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提供するのは『ザウルス』というアプリケーション - 『SL-A300』発売直前インタビュー

2002年08月04日 22時32分更新

文● 阿蘇直樹

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いよいよ8月8日、Linux搭載ザウルス『SL-A300』が発売される。この記事では、『SL-A300』が誕生した経緯から、具体的な販売ターゲットや活用方法、アプリケーション開発、ザウルスシリーズの今後などについて、シャープ(株)通信システム事業本部 モバイルシステム事業部 商品企画部長の藤原齋光氏へのインタビューを中心にお届けする。

シャープ(株)通信システム事業本部 モバイルシステム事業部 商品企画部長 藤原齋光氏
シャープ(株)通信システム事業本部 モバイルシステム事業部 商品企画部長 藤原齋光氏

オープンで自由なOS

そもそもなぜ、ザウルスにLinuxを搭載することになったのか。藤原氏によると、「実際のところ、OSは別に何でもよかった」のだという。

「ベースになっているのは、『ザウルスで何をやろうとしているのか』ということです。やろうとしていることを目指す中で、そのとき(開発を開始した2001年初頭の時点で)必要な環境がもっとも整っていたのがLinuxだったわけです」(藤原氏)。

今回のザウルス開発にあたり、シャープ(株)が重点を置いたのが「オープン性」と「自由度」だったという。「オープン性」とは、世界共通のプラットフォームを利用し、開発に必要な情報を容易に入手できることであり、「自由度」とは、「商品を自分たちの自由にすることができる」ことなのだという。

「ザウルスで『こういうことをやりたい』と思ったときに、我々のマイルストーンの中で自由にできるようにしたかったわけです。だから、MicrosoftさんのOSやPalmさんのOSでは、ベンダーさんの意向というのがありますから、どうしても我々の自由な製品作りができないと考えたわけです」

これまでの『ザウルスOS』では、自由な製品開発ができなかったということなのであろうか。

「『ザウルスOS』は、開発者向けにはオープンに情報を提供してきたつもりなのですが、お客様にはクローズドなものであるというイメージができあがってしまっていたというふうに感じています。また、『ザウルスOS』の時にはすべてを自分たちでやらなければならなかったわけですが、Linuxを採用することで、既存のリソースを自由に利用することができるというのも魅力でした」。

ほかにも、Java VMが提供されていることや、Qt/Embeddedなどの環境が用意されていたこと、経営的にも、パートナーシップを結ぶ企業と価値観を共有できるといったことを考えて、リネオ(株)の『Embedix』採用が決定されたのだそうだ。

「私自身はそのとき直接に関わったわけではないのですが、OSにLinuxを採用するという意志決定は割とスムーズに進んだと聞いています」。

『SL-A300』投入は既定路線

米国で『SL-5000D/5500』が発売された当初、日本向けのモデルにはこれまでと同様のザウルスOS搭載モデルをリリースすると公式には発表されていた。しかし藤原氏によれば、『SL-A300』投入は米国モデル投入以前からの既定路線であったそうだ。

「当時、『SL-A300』の仕様など、何も決まっていなかったため、公式には日本向けモデルについてはお話しすることができませんでした。しかし、世界統一の『Zaurus』を共通プラットフォームでリリースすることはすでに決まっていたことです」。

『SL-5000D/5500』以前にも、海外向けの『Zaurus』は存在していた。ヨーロッパでは商標権の問題があり、『Zaurus』の名称を使用せず、『ZR』シリーズという型番をそのまま製品名として販売していたのだという。当時海外向けに販売されていた『Zaurus』は、日本向けの製品とは大きく異なり、クラムシェル型でフルキーボードを搭載したものだったそうだ。

「欧米では、当時縦型のPDAとしては3ComのPalmなどがありましたが、あまり人気がなく、一方でキーボード搭載モデルの人気が高かったので、『Zaurus』も海外向けモデルにはフルキーボードを搭載していたわけです」

今回のLinux搭載ザウルスも、欧米向けにはキーボード搭載モデル、日本向けにはキーボードのないモデルという異なるハードウェアを投入している。

「携帯端末の形は1つではないと考えています。ですから、用途にあわせてさまざまなラインナップを取りそろえることになるでしょう。ただ、『世界のZaurus』として、基本設計や仕様は統一されています。あくまでラインナップが異なるということにすぎません」。

Linux搭載ザウルスシリーズは、ヨーロッパでの商標権を買い取り、世界中どこに行っても『Zaurus』として販売されるものとなる。日本向けとして販売される『SL-A300』が欧米で発売されたり、『SL-5500』を日本で発売するといったことはあるのだろうか。

「残念ながら、販売戦略にも絡むことですので、詳しくお話しすることはできません。ロードマップなどについては、今後できる範囲でオープンにしてゆくことになりますので、そちらから方向性を読みとっていただければと思います」。

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