ナノテクノロジーに関する微細加工技術や製品、およびナノテクノロジーの応用製品を集めたイベント“nano tech 2003 国際ナノテクノロジー総合展”が東京国際展示場(幕張メッセ)で28日までの日程で開催されている。主催はnano tech実行委員会。今年は展示会のほかに、国内外のナノテクノロジーを開発研究している各社がセミナーを行なう“nano tech 2003+Future”(主催は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日本貿易振興会(JETRO)、産業技術総合研究所)が同時に開催された。
展示会場で注目を集めたのが、日本電気(株)(NEC)と(株)日立製作所がそれぞれ個別にデモ展示した燃料電池をモバイル機器のバッテリーに応用した製品だ。NECは現在発売されている携帯電話『N504i』とB5サイズのモバイルノートパソコン『LaVie J』の実機を、それぞれ燃料電池で稼働させるデモを行なった。燃料電池の仕組みは、メタノールから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させることで水を生成、この際に電子を移動させて電流を生み出すというもの。原理的には、水の電気分解を逆に反応させて電気を取り出すわけだ。この際に、触媒(主に白金)の表面積を最大限増やすためにナノテクノロジーが使われる。NECではカーボンナノチューブの1形態である“カーボンナノホーン”(花びらのように炭素原子が放射状につながる)を生成することで、より多くの反応を起こすとしている。会場に展示されたデモ機(燃料電池)は、メタノールを自然落下させ、酸素の取り込みも自然吸気によるもので、効率化のための機構(ポンプやファンなど)は一切備えていないそうだが、LaVie J本体の3/4程度の大きさの“反応部(写真の水色の部分がメタノールのタンク、下の白い部分は回路基板を隠すためにあえて大きめのカバーがかかっている)”で「3時間程度の連続稼動が可能」という。開発者に聞いたところ、「将来的には現在のリチウム電池の20倍程度の高容量化が可能になる」「製品化の時期については2004年末から2005年初頭を目指している」と説明した。
燃料電池を搭載した液晶タブレットタイプのモバイル機器(モックアップ)。これ自体は動かないが、この程度のサイズで燃料電池を搭載することが可能だという。電池部分の厚みは5mm程度 | 電池部分の背面。表面積を稼ぐためか、細かなスリットが多数存在する |
日立はA4サイズ程度の液晶タブレット型モバイル機器(モックアップ)とPDAを参考出展。PDAは動作可能とのことだが、ブースを訪れたときはちょうど充電中で実機を見ることはできなかった。日立の説明員によると、「ナノテクノロジーは、触媒の微細化と同時に電解質膜(水素イオンを通過させ、メタノールを遮断する)の開発にも利用している。この電解質膜の品質を高めることで、材料となるメタノールの濃度がより高まり、発電効率が増す」とのこと。
そのほか、会場には特定のDNAのみ抽出する“ナノバイオデバイス”、粒子の微粉砕装置、分析器や電子顕微鏡といった検査機などが多数出展されたが、主催者側の方針なのか、普段ナノテクノロジーになじみのない人にも分かりやすく親しみやすいデモや説明パネルが多く見られた。会期が平日のみではあるが、最新の微細化技術に興味のある学生(中高生など)にも、ぜひ見てほしい展示会だ。