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マイクロソフト、車載情報端末向けソフトウェアプラットフォーム『Windows Automotive 4.2』を発表

2003年04月24日 22時39分更新

文● 編集部 内田泰仁

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マイクロソフト(株)は24日、組み込み機器用OS『Windows CE .NET』をベースとした車載情報端末向けソフトウェアプラットフォーム『Windows Automotive 4.2』を5月2日より自動車メーカー、車載情報端末メーカー、車載情報端末用ソフトウェア開発者へ出荷すると発表した。また同社はこの発表に合わせて、『Windows Automotive 4.2』およびインターネットを利用した自動車向け情報サービス“テレマティクス(Telematics)”(※1)に関する技術説明会“Microsoft Automotive&Telematics Conference in Japan”を開催した。

※1 通信(Telecominication)と情報処理(Informatics)を組み合わせた造語。マイクロソフトでは、「インターネットにより車載情報端末が社外の情報ネットワークとつながることで、ドライバーが『いつでも、どこでも、どんな機器とでも』さまざまな情報やサービスをリアルタイムに享受できること」を、“テレマティクス”と提唱している。

『Windows Automotive 4.2』の発表に合わせて開催された“Microsoft Automotive&Telematics Conference in Japan”

マイクロソフトの車載情報端末向けソフトウェアプラットフォームは、前バージョンでは『Windows CE for Automotive』の名称でリリースされていたが(1998年にリリースされた最初期のバージョンは『Auto PC 1.0』)、本バージョンより『Windows Automotive』のブランド名に変更された。『Windows Automotive 4.2』は、車載情報端末の基本機能の装備と開発期間の短縮とコスト削減などといった生産性向上と、マイクロソフトが提供するインターネット関連やマルチメディア機能などの製品や技術とを組み合わせることにより、車載情報端末上でのインターネットアクセスや音楽/ビデオの再生、ニュースなどの情報の入手、ドライバー同士または携帯電話やパソコンなどを持っているユーザーとのリアルタイムコミュニケーションなどを実現するとしている。

キーノートスピーチを行なった米Microsoft Corporation・Automotive Bussiness Unitのジェネラルマネージャー、ボブ・マッケンジー(Bob McKenzie)氏。スピーチの中では、マイクロソフトがたびたび提唱する「Anytime,Anywhere,Any Device(いつでも、どこでも、どんなデバイスでも)」というコンセプトを取り上げ、『Windows Automotive 4.2』が目指す“テレマティクス”は、このコンセプトを実現するものだとしている(写真は本セッション終了後に行なわれたプレス向けセッションのときのもの)ゲストスピーチを行なった松下電器産業(株)の安田威彦氏。安田氏のスピーチでは、『Windows CE for Automotive 3.5』(前バージョン)を利用したトヨタ向けの車載情報端末『G-BOOK』の開発の経緯や技術解説が盛り込まれていた。『G-BOOK』開発時に松下が自作した開発(デバッグ)ツールや、マイクロソフトがカスタム対応した機能やツールの多くが、『Windows Automotive 4.2』では標準の機能として盛り込まれているという

『Windows Automotive 4.2』で強化された機能としては、

  • 高機能ながらも軽量で高速な車載情報端末用ユーザーインターフェース“AUI(Automotive User Interface)”を新開発、高度なUI開発と開発期間の短縮を実現
  • 車載情報端末に求められる、高速描画性能、高速起動、高度な電源管理を実装
  • Internet Explorer 6相当のウェブブラウザーコンポーネントを装備
  • Windows CEファミリーの統合開発環境『Platform Builder』、プロセス/スレッド/CPU使用時間を解析する『Remote Kernel Tracker』など、開発環境/ツール群を強化
  • DirectXに含まれるマルチメディア用API“DirectShow”のフィルターにより、映像や音楽などのメディアファイルを一括して扱えるメディアアプリケーションの作成が可能
  • 『.NET Framework』のモバイルデバイス向けサブセット『.NET Compact Framework』を装備し、XMLウェブサービスの利用が可能になった

が挙げられている。また、Windows Server 2003とReal-time Communication Server 2003(2003年第3四半期提供予定)と車載情報端末を組み合わせることで、位置情報を付加したリアルタイムコミュニケーションや.NET Alert技術を利用したリアルタイム通知サービスを実現し、XMLやSOAP、ユニバーサルプラグアンドプレイ、IPv6、VoIPなどの情報ネットワークで広く利用されている技術や、Bluetooth 1.1やIEEE 802.11系の無線通信技術もサポートするという。

『Windows Automotive 4.2』の技術概要を解説したマイクロソフト・プロダクトディベロップメントリミテッド・ITS戦略統括部部長、平野元幹氏
『Windows Automotive 4.2』が、前バージョンから大幅に機能強化されたことを示す図。コンポーネントの追加、AutomotiveコンポーネントのWindows CEコア機能としての採用やWindows CEコア自体の機能強化が、今回のバージョンアップの基礎になったという“AUI(Automotive User Interface)”を利用したソフトウェアの構成例。RTCやマルチメディアデータの取り扱い、無線通信のサポートなど、実装できる機能は多岐に渡る。また、これらの上部に被さる“AUIスキン”を差し替えることで、“内部構造は共通だが見た目がまったく異なる車載端末”を容易に作ることが可能だという

カンファレンスでは、『Windows Automotive 4.2』を利用したデモンストレーションも披露された。内容は、

  1. サーバー上に置かれたWindows Media Videoを車載端末にダウンロードして再生
  2. 情報ポータルサイトでレストランの情報を検索し、そこからテーブル予約を行ない、店側の承認を車載端末に通知し、カーナビゲーションシステムに店の位置情報を渡す
  3. 車載端末利用者2名と携帯電話利用者の合計3名でインスタントメッセージを交換し、車載端末利用者同士でボイスチャットを行なう

というもの。(2)はXMLウェブサービスと.NET Alartを、(3)はReal-time Communication Server 2003を、それぞれWindows Server 2003と組み合わせたシステムの構成により実現したものだという。

『Windows Automotive 4.2』で実現する車載情報端末を中心としたネットワークサービスの例を示した図。自宅、会社、情報ポータルとの情報のやりとりが可能になるとしているインスタントメッセージングのデモの1コマ。携帯電話から送信されたメッセージが着信し、右上に着信を告げるダイアログが表示されている。『Windows Messenger』の車載情報端末版というイメージ

車載情報端末のネットワーク機能というと、せいぜいウェブやメールが見られるという程度だろうと思う人もいるかもしれないが、マルチメディアファイルの再生やXMLウェブサービスの利用、さらにはインスタントメッセージングまで、ネットワークを利用することでできるようになることは、通常のWindows CE端末と大差はない(およそカーナビには必要がないであろう、キーボードやワープロや表計算といったビジネスアプリがないくらい!?)。今回の一連のセッションは、“カーナビがパソコン並みに便利で多機能な情報端末になる”時代は、すぐそこまで迫っていると感じさせるものだった。

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