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慶應義塾大学病院、国立病院東京医療センターなどがインターネットを利用した遠隔医療システムを発表

2003年01月17日 19時59分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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慶應義塾大学病院、国立病院東京医療センター、(株)フォーカスシステムズ、オリンパスプロマーケティング(株)、シスコシステムズ(株)は17日、共同でインターネットを介した遠隔手術指導システムを研究/開発したと発表した。

遠隔手術指導システムイメージ
慶應義塾大学病院と国立病院東京医療センターを結ぶ遠隔手術指導システムのイメージ

この遠隔手術指導システムは、実際に手術を行なう病院(手術側)と、診療指導/支援を行なう大学病院(指導側)をADSLを用いたVPNでつなぎ、内視鏡下手術において大学病院から遠隔指導を行なうというもの。手術時に内視鏡がとらえた手術映像をリアルタイムで大学病院に送信し、大学病院の指導医がその映像を見ながら遠隔指導する。従来の遠隔指導は専用回線を用いたものが多いが、同システムはADSL等のブロードバンド回線を利用できるため、複数の病院間での連携や病院と個人(患者)とのコミュニケーションも可能となり、次世代の遠隔医療や介護分野などに応用できるという。

また、セキュリティー機能として、フォーカスシステムズのストリーム系共通鍵暗号技術“C4S”を採用している。C4Sは鍵初期変換を高速/軽量にするため疑似乱数発生器にカオス関数を利用、入力された鍵を変換し、変換鍵からカオス信号を発生させ、変換鍵とカオス信号を合成してキーストリームセットを生成、キーストリームセットと平文、暗号ベクトルを合成して暗号化処理を行なう。また、暗号鍵は可変長に対応しており、8bit以上で任意に設定できる。これにより安全かつ乱数性の高い疑似乱数を実現し、暗号アルゴリズム全体の処理速度や処理効率が向上したという。従来、遠隔手術指導において送信される動画像情報は高容量で暗号化に時間がかかるため、強固な暗号化を施すと伝送に遅れが生じていたが、同システムではC4Sを導入することでリアルタイムの手術映像を遅延なく暗号化して伝送することに成功したという。

グラフ
VPNでの10MBファイルの転送に要する時間を比較したグラフ。C4S技術を用いた場合、他の暗号化技術に比べて短時間で伝送できるという

本日国立病院東京医療センターで行なわれた発表会では、同センター手術室と、慶應義塾大学病院を同システムで結び、遠隔手術指導のデモが行なわれた。センター側は光ファイバーを、大学病院側はADSL(12Mbps)を利用しているという。

手術室
実際に内視鏡下手術を行なっている国立病院東京医療センターの手術室
器材
手術室内にある遠隔手術指導システム用器材
指導医
慶應義塾大学病院で手術の遠隔指導を行なう田辺稔指導医。右下に映し出されているのが田辺氏が見ている手術映像画面
患部
手術室において内視鏡がとらえた手術映像がリアルタイムで大学病院側に伝送される。今回行なわれたのは胆石症の摘出手術。患部の映像に、田辺氏が摘出ライン(画面上の緑色の線)を描いて遠隔指導している。なお、写真の映像は、田辺氏が見ている映像を医療センター会議室内に送信して大画面スクリーンに映し出したもので、実際に手術室と大学病院でやり取りされている映像はさらに高画質である

慶應義塾大学医学部外科学教室教授で医学部長の北島政樹氏は、「遠隔医療により、医療の地域格差や施設間格差を解消し、医療の質を向上できる。現在の遠隔医療は医師対医師のコミュニケーションが中心だが、今後は医師対患者に応用できるだろう。通信環境の向上により2点間接続から多地点間接続が可能となり、遠隔医療から“ネットワーク医学”へ発展できる。そのためにはセキュリティーの確保、コンテンツの質の保証、アクセスビリティーの改善が要件となる」と説明。

また国立病院東京医療センター院長の田中靖彦氏は、今後の展開について「医療施設のネットワーク化や医学教育、施設間での会議などに応用できるだろう。電子カルテのシステム化と、セキュリティーを確保したシステムの開発が必要だ」としている。

登壇者1
左から、慶應義塾大学外科学教室の古川俊治氏、慶應義塾大学医学部長の北島政樹氏、国立病院東京医療センター病院長の田中靖彦氏
登壇者2
左から、(株)フォーカスシステムズ代表取締役社長の石橋雅敏氏、オリンパスプロマーケティング(株)取締役の野口文武氏、シスコシステムズ(株)CTOの大和敏彦氏

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