態になっています」。

これを受けて、“JavaOne”というイベントもその性格を本来の「開発者会議」という原点に戻しているという。お祭り・イベント的な色彩が強かった時代の“JavaOne”では基調講演で大きな発表が行なわれ、参加者がその発表を聞く、というところにスポットが当たっていたが、現在では基調講演よりもむしろ個々のテクニカルセッションやBOF(Birds of Feather)のような、参加する開発者同士での情報交換や討議が主体となっている。
「イベントによくありがちな、あっと驚くような重大発表が行なわれる場ではなくなり、開発者が必要とする情報が提供され、細かな仕様変更や仕様追加の話が重大問題として扱われる傾向が強まっているので、ニュースとしてはやや地味な印象を受けるかもしれません。しかし、世界中から開発者が集まる場であり、各国ごとの強み/弱みを持ち寄り、開発者同士で相互に情報交換を行なうことでJavaの世界をより一層拡大していこうとする場になります。一方的に話を聞くセミナーでも、何かを見に来るイベントでもなく、開発者“会議”であり、その場での議論や情報交換に本来の価値があるのです」。

今年の“JavaOne”の予想されるトピック

今年の“JavaOne”では、総数200以上に及ぶテクニカルセッションが、8トラックに分けて行なわれる。トラックのテーマは、

・Java Core Technology
・Java Technology in Mobility
・Core Enterprise
・Java Technology in the Web Tier
・Web Service
・Java Technology on the Desktop
・Java Technology Products and Cuccess Stories
・Advanced Networking Technologies

の8種類である。“JavaOne”参加者全員共通の関心事と思われる“Java Core Technology”に続いて、2番目に“Java Technology in Mobility”が置かれていることから、今年のJavaOneでも引き続きモバイル分野でのJavaの応用に関心が集まることが予想される。この分野では、日本が圧倒的に世界をリードする状況であり、既に膨大な数のJava搭載端末が市場にあり、その上でJavaを使ったサービス提供がごく普通に行なわれている。日本のJava対応携帯端末として代表的な存在である携帯電話は、音声通話という本来の用途をとっくに乗り越え、多機能情報端末として利用されている。世界各国から見れば、この状況は目指すべき目標であり、「何とか追いつきたい先頭ランナー」に見えているわけだ。そこで、日本での状況を紹介しつつ、さらなる機能拡張や使いやすさの追求、新しい機能やサービスの提案などが見られるだろう。
 この分野に関連するJavaコミュニティの動きとしては、CLDC(Connected Limited Device Configuration)1.1のリリース、JTWI(Java Technology for the Wireless Industry)ロードマップの発表、Web Service APIs(JSR 172)のパブリックレビュー開始、などがある。これらの話題もJavaOneで取り上げられるはずだ。

 3番目のトラックである“Core Enterprise”は、主にJ2EEに関するテーマを扱う。この分野では、やはりJ2EE 1.4の仕様策定間近という段階であり、現在公開中のJ2EE 1.4 Final Draft 3に関する話題が中心となるだろう。
 さらに、注目度はそれなりという感じだが、デスクトップ分野でのJavaの取り組みも引き続き行なわれており、トラックも用意されている。デスクトップ分野でのJavaはJ2SEが担うが、現在J2SE 1.4.2のβ版が配布されている。J2SEでの機能拡張や改良はやがてはJ2MEやJ2EEに反映されていくため、重要な情報と言える。

James Gosling氏
2年前の“JavaOne”で基調講演後、追加説明に応じてくれたJames Gosling氏

最後に、個人的な興味でもあるが、ここ数年にわたりJavaのオリジナルの開発者であるJames Gosling氏が基調講演でずっと見せていたMars Roverが気になっている。これはNASAが取り組んでいる火星に無人探査機を送り込むというプロジェクトで、この探査機の制御にJavaを利用する、というものだ。この制御の困難な点は、地球と火星の間の距離にある。光速でも数分のタイムラグが生じてしまう遠距離であるため、探査機が送ってきたビデオ映像を見ながら地球から指示を送っても、実際の探査機は既に違う状況に直面してしまっていることになる。たとえば、ビデオの映像に穴が映ったのを見て回避の指令を送っても、その指示が届く頃には探査機はとっくに穴の底に落ちた後だ、という状況が起こりうる。そのため、Javaによる制御プログラムは自立的な判断能力を備え、独自の判断で任務を遂行できるようなインテリジェンスを持つ必要があるというわけだ。そして、既に新聞等でも盛んに報道されているとおり、まもなく起こる地球と火星の歴史的大接近のタイミングで、6月8日と25日の2回、火星に向けてMars Roverが打ち上げられる予定になっている。このMars RoverにJavaが実際どの程度使われたのか、Gosling氏自ら解説してくれるのではないかと予想している。今回の“JavaOne”は、Javaの利用範囲が全世界という広がりをさらに越え、地球外にまで拡大したことが宣言される場となるかもしれない。



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