シャープ(株)と(株)半導体エネルギー研究所は22日、液晶パネル用ガラス基板上に8ビットCPU『Z80』(※1)の形成に成功したと発表した。これは両社が'98年に開発した、液晶パネルのガラス基板上に、液晶コントローラーや電源回路などの搭載を可能にする“CGシリコン技術”を応用したもので、将来のシート型コンピューターやシート型テレビなどへの基盤になる技術だという。
※1 Z80 Z80は'76年にザイログ社が開発した8ビットCPU。シャープは'77年にライセンスを受けて生産を開始している。ガラス基板に実装したZ80 |
今回発表されたガラス基板上のZ80Cは、トランジスター数が約1万3000個、3~4μmプロセスルールで製造され、実装面積は13×13mm(169mm2)。
シャープ(株) 代表取締役副社長 技術開発統括 三坂 重雄氏 | (株)半導体エネルギー研究所 代表取締役社長 山崎 舜平氏 |
都内で行なわれた記者発表会の席上には、シャープ(株)から代表取締役副社長技術開発統括 三坂 重雄氏とモバイル液晶事業本部本部長 片山 幹雄氏、(株)半導体エネルギー研究所から代表取締役社長 山崎 舜平氏とCADグループ次長 小山 潤氏が出席して技術説明を行なった。それによると、「従来は、ガラス基板に含まれるナトリウムがLSIの動作に影響を与えること、ガラス自身が液体でありLSIの形成自体が難しいなどの困難があったが、それを解決する材料と実装技術が開発できた」(山崎氏)「現在は3μmプロセスルールで、PDAなどに採用されている数百MHzの高速なCPUの実装は難しいが、2003年には1.5μm、2005年には0.8μmと微細化が進み、20~30MHz動作の実用的なCPUの実装が可能になる見込み」「この技術は、現在CPUやメモリーなどに使われる単結晶シリコンと直接競合するものではなく、ガラス基板の低コスト性や基板サイズの大型化が可能な点を活用する道を検討していく。具体的には、液晶パネルに各種回路やCPUを集積することにより、液晶ディスプレーを使ったデバイスの薄型・軽量化、高精細・高画質化、多機能化などを目指す」(片山氏)などと述べた。
山崎氏の説明の中で出てきた、CPUと液晶コントロール回路を複合化したチップの例 |
CG(Continuous Grain)シリコン技術は、従来のアモルファスシリコン(非晶質シリコン)よりも結晶粒子が大きく、ポリシリコン(多結晶シリコン)と比べて結晶同士の境界(Grain)の連続性が高いという特徴がある。このため電子移動度が高まり、CPUなどのLSI(大規模集積回路)の実装が可能になったとのこと。会場では8ビットパソコン“MZ-80”を2台並べ、1台のCPUをガラス基板に実装したZ80Cに変更し、従来と変わらぬ動作を行なうことをデモンストレーションしていた。
CPUをガラス基板のZ80に置き換えた“MZ-80”(動作中) | CPU部のアップ(以上2点撮影:月刊アスキー編集部・中西) |