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【MACWORLD/NY 2002 Vol.3】基調講演、怒濤の製品発表を入手可能順に解説、どの製品はいつ?いくらで?

2002年07月18日 19時35分更新

文● 林 信行

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2002年のMACWORLD EXPO/NEW YORKは、アップルにとって新作ソフトウェアが主体のイベントとなった。17インチワイドスクリーンの新型iMacと20GBモデルを含む新型iPodも発表されたが、スティーブ・ジョブズCEOの基調講演で重きが置かれたのはMac OS X 10.2、iTunes 3、iSyncといったソフトウェアのほうだった。

記事を書くのが遅くなってしまったので、MACWORLD EXPO/NEW YORK基調講演の時系列に沿った通常のレポートは紙媒体などに任せ、ここではちょっと“Think different”して今回、発表された新作のハード、ソフトを入手が可能になる順番にまとめてみよう。また、せっかくなので日本での価格情報やウェブで分かったその他の情報も織り交ぜてみたい。

出荷済み製品
  • 7月18日:iTunes 3[無料]
  • 7月18日:“.mac”[99.95/49.95ドル]
  •  (新アプリケーション、Backupを含む)
  • 7月18日:iMac 15インチモデル
未発売製品
  • 8月上旬:iPod[3万6800円~]
  • 8月上旬:iPod用リモコン[4800円]
  • 8月上旬:iPod用ケース[4800円]
  • 8月中旬:17インチワイドスクリーンiMac[24万9800円]
  • 8月24日:Mac OS X 10.2(コード名Jaguar)[1万4800円]
  • 8月下旬:Windows用iPod[3万6800円~]
  • 9月:iCal(無料)
  • 9月:iSync(無料)

出荷済み製品

■7月18日:iTunes 3は今日から[料金は無料]――インテリジェンスが加わった新iTunes

今回、発表された新作ソフトのうち、今日からすぐにダウンロードして楽しめるのは、デジタルミュージックソフトの『iTunes 3』だ。新バージョンでは曲ごとにユーザーが再生した回数や5段階の評価、最後に再生した日時などを記録できる。この特徴を生かして新たに追加されたのが、スマートプレイリストという機能だ。これはメールソフトの“ルール”に似た簡単な設定で、自動的に変化するプレイリスト(曲セット)をつくれること。
例えば「再生回数がもっとも多いものから順に50曲分」、「まだ1度も聞いていない曲の中からランダムで5GB分」といった曲の選択が可能になっている。
ジュークボックスソフトのiTunesに、コンピューターらしい“インテリジェンス”が加わった記念すべきバージョンアップとなりそうだ。なお、新iTunes 3はACELPという音声用CODECを使って書籍の朗読などの番組を配信している米Audible.com社の番組の再生にも対応している。

iTunes 3
iTunes 3では、状況に応じて変化するインテリジェントなルールを設定できる

■7月18日:“.mac”も今日から[料金は今なら49.95ドル]――アップル純正バックアップソフトも付属!

“@mac.com”で終わるメールサービス、ホームページなどで人気があったiToolsが、新しい有料サービス、“.mac”として生まれ変わった。価格は年間99.95ドル(約1万1600円)だ。ただし、日本時間の17日夜10時以前で、既にiToolsのアカウントを持っていた人なら9月30日までは初年度会費49.95ドル(約5800円)で利用できる。また、まだiToolsの会員でない人は60日間の無料トライアルが用意されている。

ジョブズは、アップルのほうがインターネットサービスをうまく実現できるからこの名にした
“.mac”というネーミングに関してジョブズは、マイクロソフト社の“Microsoft.NET”を意識したものであることを認め、その上で、「アップルのほうがインターネットサービス(Webサービス)をうまく実現できるからこの名にした」と挑戦的な姿勢を示した

99.95ドルという価格はやや高いようにも思えるが、同サービスを購入すると、他では入手できないアップル純正のバックアップソフト、『Backup』(Mac OS X専用)やアンチウイルスソフトの『Virex』がダウンロードできる(クレジットカード番号を入力して数分後にはBackupなどがダウンロード可能だ)。ちなみに、アップルはこれらのソフトがすべてセットになったパッケージ版製品も用意する。

Backup
BackupはiDiskへのバックアップに加え、CD-RやSuperDriveへのバックアップもサポートしている

さらにiDiskの保存容量は100MBに増量され、メール用エリアも別に15MB用意される、ウェブベースのアドレス帳や後述のiCalを使ったカレンダー公開など、サービスそのものの付加価値もあがっている。
アップルが推進するMacならではのデジタルライフを満喫する上では必須のサービスとなっているだけに、入ると入らないではMacやiアプリケーションの便利さに差がでてきそうだ。

ちなみにジョブズは講演でMSN Hotmailなどが有料化したことを例に挙げて、.macの有料化を正当化していたが、これまで無料だと思って安心して登録していたユーザーの間では不満の声も大きいようだ。

■今日:15インチ液晶iMac[17万9800円~]――うれしい値下げ! 液晶iMac

今回のExpo、ハードウェアの目玉は後述の17インチ液晶搭載iMacだが、ジョブズは既存の液晶iMacに対してもちょっとした発表を行なった。

液晶ディスプレー搭載iMacは元々、CD-RWドライブモデルが17万9800円、コンボドライブモデル20万9800円、スーパードライブモデルが22万4800円だったが、液晶パネルなどの部品の価格高騰で3月の“Macworld Conference & Expo/Tokyo 2002”において2万円(米国では100ドル)の値上げが発表されていた。しかし、これらの部品の価格が落ち着いたことでジョブズはこれらの製品の価格を元の価格に戻すことを正式に発表したのだ。

未発売製品

■8月上旬:iPod[3万6800円~]――選べる3タイプ、機能も大幅強化

今回のExpoの隠れたヒット商品はiPodだ。アップルは既存5GBモデルのiPodを大幅に値下げしついに4万円を切る3万6800円で提供することにした。
これに加えて薄くなった新10GBモデル(4万7800円)と最大容量の20GBモデル(5万9800円)を追加。2つの新モデルはFireWireポートにフタが加えられているなどの細かな変更点も加えられた。

新iPodは3種類
新iPodは容量も厚みも3種類
新iPod
4000曲を持ち歩ける20GBタイプも気になるが10%薄くなりリモコンとケースがついた新10GBタイプも気になる存在。なお、新型iPodでは同製品の特徴でもあるスクロールホイールが回転しなくなりセンサー式になった。サラサラなさわり心地で指がよくすべるので、一瞬、従来通りホイールがついているのかと思ってしまった

3種類になった新ラインアップは既にアップルストアにてオーダー可能だが、実際の出荷は8月上旬からとなる。
なお、iPodのファームウェアでは新たに後述のiCalと同期可能なカレンダー・スケジュール表示機能、時計表示機能なども加わっている。
これによりiPodは、ただの携帯型音楽プレーヤーから、“Auto-Sync(同期)”機能搭載の音楽再生機能付き携帯型ビューアーへの進化を果たしたようだ。

iPodの最新ファームウェア
iPodの最新ファームウェアではカレンダーなどの表示も可能になる。これまで隠し機能扱いだったブロック崩しも正式にメニューから呼び出し可能になった

■8月上旬:アップル純正iPod用オプション[各4800円]――あなたのiPodにもリモコンを!

アップルは新iPodに付属のリモートコントロール付き新型ヘッドホン(従来製品に比べてやや小径になっている)や専用のケースも発売する。これらはいずれも既にオーダーを受け付けているが、出荷時期は3~4週間後、つまり8月上旬となっている。

リモコンが登場
待望のリモコンがついに発売。リモコン付属のインナーイヤーヘッドホンは従来製品に比べて小径になっているようだ。ケースはどの厚みにも対応できるようになっている

■8月中旬:17インチワイドスクリーンiMac[24万9800円]――より大きな液晶!

今回、スティーブ・ジョブズ基調講演で最後のとりをつとめた17インチワイド液晶ディスプレー搭載の新iMacは日本では24万9800円で8月中旬から出荷になる模様だ――なお、ジョブズCEOは米国では2週間後(つまり8月上旬)からを出荷開始するとしていた。なお、AppleStoreでのオーダーは既に始まっている。

ジョブズは液晶iMac――特にSuperDriveを搭載した最上位機種は人気の製品だと語り、液晶iMac購入者の50%が最上位モデルを選んでいることを紹介した後、こうした顧客の意見に耳を傾けると一番、望まれているのが大型液晶ディスプレーの採用だと分かったと語り、今回の新製品17インチワイド液晶採用のiMacを発表した。解像度は1440×900ドットでこれまでのモデルに比べて解像度が64%増しになっている。これに加えてビデオチップもNVIDIA社のGeForce 4 MXに強化された。

17インチワイド液晶
17インチワイド液晶は旧Cinema Displayに迫る大きさで見ていて快適。本体正面から見ると、この巨大液晶ディスプレーが蜃気楼のごとく宙に浮いているように見えるという不思議な錯覚におちいる

■8月24日:Mac OS X 10.2[14800円]――iChat、Mail、AddressbookそしてSherlock 3も同梱

今回のExpoの最大の目玉は8月24日発売予定の新OS『Mac OS X 10.2』(コード名“Jaguar”)だ、実際、これ以降で紹介するその他のソフトもJaguarを前提としているためにリリースは9月以降になっている。
コード名のJaguarを前面にフィーチャーし、製品のパッケージからCD-ROMの絵柄までJaguarの柄を押し出している。

CD-ROMの絵柄までJaguar
CD-ROMの絵柄までJaguar。こんなことをやるのはアップルくらいだろう

ちなみに今回のExpoでのアップルの配りものも、このJaguar柄で“X”と描かれたポスターとなっている。
講演でジョブズは、Jaguarには 150以上の新機能が搭載されており、米国での価格は129ドル(約1万5000円)だと語り、「つまり、新機能1つあたり1ドルよりも安いというわけだ」と笑いを誘った。日本では1機能あたりおよそ100円以下となりそうで、これは円高傾向の今の換算レートと比べてもお買い得だろう。

なお、今回の講演ではジョブズはJaguarのMail、iChat、Address Book、新Finder、Sherlock 3、Rendezvousといった機能に詳しく触れQuickTime 6とUniversal Access、Inkwellにも簡単に触れた。
中でも重要なのは独自技術から業界標準技術、MPEG-4全面採用への転換を図ったQuickTime 6だが、これについてはMACPOWER誌8月号第2特集にて、QuickTimeとMPEG-4やマイクロソフトの技術の関係を詳細にまとめているのでぜひそちらを参照してほしい。

ジョブズが予想以上に長い時間を費やして紹介したのが大きな可能性を秘めた技術、“Rendezvous”だ。ネットワーク接続や周辺機器接続を設定不要で使えるようにしようとするIETFの公開標準、“ZeroConfig”に基づく同技術の詳細もMACPOWER誌最新号に譲るが、今回、重要だったのはプリンターメーカーのエプソン、ヒューレット・パッカード、レックスマークの3社が同技術へのサポートを表明したことだ。講演ではアップル社ワールドワイドマーケティング担当副社長のフィル・シラー氏が未設定のネットワークプリンターをつないでいきなり印刷をするというデモを行なった。

ZeroConfig
新しい業界標準技術、ZeroConfig。アップル以外でまずサポートを表明したのはエプソン、HP、レックスマークの3社だった。なお、HPのブースにはJaguarはなく、このZeroConfigのデモはまだ見られなかった

『AOL Instant Messanger』とメッセージ交換が可能なiChat、ジャンクメールのフィルタリング機能がついたMailも、MACPOWER誌8月号で紹介しているが、同誌で紹介していない新機能としては、Address Bookを使ったショートメッセージの送信機能がある。
講演ではジョブズが実際にAddress Bookにある携帯電話の番号からコンテクストメニューを選んで携帯電話宛にショートメッセージ(単文の文字メッセージ)を送信して見せた。

Address Bookを使って電話やショートメッセージを
Address Bookを使って電話をかけたりショートメッセージを送ったりするデモも行なわれた。日本の携帯メールやショートメッセージにも対応するかが気になるところ。技術的には難しくないはずだが……

■8月下旬:Windows版iPod――ついにWindows対応!

アップルは人気のiPodのWindows版も発売する。価格はMac版と同じだ。Mac版はアップル開発のデジタルミュージックソフト、iTunesと同期が可能だが、Windows版はWindows用人気音楽ソフト、『MUSICMATCH Jukebox』と同期が可能になっている。Windows用と銘打たれたパッケージには同ソフトのほか、IEEE 1394の4ピン-6ピンケーブルが付属する。対応OSはWindows Me/2000/XPだ。

ジョブズはこの製品を発表するにあたり、まずはウォールストリートジャーナル紙の(あまりMacよりではない)コラムニスト、ウォルト・モスバーグ(Walt Mossburg)氏の「iPodを、Macだけという狭い市場で売るのではなくWindows用にも販売すべき」というコラムを引用し、「それじゃあそうしてみようじゃないか」と発表した。
iPodはWindows系ユーザーからも非常に注目されていた製品なだけに、Windows版製品の成否はアップルでなくても興味深いところだ。

Windows版のiPodが登場
なんとついにWindows版のiPodが登場。Macを持っていないがためにiPodを敬遠していた人がUSB 2.0のGIGABEATとi.LINKのiPodのどちらを選ぶかが気になるところだ。ちなみにMUSICMATCHI Jukeboxが付属で、4ピン-6ピンのi.LINKケーブル付き)

■9月:スケジュールソフトのiCal(無料)――スケジュールの共有も可能

アップルはJaguarを前提にした新作iアプリケーション、『iCal』を発表した。ジョブズ氏は「今日の我々の複雑なライフスタイルはとても1つのカレンダーだけでは表しきれない」と断ってから同製品を紹介。同製品では、例えばプライベートな用事や仕事関係の用事と、用件の種類ごとにまったく別の予定表をつくることが可能で、後からそれらの予定を重ね合わせ表示可能なのだ。
ちなみにウェブページなどを通して、予定を一般公開することも可能で、これら一般公開されている予定を自分の予定と重ね合わせ表示することもできる。
紙幅も長くなってきたので、詳細は同ソフトのウェブページにゆずろう。

iCal
iCalを使えば、簡単に予定情報の共有や重ね合わせ表示ができる。こちらもぜひWindows版を出してほしいところ

■9月:iSync(無料)――デジタルハブの最終到着点!?

アップルが無償提供する通称“iアプリケーション”はデジタルハブを目指した製品だ。デジタルハブとは、我々の日常を取り囲むさまざまなデジタル製品をより便利に活用するための中枢である。
アップルは今回、iアプリケーションの真骨頂とも言える新製品『iSync』を発表した。Jaguarを前提とした製品で無償配布開始は9月からとなる。
iSyncはMac OS X 10.2付属のAddress BookやiCalで入力した情報を携帯電話やPDA(Palm OS機)、iPodなどと連携可能にする同期用ソフトだ。
携帯電話との同期はBluetooth経由で可能で、デモでは米国で発売中のソニー・エリクソン社製端末『T68i』(キャリアーはCingular社)を使って紹介、ジョブズの講演の後にはソニー・エリクソン社長の井原勝美氏も挨拶を行なった。

iSyncも9月リリース
デジタルハブの真骨頂。携帯電話やiPod、Palmなどあらゆるデジタル機器と同期が可能なiSyncも9月リリース予定だ。日本の携帯電話、PHSとの連携がどうなるかが一番気になるところだろう

とりあえず、基調講演で紹介された新製品はこれで全部だが、実はアップルは講演でこそ触れていないが、Mac OS X 10.2とほぼ同時リリースとなるMac OS X Server 10.2、QuickTimeにMPEG-2再生機能を追加するプラグインなども新たに発表している。

講演が終わりプレスルームで作業をしていると、世界各国のプレスの間から「今回のExpoは発表が少なかった」といったぼやきが何件か聞こえてきた。確かにMacの新型は17インチワイド液晶搭載モデルだけしか発表されていない。
しかし、新型Macが発表されて喜ぶのはまだMacを持っていないユーザーと古いMacを使っているユーザーだけ。
これに対して、今回、発表された一連のソフトやiPodなどのアプリケーション(応用製品)はMacそのものの価値を高めより魅力的にするものであり、これからMacを買う人はもちろん、これまで長らくMacを愛用してきたユーザーにも魅力的、さらにWindowsからの乗り換えを考えているユーザーにも最後の一押しとなってくれそうな力を持っていると思えるのだが、それは筆者だけだろうか?

おまけ情報1

上の体裁では紹介できなかったが、今回の講演はかなり対マイクロソフト色が濃い内容だった。講演はWindowsからMacへの乗り換えユーザーをフィーチャーしたReal Peopleキャンペーンの新TV CMでスタートしたが、この後、ジョブズが発表した統計がおもしろかった。実はこの広告の最後に現れるWindowsからMacに乗り換えて成功した人たちのエピソードを紹介しているウェブページ“Siwtch”には6月10日以来なんと170万人のユニークビジターが訪れており、しかも、その60%がWindowsを使っていたということだ。

おまけ情報2

前日レポートで関係筋から入手した「Hello」と描かれた起動画面の正体が分かった。光のせいで液晶が白黒に見えたので新しい白黒液晶ディスプレー採用の携帯型製品と勘違いしてしまったが、どうやらこれは新OS、Jaguarの起動画面だったようだ。つまり、残念ながらアップルが携帯型の液晶端末を開発しているというのは、少なくとも今回は筆者の勘違いで終わってしまったようだ。期待されていた読者の方々には申し訳なく思う。

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