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日本IBMとSAPジャパン、eビジネス市場拡大に向けて戦略的協業を強化

2002年07月25日 17時30分更新

文● 編集部

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SAPジャパン(株)(以下SAP)と日本アイ・ビーエム(株)(以下日本IBM)は24日、国際競争力向上の手段として、eビジネスを展開していく企業のITインフラを提供していくため、両社の協業関係を強化すると発表した。これにより、ERP製品分野における協業だけでなく、CRMやSRM、SCM製品などの分野における協業体制を確立し、さらにサービス、ソフト、ハードならびに全産業における包括的な協業体制を強化する。

左から大歳卓麻氏、北城恪太郎氏、ヘニング・カガーマン氏、藤井清孝氏
左から日本IBM代表取締役社長の大歳卓麻氏、IBMアジア・パシフィックのプレジデント兼日本IBM代表取締役会長の北城恪太郎氏、独SAP社会長兼CEOのヘニング・カガーマン氏、SAPジャパン代表取締役社長の藤井清孝氏

具体的な協業内容は以下の通り。SAP社の製品群に関する協業範囲拡大については、ERP製品分野におけるSAPソリューションの品質向上のため、両社が2001年2月に設立し、共同で運営しているデリバリーセンター“SAC(Strategic Alliance Center)”を発展させ、支援体制を拡張することにより、CRM、SRM、SCNの共同デリバリー体制を構築する。また、日本IBMはSAPのERP製品『SAP R/3』および各製品のコンサルタント、営業・技術サポート要員を、2002年内に現在の500名から700名に増員する。そしてCRM、SRM、SCM製品分野においても、日本IBMで販売を開始し、両社で専任のスタッフを設置して、教育プログラムや技術・営業面で協力する。特にCRM分野での協業については、ERPを導入済みの企業がCRM製品の導入を検討している際に、日本IBMとSAPの両社が技術・営業面などで強力して、ERPとCRMを連携させるサービスを提供する

日本IBMのSAP製品戦略
日本IBMのSAP製品戦略

顧客規模、業種、地域各分野におけるカバレッジの拡大については、ERP製品を短期間かつ低コストで導入するため、日本IBMが中堅企業などに対して販売しているテンプレート『SMOOTHテンプレート』を両社で拡販する。加えて日本IBMは中堅企業を対象としたSAPの製品の専門サポートを強化する。また、製造業をはじめとする既存の顧客だけでなく、金融や公共など新規の顧客に対しても、両社のノウハウを合わせて、営業協力や技術支援などを推進する。公益分野では、SAPが開発している電力会社向け業務管理システムの開発プラットフォームに、IBMのデータベース『DB2』を採用し、日本IBMからハードウェアの提供と開発への参加を行なう。そして、各地域の組織ごとにも提携を進めていき、現行の関西地区に加えて、中部地区でSAP名古屋支社との協業として、IBM中部支社内にSAP専任のチームを発足させる。

サービス分野に関しては、2001年8月に両社および三菱商事株、(株)アイ・ティ・フロンティアの4社の協業によって開設したERP運用センターに加え、適合性分析および選定におけるプロトタイピングを行なう機器環境を提供するサービス“R/3プロトタイプ機提供サービス”や、災害時などに低コストでバックアップ体制を提供するサービス“R/3ビジネス・リカバリー・サービス”、バージョンアップ時などの必要な期間のみ資源を提供するサービス“R/3期間限定提供サービス”などの付加価値メニューを用意し、SAPのシステムの運用サービスを強化する。また、システム導入後の顧客に対する日本IBMのサポートサービス“AMS(Application Management Services)”により、顧客のライフサイクル全般のサポートと、SAPの製品機能やコンサルタントによるノウハウを組み合わせて、継続的に高品質なサポートサービスを提供するという。

ソフトウェア分野に関しては、DB2を、SAPがeビジネスプラットフォーム“mySAP.com”の標準データベースと位置づけ、両社で営業面・技術面の協業を推進する。このために日本IBMは“SAP DB2営業支援チーム”と、“SAP DB2技術チーム”を設置する。また、mySAP.comを中心としたシステム環境の運用管理、セキュリティー、ストレージなどを提供する“Tivoliソフトウェア”についても、mySAP.comとの組み合わせを両社で推進するため、同様の体制を整える

ハードウェア分野に関しては、mySAP.comのプラットフォームとして、IBMのサーバー『eServer』、ストレージサーバー『エンタープライズ・ストレージ・サーバー(ESS)』の拡販に向けて、日本IBMはSAPビジネスに特化したサポートチーム“SAP eServer/Total Storage営業支援チーム”を新設する。同チームは専任営業、技術サポート、マーケティングで構成され、SAPとの共同提案活動、セミナーをはじめとするマーケティング活動を行なう

このほか両社は、経営者を対象としたセミナーを共同で実施するほか、両社相互の教育を徹底し、両社の共通するパートナー支援を含んだ関係を強化しつつ、日本企業の国際競争力向上を支援していくという。

「日本企業が勝ち残るために、貢献をしていきたい」

同日都内で開催された発表会には、独SAP社会長兼CEOのヘニング・カガーマン(Henning Kagarmann)氏、IBMアジア・パシフィックのプレジデント兼日本IBM代表取締役会長の北城恪太郎氏、SAPジャパン代表取締役社長の藤井清孝氏、日本IBM代表取締役社長の大歳卓麻氏が出席した。

カガーマン氏
「アジアにおける協力関係をさらに強化したいと考えている」とカガーマン氏

はじめにカガーマン氏は、「IBMは、SAPの最大の顧客企業の1つでもあり、SAPのシステムを利用してきたという経歴もある。さまざまなプロジェクトの共同開発もしてきた。昨年、SAPとIBMの間におけるパートナーシップを正式なものとしたが、今回、戦略的提携関係を強化し、営業を共同で行なうことを目的に、戦略的なパートナー関係を確立する」

SAPとIBMのグローバル戦略
SAPとIBMのグローバル・パートナーシップ

「特にeビジネスの分野において、さらに協業関係を広げていく。マーケットに共同で挑戦し、市場機会を両社でとらえていく。単に主要なプロダクトだけではなく、IBMの製品の拡販も行ない、IBMのデータベースを推進するために協力する。今後は、アジアにおける協力関係をさらに強化したいと考えている」と述べた。

北城氏
「中国、韓国、インド、オーストラリア、東南アジアで一層発展させていきたい」と北城氏

次に、北城氏が「数年前に我々は“eビジネス”というコンセプトを打ち出した。多くのお客さまが、このコンセプトに基づいて、さまざまな観点からITを導入し業務改革を進めている。これは、将来に渡って国際競争の中で発展していくための必要だと思う」

「協業を日本で成功させることにより、このモデルをアジア全体に広げたいと思っている。中国は現在経済成長が著しいが、まだSAPの導入の比率は少ない。中国、韓国、インド、オーストラリアなどの東南アジアで、eビジネスをいっそう発展させていきたい。そのための基盤作りが、こういう形で発表できたことを非常に嬉しく思う」と語った。

藤井氏
「“SAPPHIRE '02 TOKYO”を開催しているが、テーマとして“日本再生宣言”を打ち出している。今回の提携は、これに貢献できる、非常に強い連合軍だと感じる」と藤井氏

そして、藤井氏が「弊社は10年目を迎えた。あらためて、日本企業からの弊社の業務のパッケージに対する需要を強く感じている。私どもの持っている製品群の幅の広さが持つ価値が、もう一度認識されてきている」

「日本企業の競争力を高めるためには、中堅企業への拡大が必要。そのためには、中堅企業に対して、早く安くきちんとした製品をお届けすることを、責任を持ってやらなければならない。製品のプロバイダーだけでなく、実際にシステムを構築するパートナーがしっかりしていないと、SAPとしての責任がとれなくなる。中堅企業への拡大・浸透という意味で、IBMとは大変大事なパートナーシップを構築していると言える」

「弊社は、今日明日と“SAPPHIRE '02 TOKYO”を開催しているが、テーマとして“日本再生宣言”を打ち出している。今回の提携は、これに貢献できる、非常に強い連合軍だと感じる。面白いのは、日本の会社の競争力強化のために、ドイツの会社とアメリカの会社が日本企業を助けるということ。日本の企業を強くするためには、世界中からいいものを集めていかなければいけない。それがたまたまIBMとSAPだったのだと思うが、我々は目指すテーマが共鳴している。日本企業の役に立つために、このアライアンスが非常に強力になることを信じている」と述べた。

大歳氏
「日本のさまざまな業界の企業に、eビジネスの積極的な採用によって、勝ち残って頂きたい」と大歳氏

最後に大歳氏が「我々は最近、新聞やTVの広告で“ebusiness is the game.Play to win”と、スポーツに例えた宣伝を行なっている。その意味するところは、競争力をつけて強くなる必要があるだけでなく、いろいろな業界で、勝つか負けるか、負けたらいなくなるだけ、というような風潮が強くなっているので、日本のさまざまな業界の企業に、eビジネスの積極的な採用によって、勝ち残って頂きたいという意味を込めている」

「この協業によって、顧客には、実績のある両社による製品とサービスの組み合わせを、広い範囲の業務で利用してもらえる。日本IBMは、この協業の強化を通して、SAPでのサーバー採用率ナンバーワンを維持するとともに、DB2やストレージのシステムなどを伸ばしたい。最終的には、SAPのインフラがIBMであると言われるようにしていきたい。日本企業が勝ち残るために、貢献をしていきたいと思っている」と語った。

なお質疑応答で、今回の協業の強化による具体的な数値などはあるのかという質問に対し、藤井氏は「データベースを50%増にするといった目標はあるが、具体的な数値は公開できない」と答え、大歳氏は「サーバーやデータベースのシェアなどを、圧倒的に高めたい」と答えた。

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