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三菱電機、研究成果を発表――携帯用3DグラフィックスコアにMPEG21まで28件てんこ盛り!!

2003年02月15日 13時43分更新

文● 月刊アスキー編集部 中西祥智

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三菱電機(株)は13日、神奈川県鎌倉市の情報技術総合研究所において、同社開発本部の研究・開発成果をプレスおよびアナリスト向けに公開した。

三菱電機情報技術総合研究所
鎌倉市大船にある三菱電機情報技術総合研究所。情報処理や通信、各種インターフェース、マルチメディア関連の技術開発を行なっている

公開に先立って、同社の野間口 有取締役社長が、同社の研究・開発成果の意義について語った。「ここで紹介したものは事業化の展望が開けた、もしくは事業化しているものだ。何年かあとには、三菱電機を支える商品となる。2003年度はより成長を目指した経営を行なうが、その成長エンジンとなるのがこの開発本部だ」。

三菱電機取締役社長野間口 有氏
三菱電機取締役社長野間口 有氏。社長就任前には開発本部長の職にあったこともあるとか

今回公開したのは、MPEG関連のデジタル画像伝送技術が5件、情報セキュリティ技術が4件、デバイスが5件など、全部で28件。

「Z3DII」は、毎秒23万頂点の処理が可能な携帯電話用の3Dグラフィックスコア。単体ではなく、CPUと1チップ成型して製造する。クロック周波数は50MHzで、QVGA(320×240ドット)までの解像度に対応。アンチエイリアシングやフォグといった効果もかけられる。消費電力は約30mWで、携帯電話に実装する上で発熱も含めて問題ないレベルだという。

Z3DIIでの3Dグラフィックスその1 Z3DIIでの3Dグラフィックスその2
Z3DIIで描画した3Dグラフィックス。QCGAとサイズは小さいが、グリグリ動く

動画コンテンツを変換・配信する技術では、携帯電話で購入したストリーミングコンテンツをノートPCでMPEG4で途中まで見たあと、続きはHDTVでMPEG2で見る、というデモを行なっていた。コンテンツの検索はMPEG7で行ない、一旦コンテンツを購入すれば、その再生はMPEG2やMPEG4など、再生する環境に従って自由にフォーマットを選べる。三菱電機ではこのフレームワークを「MPEG21」として標準委員会に提案、2004年初旬には国際標準になる見込みだという。

コンテンツの勧誘 コンテンツの購入 コンテンツの再生
ユーザーの嗜好に従って、お勧めのコンテンツが表示されるコンテンツを購入する再生ボタンをクリックして、再生する機器に赤外線送信する
赤外線受信 ノートPCでの再生 HDTVでの再生
ノートPCなど、コンテンツを再生する機器のIrDAポートへ情報を送信するノートPCではMPEG4で再生するHDTVでは、MPEG2で再生。途中からの再生も可能

80Gbpsの交換容量でスイッチング可能なIPスイッチングノードは、スケジューリングのアルゴリズムを改良したLSIで、高速なスイッチングが可能になった。従来のスイッチングノードでは、バッファに蓄積されたパケットを処理しきれず、パケットを廃棄してしまう確率が高かった。しかし、今回開発したスイッチでは、場合によっては数十倍のパケット処理能力を発揮するという。

スイッチングLSI
新開発のIPスイッチングLSI
IPスイッチングノード インターフェースカード
IPスイッチングノード。LSIを2つ搭載している同時に公開した、10Gbpsのスル-プットを持つPOS(Packet Over SONET)インターフェースカード

また、今回公開したマイクロ波集積チップセットは、準天頂衛星からの電波をキャッチするためのものだ。準天頂衛星とは、3基の衛星を軌道上に周回させることで、日本のほぼ真上に常に衛星が来るようにする。2007年に打ち上げられる予定の準天頂衛星は、放送やGPSなどに利用できる。しかし、準天頂衛星を追尾するには、電子追尾アンテナで追わなければならない。電子追尾アンテナは平面のアンテナで、電波の位相を変えることで、送受信する電波の方向を制御するもの。同チップセットは、衛星を追尾するために電波の位相を変換する移相器や、受けた電波の増幅器など、4つのチップで構成される。このチップセットによって、受信システムを低コストで製造できるという。

チップセット 顕微鏡写真拡大
マイクロ集積チップセット。4つのチップで構成されるチップセットの顕微鏡写真の拡大図

さらに、公開された概念抽出型文書知識サーバでは、単なる全文検索や類語検索ではなく、文書の中から言葉の関連性を抽出して検索できる。従来の単語抽出検索とは違い、文書データの概念を数量化してベクトルを生成し、そのベクトルから類似性を抽出することで、「OCR」と「文字認識」といったような言葉は違っても意味の似た語句を引き当てることができる。

概念抽出型サーバ 概念ベクトルの概念
概念抽出型文書知識サーバの検索画面抽出した概念を数量化し、ベクトルとして扱う

そのほか、FOMAを使った多人数TV電話や新しい車載インターフェース、インテリジェントモニタなども公開された。

FOMAでの多人数TV電話 3人でのTV電話
FOMAのM-stageビジュアルネットのサーバにアクセスし、複数人でのTV会議が可能発言者が自動的にフォーカスされる。左下に広告やストリーミング配信画像を表示できる
車載インターフェース 画面表示 手元のインターフェース
手元のスティック、ホイール、音声それぞれで操作できる車載インターフェース
マルチ大画面
6台のモニタをつないだ3Dグラフィックス表示システム。1台のメインPCからの描画命令を6台のPCで分散処理し、それぞれ割り当てたモニタに表示する。標準的なスペックのPCで、高精細、高速な3Dグラフィックス描画できる
インテリジェントモニタ
開発中のインテリジェントモニタ。家庭内のPCやAV機器、家電をこのモニタから制御することを目指しているという。一瞬Windows Powered Smart Displayかと思ったが、試作機はWindows CE 3.0ベース。もっとも、CE .NETベースのものも開発中

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