このページの本文へ

シャープ、1bitデジタルアンプ搭載のポータブルMDはじめ5製品を発表──チップの外販も

2002年09月02日 23時47分更新

文● 編集部 佐々木千之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

シャープ(株)は2日、都内で記者発表会を開催し、同社が開発した1bitデジタルアンプを搭載した、ポータブルMDプレーヤー『MD-DS8』、ミニコンポ『SD-CX8』、DVDビデオ/CD/MDレシーバー『SD-AT10』、5.1ch対応シアターシステム『SD-AT50DV』『SD-AT50』の5製品を発表した。高音質、低消費電力など1bitデジタルアンプの特徴を生かし、高級アンプから携帯電話まで音の出るすべての機器に搭載していくという。またシステム/チップの外販も行なっていくとしている。

発表会で製品説明を行なうAVシステム事業本部オーディオ事業部副事業部長の益田安夫氏
発表会で製品説明を行なうAVシステム事業本部オーディオ事業部副事業部長の益田安夫氏。オーディオ製品の発表会は最近ではまれであり、シャープの意気込みを示している。新製品発売に合わせて積極的な広告展開も行なうという

1bitデジタルアンプは、早稲田大学音響情報処理研究室の山崎芳男教授が提唱した“高速標本化1ビット信号処理”方式をベースとして、シャープが1991年から研究開発を行なって商品化したもので、1999年に世界で初めて1bitアンプ『SM-SX100』に搭載して商品化した。高速標本化1ビット信号処理では、従来のデジタルオーディオ機器がマルチビットサンプリング(例:CDでは16bit、サンプリング周波数は44.1kHz)を行なうのに対して、量子化bit数を1にする一方でサンプリング周波数を対象となる音域よりも十分高く取り、広いダイナミックレンジと広伝送帯域を得るというもの。

1bitデジタルアンプの特徴
1bitデジタルアンプの特徴。高音質、省エネルギー、薄型・省スペースと3拍子揃っている

シャープの1bitデジタルアンプでは、サンプリング周波数を2.8MHzに設定し、オーディオCDの64倍に相当する分解能を得られる。さらに“高精度1チップΔΣ(デルタシグマ)変調LSI”によるアナログ-デジタル変換し、デジタル信号のままアンプ内を伝送/増幅処理を行なうことで音質劣化の少ない自然でクリアーな音質が得られるとしている。

“モバイル1bitデジタルアンプ”搭載ポータブルMD

『Auvi(アウビィ) MD-DS8』は、ポータブルオーディオ機器の高音質化、省電力化、小型化を目指して新開発した“モバイル1bitデジタルアンプ”を初めて搭載したポータブルMDプレーヤー。モバイル1bitデジタルアンプの採用によって、付属ニッケル水素充電池で約32時間、充電池と単3アルカリ乾電池を併用した場合約90時間(※1)の長時間連続再生が可能になったとしている。そのほか、高音質を生かすため、ヘッドホンの左右の音を完全分離する4極プラグヘッドホンの採用、スピーカーからの音を聞いているような臨場感が得られる“ドルビーヘッドホンLSI”の搭載などの特徴を持つ。

※1 時間はいずれもノーマルモード時。LP2モード時はそれぞれ約43時間、約132時間、LP4モード時は約62時間、約180時間となっている。

ポータブルMDプレーヤー『Auvi MD-DS8』
ポータブルMDプレーヤー『Auvi MD-DS8』。動作時にはケースの凸部にある青色LEDが点滅する

音声圧縮方式はATRAC3/ATRACに対応し、周波数特性は20~20kHz(±3dB)、ワウ・フラッターは±0.001%(測定限界)以下、実用最大出力は5mW+5mW。サイズは幅71.2×奥行き77.9×高さ12.0mmで、重さは約97g(充電池込み)。9月17日発売予定で、価格はオープン。編集部による推定小売価格は2万8000円前後。

アナログアンプ並みの価格に抑えたミニコンポ/ゼネラルオーディオシステム

『Auvi SD-CX8』は、本体前面パネルをフラットなデザインとし、木製キャビネット採用のセパレートスピーカーをセットにした1bitデジタルアンプ搭載のゼネラルオーディオシステム。CDプレーヤー、MDレコーダー/プレーヤー、FM/AMチューナー、時計/タイマーを内蔵する。CDプレーヤーはオーディオCDフォーマットで記録したCD-R/RWディスクにも対応している。

『Auvi SD-CX8』
『Auvi SD-CX8』。カラーリングは2色あり、写真手前がブラック、奥がシルバー

MDレコーダー/プレーヤー部はATRAC3/ATRACに対応し、周波数特性は20~20kHz(±3dB)、ワウ・フラッターは±0.001%(測定限界)以下。CDプレーヤー部は周波数特性は20~20kHz(±3dB)、ワウ・フラッターは±0.001%(測定限界)以下。チューナー部の受信周波数はFMが76~108MHz、AMは522~1629kHz。アンプ部の実用最大出力は20W+20W。サイズは本体が幅318×奥行き210×高さ209mm、重さは約4.6kg。スピーカーはサイズ幅120×奥行き181×高さ293mmで重さは約2.5kg×2。消費電力は48W(待機時0.145W)。

9月20日に発売予定で、価格はオープン。編集部による推定小売価格は4万5000円前後。

DVDビデオプレーヤー搭載の2chデジタルオーディオシステム

『Auvi SD-AT10』は、FM/AMチューナー、MDレコーダー/プレーヤーに加えてDVDビデオプレーヤーを搭載し、1bitデジタルアンプを採用した2chデジタルオーディオシステム。5.1chサラウンドサウンドを2つのスピーカー向けにミックスダウンして再生するバーチャルサラウンド機能を備える。同社の液晶ディスプレーテレビ“AQUOS(アクオス)”に合わせた薄型デザインとし、AQUOSとのセットによる“高画質・高音質のDVDパーソナルシアター”として提案するとしている。

『Auvi SD-AT10』
『Auvi SD-AT10』。DVD/CD、MDは本体上部からのスロットインタイプになっている(液晶ディスプレーテレビ“AQUOS”は別売り)

DVDビデオプレーヤー部はDVDビデオ、DVD-R、DVD-RW、オーディオCD、CD-R/RW(オーディオフォーマットおよびMP3)の再生に対応する。DVD再生時の水平解像度は500本、周波数特性は20~20kHz(±3dB)、ワウ・フラッターは±0.001%(測定限界)以下。MDレコーダー/プレーヤー部はATRAC3/ATRACに対応し、周波数特性は20~20kHz(±3dB)、ワウ・フラッターは±0.001%(測定限界)以下。チューナー部の受信周波数はFMが76~108MHz、AMは522~1629kHz。アンプ部の実用最大出力は20W+20W。入力端子は角形光入力×1、アナログTV音声入力(ピンジャック)×1、出力端子は角形光出力×1、スピーカー出力(4Ω)×2、サブウーハー×1(10kΩ)、ヘッドホン出力(ステレオミニジャック)×1、映像出力(ピン)×1、S映像出力×1、D1映像出力×1。サイズは本体が幅332×奥行き178×高さ206mm、重さは約5.9kg。スピーカーは幅130×奥行き198×高さ280mmで重さは約2.8kg×2。消費電力は50W(待機時0.145W)。

10月15日に発売予定で、価格はオープン。編集部による推定小売価格は7万円前後。

1bit 5.1chデジタルアンプ搭載のデジタルシアターシステム

『SD-AT50DV』および『SD-AT50』は、1bitデジタルアンプ技術を使った、総合出力300Wの5.1chアンプ搭載のデジタルシアターシステム。FM/AMチューナー内蔵のAVコントロールユニット部は幅215mmと小型で縦置き/横置きが可能。SD-AT50DVではほぼ同サイズ/同デザインのDVDプレーヤーユニットがセットとなっている。デザインは液晶ディスプレーテレビAQUOSに合わせたものとしている。

『SD-AT50DV』
『SD-AT50DV』は液晶ディスプレーテレビ“AQUOS”との組み合わせがぴったりくるデザインとなっている(AQUOSは別売り)

AVコントロールユニット部(SD-AT50DV/SD-AT50)は、受信周波数はFMが76~108MHz、AMは522~1629kHzのチューナーを内蔵し、音声入力としてデジタル同軸(DVD/CD)×1、光×1、アナログ(ピンジャックL/R)×4、音声出力はスピーカー出力(4Ω)×5、ヘッドホン出力×1を備える。サイズは幅215×奥行き261×高さ58mmで重さは約1.3kg。サラウンドフォーマットとしてはDTS、ドルビーデジタル、ドルビープロロジックIIに対応する。

SD-AT50DVのコントロールユニット部とDVDプレーヤーユニット
SD-AT50DVのコントロールユニット部(奥)とDVDプレーヤーユニット(手前)

サブウーハー/アンプユニット部の実用最大出力はフロント2ch、センター、サラウンド2ch、サブウーハー各50W(計300W)。サイズは幅260×奥行き373×高さ421mmで重さは約9.9kg。消費電力は130W(待機時0.8W)。サテライトスピーカーは1つあたりサイズが幅95×奥行き104×高さ114mmで、重さは約0.7kg。

DVDプレーヤーユニット部(SD-AT50DVのみ)はDVDビデオ、DVD-R、DVD-RW、オーディオCD、CD-R/RW(オーディオフォーマットおよびMP3)の再生に対応する。DVD再生時の水平解像度は500本、ビデオ信号S/N比は70dB以上、音声周波数特性は4~22kHz(DVD時)、4~20kHz(CD時)(+1、-3dB)、ワウ・フラッターは±0.001%(測定限界)以下。音声出力端子はデジタル同軸×1、アナログ(ピンジャックL/R)×1、映像出力端子は映像出力(ピン)×1、S映像出力×1、D1/D2映像出力×1。サイズは幅215×奥行き257×高さ58mmで重さは約2.0kg。消費電力は14W(待機時1.2W)。

SD-AT50DV/SD-AT50はいずれも9月5日に発売予定で、価格はオープン。編集部による推定小売価格はSD-AT50DVが8万円前後、SD-AT50が5万5000円前後。

「音の出るすべての機器に1bitデジタルアンプを搭載する」

シャープ専務取締役AVシステム事業本部長の濱野稔重氏は挨拶の中で、「従来の1bitオーディオにはアナログシステムと比べて割高感があったが、今回の製品では価格差を10~20%程度で投入し、市場の拡大を図る」としたほか、年内には液晶テレビに1bitデジタルアンプを搭載した製品を投入するほか、将来は携帯電話やザウルスなどまで広げ「音の出るすべての機器に1bitデジタルアンプを搭載する」と述べて、積極的な製品展開を図ることを強調した。

シャープ専務取締役AVシステム事業本部長の濱野稔重氏
シャープ専務取締役AVシステム事業本部長の濱野稔重氏

また「2月には早稲田大学、パイオニアと共同で“1ビットオーディオコンソーシアム”を設立し、多くの賛同社を得ている。(完成品の)OEM提供や1bitデジタルアンプの外販も行なっていく」として、シャープブランド製品だけでなく他社にも供給していくことを明らかにした。1bitデジタルアンプを採用した他社製品は2003年4月以降に登場する見込みで、OEM製品に関してはそれよりも早い時期になりそうだという。ただし、あくまでもシャープブランド製品がメインであり、1bitデジタルアンプ製品の外販による売り上げの割合は「(当初は)10%ぐらい、将来は20%」という。

1ビットオーディオコンソーシアム概要と1bitデジタルアンプシステムの外販展開について
1ビットオーディオコンソーシアム概要と1bitデジタルアンプシステムの外販展開について
1bitオーディオ事業の拡大計画
1bitオーディオ事業の拡大計画

濱野氏に続いて1bitデジタル製品への取り組みと製品説明を行なった、AVシステム事業本部オーディオ事業部副事業部長の益田安夫氏によると、2002年度の国内オーディオ市場は、約4650億円(予測)であり、ピークだった1988年(約8910億円)の半分程度にまで落ち込んでいるという。益田氏は、家庭でのエンターテイメントの中心がオーディオシステムから、パソコンやゲーム機に移ったことを理由として挙げた。一方で現在はデジタル高品質コンテンツの増加、ハードウェアの進化、高速・高品位ネットワークの普及など、高品質・高品位な音と映像に対するニーズが高まっているとし、シャープは1bitデジタル技術をもって、「オーディオ製品を再びエンターテイメントの主役にするべく取り組んでいく」と宣言した。

日本のオーディオ市場の売り上げ推移グラフ
日本のオーディオ市場の売り上げ推移グラフ。1bitデジタルアンプ技術でデジタルシアター需要を創造したいという

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン