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Adobe Photoshop 7.0に修正ブラシが追加された理由とは? ――米アドビシステムズ、ケビン コナー氏に訊く

2002年11月06日 00時00分更新

文● 編集部 佐久間康仁

2002年中に『Adobe Photoshop 7.0』と『Adobe Photoshop Elements 2.0』を相次いでリリースしたアドビシステムズ。特にPhotoshop Elementsは日本市場をメインターゲットに開発された製品で、昨今のデジタルカメラブームを背景にユーザーが増えている。
今回、10月下旬のIT関連製品展示会“WPC EXPO 2002”に合わせて来日した米アドビシステムズ社のDirector of Product Management Digital Imaging(デジタルイメージングプロダクト担当プロダクトマネージメントディレクター)、ケビン コナー(Kevin Connor)氏にPhotoshopシリーズの話を聞いた。

ケビン コナー氏プロフィール

ケビン コナー氏
デジタルイメージングプロダクト担当プロダクトマネージメントディレクター ケビン コナー氏
アドビのデジタルイメージング製品開発のマネージメントを担当するディレクターとしてAdobe PhotoshopやAdobe Photoshop Elementsを含むデジタルイメージング製品のビジョンの設定、および実行責任者。入社後7年間で、5つの主要なデジタルイメージング基幹製品の開発に携わる。
同氏はAdobe Photoshopをweb 市場でも活用できる製品として、さらにAdobe Photoshop Elementsを、ホームユーザをターゲットにしたコンシューマ市場向けの製品として送り出すことに注力。加えて、アドビ製品の間での連携、アドビユーザインタフェイスの統一や共有カラーマネジメントシステムの確立にも注力している。
アドビシステムズ入社以前は、グラフィックテクノロジー関係のソフトウェア企業数社において、マーケティングを担当していた。

コアテクノロジーの開発は、プロフェッショナルユースがメインターゲット

[編集部] まず、ケビンさんとAdobe Photoshopとの関わりについて教えてください。
[ケビン コナー氏] 私がアドビに入社して7年半になります。最初は3DCG作成ソフト“Dimensionシリーズ”やアウトライン作成ツール“Streamlineシリーズ”の開発に携わっていました。“Photoshop”の開発に加わったのは4.0からです。
[編集部] それまで開発してきたソフトとPhotoshopでオーバーラップする技術はあったのでしょうか?
[コナー氏] アドビで開発している核となる技術は共通しています。具体的にはグラフィックスエンジンや出力/印刷部分、テキスト処理、ユーザーインターフェースのデザインなどです。Photoshopに限らず、ほかのアドビ製ソフトでも、プログラムコードこそ共通ではないにせよ、概念の部分は共有しています。
[編集部] Photoshopは特に4.0から5.0、6.0になるにつれて大きく機能が追加、変更されていったわけですが、どのようなコンセプトに基づいて機能強化、変更を行なっているのですか?
[コナー氏] 顧客からの意見や要望を取り入れてきたということが一番大きいのですが、それだけではなくユーザーがどのように作業を行なうのか、どこにフラストレーションを感じているのかというところを調べて、ひとつずつ解消しています。また、5.5以降は、市場のニーズの変化も大きく、その点も反映されています。例えばウェブ向けグラフィックス、ウェブサイトデザイン向けの機能といった部分です。最新の7.0ではデジタルカメラの普及に合わせて、デジタルカメラ向きの画像処理機能を豊富にしている、などの変化が見られます。
[編集部] 機能やコンセプトの変化というのは、ユーザー層の変化にもつながっているのですか? 以前はPhotoshopと言えばプロのデザイナーのアイテム、という印象が強かったと思うのですが、“Photoshop Elements”の登場によって最近は一般ユーザーの割合もかなり増えたということでしょうか?
[コナー氏] 一般ユーザーが増えてきたのは確かですが、しかしコアテクノロジーの開発については、今でもプロフェッショナルユースをメインターゲットにしています。同時に、プロ以外のユーザーにも使いやすいものを、という開発・改良も並行して行なっています。ただ、そのことがプロのユーザーに邪魔(分かりやすさを優先して手順が増える、など)になってはならない、ということを常に念頭においています。

次期Photoshopに向けても、すでに開発は始まっている

[編集部] 次期バージョンでは、どういったユーザーをターゲットにどのような機能を追加する予定ですか?
[コナー氏] デジタルカメラの普及は今後も進むと予想されるので、デジタルフォトの補正や画像管理(ファイルブラウザーなど)の機能強化が重要だと思います。また、デジタルビデオ機器の市場も増えており、Adobe Photoshopがビデオ編集の現場でも(1プロセスとして)使われ始めていることに注目しています。もちろん、従来のグラフィックスデザインの現場での使いやすさや機能強化も図っていかなければならなりません。とても忙しくなりそうだね。
[編集部] 新バージョンはいつから開発が始まっているのですか? また、前バージョンの機能はどの程度次のバージョンにオーバーラップされるのですか?
[コナー氏] 一般的には、現バージョンの開発中に、すでに次期バージョンで取り入れたい機能も同時平行して開発を進めています。また、Photoshopに直接携わるエンジニアだけではなく、アドビ全体のコアテクノロジーの開発者からも、次期Photoshopに取り入れるべき機能や要望が上がってくることもある。それらを参考にすることもあります。具体的なプランニング(計画提出)と言う意味では、前製品を出荷した直後ぐらいから始まります。それらがユーザーの要望に沿っているか、顧客満足度を上げられるかを確認して、製品開発に盛り込むかどうかを最終的に決定します。
[編集部] 日本では、デジタルカメラ専用アプリケーションとも言える、アルバム管理機能やフレーム付き印刷機能などに特化したソフトウェアが数多く出ています。これらを意識することもありますか?
[コナー氏] Photoshopの場合、画像編集が一番重要であり、それを中心に各付加機能のバランスを考えています。ですから、インターフェースとしては画像1枚に対してレタッチを行なうというのが基本になります。ですが、その前段階としてファイルブラウザーの中で複数の画像をまとめて閲覧、比較して選択するといった使い方はあるかもしれません。そのためにファイルブラウザーの機能強化も図ってきました。また、編集後に複数の画像をまとめて出力、印刷するような機能も(現バージョンで)追加しています。今後も編集前後の両側において機能強化を図る必要があるでしょう。
[編集部] 自分でPhotoshopを使うシーンを考えると、デジタルカメラで撮影した画像の明るさや色味を補正する場合が多い。自動レベル補正や自動コントラストも使っているのですが、なかなかうまくいきません。
[コナー氏] ユーザーからのそうした声はよく聞かれますし、今後強化していくべき点だと思っています。最新のAdobe Photoshop 7.0(およびPhotoshop Elements 2.0)では、RGB各色の最明部と最暗部、中間値のバランスをとって補正する“自動カラー補正”という新機能が追加され、従来の自動レベル補正や自動コントラスト以上に正確な色味の調整が行えるようになりました。さらに、自動カラー補正はカスタマイズも可能で、ユーザーの好みに応じて補正レベルを調整できます。ただし、これについてもさらに簡単かつ正確に行えるよう改良していくつもりです。
[編集部] 現在使っているノートパソコンは、モバイルPentium III-1.13GHz/メモリー512MBという構成ですが、それでもPhotoshop Elements 2.0の初回起動に若干待たされる感があります。これを早くするために、これは素人考えですが、例えばプラグインを読み込まない“素のPhotoshop”を立ち上げるといった改良はないのでしょうか。
[コナー氏] 起動時間を早くするにはいくつか方法があるのですが、プラグインを読み込まない、というだけでは早くはなりません。ただ一例として、過去のPhotoshopでは、テキスト加工ツールを起動するたびにフォントを毎回読み込むという手法をとっていたのですが、最新のPhotoshopでは起動時にシステムに組み込まれたフォントリストを自動的に取り込んでいます(その分、起動時間が長くなる)。これを旧来の方法に戻すという考え方もあるかもしれません。起動時間の短縮については、多くの顧客から要望が来ていますので、重要な検討課題のひとつとしてこれからも改良を重ねていきます。
コナー氏

Photoshop 7.0に修正ブラシが追加された本当の理由!?

[編集部] ケビンさん自身も普段からPhotoshopをお使いだと思いますが、個人的に特に気に入っている、よく使うという機能を教えてください。
[コナー氏] 私が個人で使うのは、休暇で旅行に行なったときの写真の加工、管理などに使うことが多い。中でもよく使うのが自動カラー補正機能です。ただ、これは個人的な好みですが、初期状態ではコントラストが強調されすぎるので、その後でフェードコマンド(フィルター)を使ってコントラストを少し抑えています。多くの場合、この2ステップで好みの写真に仕上がります。
[編集部] 用意されている豊富な機能をフルに使いこなすというよりも、ごく限られたツールしか使われていないんですね。少し意外でした。
[コナー氏] 私は映像制作のプロフェッショナルじゃないですから(笑)、よく使うコマンドはそれくらいですよ。ただ、かつてあるプロジェクトでPhotoshopの機能を活用したことがあります。それは祖母の結婚写真を蘇らせるというものです。古いポートレート写真をスキャンしてデジタルデータとして取り込み、色補正を掛け、さらに修正ブラシ(Photoshop 7.0に搭載された新機能)を使いました。実はこの時点ではPhotoshopに修正ブラシというものはなく、開発中の機能だったのですが、古い写真の破れ目などをなぞって補正するのに便利に使いました。
[編集部] なぜPhotoshop 7.0に修正ブラシが加わったのか、その理由がよく分かりました(笑)。では、7.0を使っていて、この機能が欲しい、ここを変えたい、といった要望はありますか? 今後の参考にぜひ教えてください。
[コナー氏] いや、私のためだけにAdobe Photoshopが開発されているわけではないので(笑)。顧客、ユーザーの声に応じて進化、改良されていきます。ユーザーからのリクエストは日々刻々寄せられているのですが、その中から特に要望の多いものを優先的にピックアップして実現していきます。これからもデジタルイメージ編集ソフトのリーダーとして、改良を重ねていきます。また、これからも日本市場を重視し、日本向けの機能強化にも積極的に取り組んでいきたいと思います。

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