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「振り子は戻る、RAMBUSはいずれメインストリームになる」──ラムバス副社長スティーブ・トバック氏インタビュー

2002年07月18日 05時19分更新

文● PC Explorer編集部 野口岳郎

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“RDF(Rambus Developer's Forum)”で、RAMBUS社の次世代技術“Yellowstone”の詳細と、PC向けRAMBUSメモリの新しいロードマップが公開された。メインストリームはすっかりDDRに譲った形のRDRAMは、今後どう生きていくのか? 来日したスティーブ・トバック(Steve Tobak)副社長氏に、主にPC環境におけるRAMBUSおよびYellowstoneの応用を中心に聞いた。

スティーブ・トバック氏
ワールドワイドマーケティング担当副社長スティーブ・トバック氏。伝説のCPUメーカーCyrixでのマーケティングマネージャの手腕はつとに有名

RDRAMの重要度は今後ますます上がる

[Q] RDRAMメーカーはサムスン、エルピーダ、東芝の3社に減ってしまった。性能がいいといっても、将来が不安だ。
[Tobak] 振り子のようなものだ。数年前、IntelはRDRAMがすべてのPCのメモリになるといってプッシュした。このとき振り子は、RAMBUS側に大きく振れ、メモリメーカーはみんなRDRAMを製造した。けれどその後、ご存じのようにいろいろ問題があり、また、Pentium III自身の性能がそう高くないためRDRAMの意味が生きてこなかった。各所の反発もあって、結局Intelは、マーケットの決定にしたがう、といってDDRをサポートすることになった。振り子は逆方向に振り切れたわけだ。

さて、今起きていることは何か。高性能システムへの非常に大きな需要がある。今PC市場は縮小気味にある。産業界にとっては、高性能化は、マーケットの拡大に対するキーだ。
それで我々はPC1066 DRAMを投入し、32bitモジュールのRIMM 4200を投入した。マーケットはびっくりした、というのはDDRではこんな性能は実現できないからだ。
RDRAMとDDRはしばらくは共存することになるだろう。RDRAMはパフォーマンススペースでリーダーシップを持ち、DDRはメインストリームを扱う。しかし、そのうちRDRAMは徐々にメインストリームに進出することになる。なぜなら、高性能プロセッサ、例えばPentium 4-2GHzといったものがメインストリームに降りてくるからだ。そうなると、必然的に高性能メモリへの需要が高まる。

需要は現在のサプライヤで十分サポートされる。特にサムスンやエルピーダはPCマーケットに大きな影響力を持っている。
Pentium 4マシンを買うとき、最もパフォーマンスのあるシステムを買いたければRDRAMが必要だ。Intelにとっても、Athlonをうち負かすために、RDRAMはどうしても必要だ。我々は新しい32bit RIMMも提供し、いっそう使いやすくもなっている。
市場へ出荷され始めた32bit RIMMモジュール
ちらほら市場へ出荷され始めた32bit RIMMモジュール。RIMM4200は、1066MHz動作のチップを使い、1モジュールで4.2GB/秒の転送能力を持つことからこの名がある

なぜ32bit化が遅れたか?

[Q] 32bit RIMMはもっと早い段階で出せたのではないか。モジュールが2枚単位で必要というのも、RDRAMマザーを選ぶ際に心理的にネガティブな要素になる。
[Tobak] 私はまだ数ヵ月しかこの会社で働いていないので、過去の事情はわからない。ただ、明らかなのは、カスタマーの意見を聞いたからこそ、我々は32bitモジュールを投入したということだ。16bit RIMMの利点としては、容量を増やせるということがある。16bitなら4つのモジュールを使える。(1モジュールに載せられるチップ数は1枚につき16個なので)、256Mbit RDRAMチップを使って2GBまでメモリを実装できる。これが32bitだとモジュールが2つまでなので、総容量が1GBに制限される。ただ、90%のアプリケーションには1GBというのは十分な容量だろう。

一方で、DDRのほうは2モジュールの128bitに移行しようとしている。面白い話とは思わないか? 我々は、1つのモジュールでフルパフォーマンスを得られるRIMM 4200を出荷している。これは1モジュールでは最高速のデバイスだ。しかもこれは、4層のATXまたはMicroATXマザーボードで利用できる。

我々はシステムコストの低減を意識した。つまり、32bit化することで、2つの別々のモジュールを作るよりも、モジュールのコストを削減できる。さらに、マザーボードにおいても、ソケットの数を減らすことができるので、コストが下がる。ボードスペースも減る。特に小型マシンを作ろうとする場合にきわめて有効だ。

RDRAMは、パフォーマンスリーダーであり、コストも安くなり、使い勝手も良くなったわけだ。

DDRは性能面での不測を補うために、デュアルチャネルを持ち出した。しかし、これにはグラニュアリティ(最小構成)の問題がある。Rambusでは、256MBチップ2つのモジュールを作れば、Pentium 4システムで最小64MBからの構成が可能だ。しかしDDRの場合、(標準的な8bit出力の)256MBチップを使う場合、デュアルチャネルだと512MBが最低容量となる。

デュアルDDRよりスマート

[Q] しかし、デュアルDDRのようなシステムを使いたがるハイエンドのユーザーにとっては、512MB程度は当たり前の容量なので、問題にはならないのではないか?
[Tobak] 今は、確かにそうだ。しかし、PCのメインストリームが2GHzといった時代になれば、誰もが(今のシングルDDRでは得られないような)高速なメモリを必要とする。そのとき、DDR側がデュアルチャネルで、最低メモリ512MBが条件となると、問題になるはずだ。デュアルDDRシステムは、メインストリームにマイグレートするのに問題がある。
[Q] 256MBしか必要としない人が最低512MB買わなくちゃいけないのは、確かにコスト的に問題だが、それを言ったら現在RDRAMは256MBでもDDRを512MB買うより高いのだから、実質競争力にはならないのではないか。
[Tobak] メモリの価格はさまざまな要因によって変化し、私たちがコントロールすることもできないので、その質問には答えにくい。ただ、RDRAMの価格は昔はSDRAMよりずっと高かったが、最近は接近してきている。32bitモジュールにすれば、モジュールが1個ですむのだから、コスト的にはさらに有利になる。
[Q] SiS以外にRDRAMをサポートするチップセットベンダーは増えていないか?
[Tobak] 今日アナウンスできる情報はない。SiSには昨年ライセンスして、製品がそう遠くない未来に出荷されると期待している。もちろん他のチップセットメーカーにも期待している。ただ、こういうものは無理にお願いしてもだめで、マーケットでRDRAMが受け入れられているかどうかがキーだ。幸いPC1066の性能は、Webの技術系サイトや有名PC誌で広く認められている。これはチップセットメーカーにとってRDRAMベースの製品を作ることに魅力になるはずだ。

Yellowstoneは最初は非PC分野

[Q] Yellowstoneの最初の主なターゲットは、メモリインターフェイスか?
[Tobak] 最初はメモリとそのコントローラがターゲットだ。しかし、この信号技術自体は、メモリ以外の技術にも応用可能だ。
[Q] 量産はいつごろ?
[Tobak] カスタマーにシステムが出荷されるのは2004年か2005年という時期だと思う。
[Q] それまではRDRAMを高速化する?
[Tobak] 1333MHzの64bitまでロードマップを出しているが、ロードマップがここで終わっているのは、技術的にこれ以上伸ばせないという理由ではない。今お見せできるのはここまで、ということだ。だから、2004年以降にRDRAMが1333MHzを超えて性能を向上させていくというのは、十分にありうる。今年、ロードマップの最高クロックを1200MHzから1333MHzに変更したが、来年もまた改訂するかもしれないし(笑)。
Yellowstoneのデータ転送のデモ
Yellowstoneによる3.2GHzでのデータ転送のデモ。最終的には6.4GHzまで向上させる予定という
[Q] YellowstoneベースのシステムのコストはRDRAMと比べてどうか?
[Tobak] Yellowstone技術は、コストセンシティブなアプリケーションをターゲットにしている。ローコストDRAM、ローコストパッケージング、少ないピンカウント、ローコストのコントローラ。システムレベルコストとメモリの価格をともに下げることに注力した。RDRAMでは、トレースランマッチング(配線長の適合)、ボードデザインルール、モジュールデザインルール、それぞれ厳格だった。Yellowstoneは本質的にこれらの制限をうち破っている。
[Q] ということは、もっと簡単にシステムを作れる?
[Tobak] そう。そのあたりは私たちは学習した。Yellowstoneは、世界最速のメモリインターフェイスであるとともに、非常にローコストでインプリメンテーションができる。しかも競合者はいない。
[Q] Yellowstoneはポイント・トゥ・ポイントのインターフェイスだというが、それではPC上に実装した場合、メモリを増設できないのではないか?
[Tobak] 2004年や2005年というのは、現在私たちがターゲットとしているアプリケーションが実用化される時期だと思っている。それは何かというと。コンシューマグラフィックス、PCグラフィックス、ハイスピードネットワークといった分野だ。

PCのシステムメモリにおいては、確かにマルチドロップ(複数のモジュールを装着できるようにする)にすることは重要だ。対応するにはいくらか時間がかかるだろう。だから、YellowstoneがPCメモリに乗るのは、2005年以降になるだろう。

ただ、PC業界はそんなに早く(Yellowstoneが実現する)3.2GHzインターフェイスを必要とはしないだろう。今ようやく1GHzに達したばかりだ。133MHzのPC133から1GHzのPC1066になるのにずいぶん時間がかかった。1GHzから2GHzだって、そうすぐにはにすぐには進まない。RDRAMは2005年まで、高性能システムへのソリューションとして有効であり続けるだろう。
[Q] CPUメーカーが内蔵メモリインターフェイスとしてYellowstoneを採用するという可能性については?
[Tobak] 例えばHammerのDDRインターフェイスみたいにということか? もちろんAMDやVIAが採用してくれればそれはうれしい。何だって起こりうる。

聞き手:PC Explorer編集部 野口岳郎

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