このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

仕事に使えるグラフィックス入門

仕事に使えるグラフィックス入門

2003年03月01日 15時35分更新

文● 薮田 織也

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

仕事に使えるグラフィックス入門

今回はIllustratorとPhotoshopを使って、音楽CDのジャケットとレーベルをデザインしてみよう。音源といっしょに音楽CD制作サービスに発注すれば、自分だけのプライベートレーベルの完成だ(月刊アスキー 2002年8月号より再掲)。

Tips1 ジャケット・レーベル制作の準備

意外に簡単で安価にできる
自分だけの音楽CDレーベル

サンプルレーベル
画面1 2002年6月21日に発売になった宮澤篤司の「夜明け/ごめんね」は、小生がデザインしたマキシシングルCD。今回はこれを題材に説明していく。ちなみに全国発売しているので是非とも買ってちょーだいね。
仕事に使えるグラフィックス入門 Adobe Illustrator 10 日本語版 Adobe Photoshop 7 日本語版
「仕事に使えるグラフィックス入門 第4回」(from 月刊アスキー)。写真をクリックすると当該記事に移動します。「Adobe Illustrator 10 日本語版」レビュー(ASCII24 Reviewオリジナル)。「Adobe Photoshop 7 日本語版」レビュー(from アスキー PC Explorer)。

 音楽CDは買うもので、作るものではないと思っていたらそれは間違いだ。実は意外と簡単に、そして少ない枚数でも安価に作れる時代なのである。もちろん、音楽CDに限らずCD-ROMでもOKだ。もしデジタル写真や自作の楽曲があって、それを形に残したいと思うのなら、今回紹介する方法でCDジャケットとレーベルを作成してみたらどうだろう。プリンタで印刷したシールを貼ったものとは比べようもないほど見栄えのするCDになることはうけ合いだ。今回は、小生が実際に作った音楽CDジャケットを例にとって、おおまかではあるがその作り方を紹介していこう。

 今回使用するツールは、Adobe Illustrator 10とPhotoshop 7.0。実際、ほとんどの音楽CDジャケットやレーベルはこの2製品で作られている。これらのソフトで作ったデータでないと、印刷を受け付けてくれない業者がほとんどなので、まさに必需品といってもいいだろう。さて、まずは作成するジャケットのサイズを確認だ。今回はマキシシングルCD用のジャケットを作るのだが、その寸法は図1~4を参考にしてもらう。その他のジュエルケースやマルチケースの場合はサイズが異なるので、画面2の日本レコード協会に連絡して規格書を入手しよう。基本的には無料で入手できる。ただし、CDプレスを依頼する業者(表1を参照)によっては、あらかじめ用意されたテンプレートでしかデータを受け付けないところもあるので、どこに頼むかを決めてからの方が間違いがない。特にマキシシングルのジャケットは複雑な形に断裁するので、業者と綿密に打ち合わせておくとよいだろう。



日本レコード協会
画面2 社団法人日本レコード協会のサイト。音楽CDに関する規格を管理している。ここに連絡すれば、規格資料は無料で取り寄せることができる。http://www.riaj.or.jp/
マキシケースII型表カード 表カードのフラップ部分
図1 マキシケースII型表カードの形状寸法。左右逆転させれば、表2、表3、つまり歌詞カードの面になる。図2 表カードのフラップ部分の拡大図。「背部」は、CDケースの背になる部分。ミシン目は印刷時に業者が入れてくれるので、ここでは目安として使う。
CDレーベル面の印刷範囲 キャップ
図3 CDレーベル面の印刷範囲。直径23mm~116mm以内に印刷できる。ただし、印刷できる色は制限があるので要注意。実際に印刷を頼む業者に問い合わせるとよい。図4 キャップとは、CDケースの外側に巻く帯のこと。タスキとも呼ばれる。表1のデザインにあわせて、「o」、「p」、「q」の寸法を変えるとよいだろう。

表1 CDプレスを行なってくれるWebサイトの一例(メーカー名をクリックすると先方のサイトに移動します)
e-ongaku.tvリミックス プランニング ステューディオ
音のメルヘン屋フジ企画
ARTIST CONTRIBUTIONARTIST CONTRIBUTION
Dionディオン
DiscoveryFirmディスカバリーファーム
PaxSystemsパックスシステムズ
NOVACノバック
e-Aplix.comアプリックス販売
axiamusic.com富士フイルムアクシア

Tips2 外枠を描いてトンボを切る!切る!切る!

業者に印刷してもらうには
トンボを切ることが重要

Photoshopにペースト Illustratorで読み込み
画面3 図1を参考にしてマキシケースII型表カードの大外枠を描く。塗り、線ともになしにして、「長方形」ツールで「274mm×120.3mm」の長方形を描く。画面4 画面3で描いた矩形が選択されている状態で、「フィルタ」→「クリエイト」→「トリムマーク」を選択する。これで、矩形の周囲にトンボが作られる。

 業者との打ち合わせが済んだら、いよいよジャケットデザインの開始だ。業者からテンプレートをもらったのであれば、それに準じて進めればよいが、自由にデザインできるのであれば、一から自分で作ろう。まずは表カード(画面3)とキャップ(画面6)、そしてレーベル(画面7)の印刷範囲を長方形、そして円で描いてトンボを切る!(画面4)

 とは言っても決して昆虫を虐待をするわけではない。トンボとは印刷の位置を表すマークだ。最終段階で化粧断ちするための仕上がり線として、または化粧断ちする線の少し外側で製版処理に必要な面を示す製版寸法線として、重要なものなのだ。Illustratorでは「トリムマーク」と呼んでいるが、これはトリミング(仕上げ、裁断)するマークのことで、トンボと同じ意味だ。

輪郭を描く ミシン目を描く 印刷範囲を描く
画面5 図1を参考にしてマキシケースII型表カードの輪郭を描く。この輪郭は断裁する際の目安となる。この中に各オブジェクトを配置する。画面6 図4を参考にしてキャップの輪郭と、どこにミシン目を入れるかを描く。ミシン目の位置は実際に印刷される範囲の外側にも入れておくとよい。画面7 図3を参考にしてCDレーベルの印刷範囲を描く。円の場合のトンボも画面4と同じ操作で作成する。なお、CDプレスを依頼する業者によっては、内側の直径のサイズが変わるので要注意。

仕事に役立つグラフィックス用語

─その1─
■ マキシケース
12cmCDを1枚収納する薄手のケース。主に音楽CDでマキシシングルCD用に使われる。フタと皿だけで構成される、通称2ピースタイプと呼ばれるケース。
■ ジュエルケース
12cmCD1枚を収納する標準的なケース。フタとトレイ、皿で構成される、通称3ピースタイプと呼ばれるケース。一般的にはPケースと呼ばれることもある。
■ 日本レコード協会
文化庁所管の公益法人で、レコード製作者を代表する団体。音楽用CD等の普及や、著作権思想の普及、レコードの適正利用のための技術研究等を通じて、音楽文化の発展に寄与することを目的としている。
■ テンプレート
あらかじめ目的の制作物用に作りこまれている雛形となるデータ。利用者はそれに独自の文字などを追加することで簡単に制作物を完成させることができる。
■ 断裁
印刷物の体裁を整えるために余分な部分を切り取る作業。通常、印刷は仕上がりの寸法よりも大きな用紙に印刷し、断裁することで体裁を整える。
■ トンボ
印刷位置の基準として使う記号のこと。日本ではセンタートンボと角トンボの2種類がある。センタートンボは印刷の工程で各ページを大貼りする基準になり、角トンボは製本の段階で化粧断ちをするための仕上がり線を表すほか、化粧断ち線の少し外側で製版処理に必要な面を表す製版寸法線を表す。
■ 化粧断ち
印刷物を仕上がりの寸法で断裁すること。また、写真を印刷物のフチまでギリギリに入れる場合、写真を仕上がり線から外にはみ出させて配置しておき、化粧断ちさせることを写真の断ち落としと言う。
■ 製版
従来、製版とは印刷するための版を作ることを意味していたが、今は広義に解釈すると印刷の前工程の総称だともいえる。印刷工程ではフイルムを使った製版が一般的だったが、現在はデジタル化でフイルム製版が不要になっている。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン