【絵で分かるキーワード】SIP(Session Initiation Protocol、しっぷ)
【絵で分かるキーワード】SIP(Session Initiation Protocol、しっぷ)
2003年05月26日 00時00分更新
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H.323、VoIP、ENUMSMTPライクな純インターネット的「電話プロトコル」
●【SIPの仕組み】 SIP:VoIPなどで使われるテキストベースのセッション管理プロトコル |
VoIP普及の勢いは増すばかりだが、いっぽうで相互接続・運用のために必要となるプロトコルのほうは、いまだ決定的といえるほど収束していないのが現状だ。
これまで、VoIPやTV会議システムといえば、H.323というプロトコルが使われることが多かった。PC用ソフトで言えば、NetMeetingやCUSeeMeなど、多くのコミュニケーションツールが、H.323をサポートしている。企業の内線システムをVoIPに置き換える場合でも、今まではH.323対応のネットワーク機器を導入することが多かった。
H.323は、ITU-Tで1997年に標準化されている。ITU-Tといえば、本誌の読者はモデムを思い出すだろう。それもそのはずで、ITU-Tは主に電信電話に関する国際規格を策定する国際機関だからだ。端的に言えば、電話屋集団。H.323は、もともと電信電話の世界で使われてきた複数のプロトコルを流用して、IP化したものである。
H.323に遅れること2年、インターネットのプロトコルを標準化するIETFで、SIP(Session Initiation Protocol)という通話管理プロトコルが標準化され、現在急速な勢いでH.323の占めていた位置を置き換えつつある。SIPはIPネットワーク上で既存のDNS、SMTP、HTTPなどの考えを大幅に採り入れており、実際、通話者間でやりとりされるメッセージは「From:」「Content-Type:」などのヘッダがあるなどSMTPライクな構造になっているし、応答メッセージは「180/Ringing」「200/OK」「403/Forbidden」などHTTPそっくりだ。また、電話番号代わりに使われる「sip:ken@ascii.co.jp」のようなSIPアドレスからIPアドレス(通話相手のマシンのアドレス)への変換には、SMTPでMXレコードを使うのと似て、DNSのリソースレコードを拡張して流用する形になる。将来、ISPはメールアドレスとともに、SIPアドレスをネット上の電話番号として会員に提供し、そのユーザー情報管理をすることになるのかもしれない。
SIPは「Initiate(初期化)」という言葉が示すとおり、通話に必要な「電話を鳴らす/相手が受話器を取ったのを確認する/ホールド状態にして音楽を鳴らす/電話を切る」といった制御メッセージを規定するほか、話者間で音声データを流すために利用するポートや通話プロトコルをニゴーシエートするが、音声通話自体は、これまで用いられてきたRTP(Real Time Protocol)などを使う。
SIPエージェント間でやりとりされるメッセージは、すべてテキストで、H.323よりシンプルでIP親和的だ。このためソフト、ハードとも実装は比較的容易で、VoiceXMLやWebサービスとの連携も取りやすい。
単に音声データがIPパケットに載った段階は終わり、そのセッション管理をインターネット的、かつグローバルにやるのがSIP。その急速な普及は、電話の世界が、いよいよIPの大波に飲みこまれる姿を象徴しているかのようだ。