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『SL-A300』発売は8月8日? -SHARP Linux Zaurus SL-A300発売記念セミナー

2002年07月13日 06時24分更新

文● 阿蘇直樹

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会場のようす。

Linuxザウルス『SL-A300』の開発コンセプトや機能を紹介するセミナー「SHARP Linux Zaurus SL-A300発売記念セミナー」が、7月12日にぷらっとホーム(株)秋葉原店舗にて行なわれた。講師は、『SL-A300』の企画、プロデュースを担当したシャープ(株)通信システム事業本部モバイルシステム事業部商品企画部長である藤原齋光氏。40名限定のセミナーには、ザウルスユーザーが多く集まり、熱心にザウルスでメモをとる姿が見られた。



参加者の机の上にあるザウルス
参加者の机の上にはザウルスが並ぶ。多くの人がザウルスで熱心にメモをとっていた。

出荷延期について

セミナーを始めるにあたり、藤原氏は先頃発表された『SL-A300』の出荷延期について、「商品の万全を期するために現在作業を行なっている」とし、8月上旬と告知されている出荷時期について「8月8日のリリースを目指して作業している」と語った。なお、コミュニケーションアダプター『CE-JC1』は、『SL-A300』発売後1カ月程度遅れて発売される予定とのことだ。

シャープ(株) 通信システム事業本部 モバイルシステム事業部 商品企画部長 藤原齋光氏
シャープ(株) 通信システム事業本部 モバイルシステム事業部 商品企画部長 藤原齋光氏

ザウルスの歴史

ザウルスシリーズは、1993年の10月にリリースされた『PI-3000』から始まる。この年は、米Apple Computerが『PDA』のコンセプトを打ち出し『Newton』を発表している。シャープは1987年頃から電子手帳を製品化していたが、ザウルスは「新携帯情報端末」をコンセプトにリリースされた。『PI-5000』でモデムに対応し、翌年にはデジタル携帯電話に対応した製品もリリースされている。当初の通信環境はこのモデムのほかに、赤外線による通信も独自のプロトコルのものが実装されている。

1996年にリリースされた『MI-10』は6万5000色表示のカラー液晶を搭載し、「カラーザウルス」と呼ばれた製品。この製品からWebブラウザが搭載され、通信はデジタル携帯電話ベースのものになっている。また、2000年にリリースされた『MI-E7』は、MPEG動画再生に対応し、エンターテイメント機能を強化した製品だ。

藤原氏によると、この流れは社会環境の変化に合わせたもので、通信インフラの変化や扱うコンテンツの変化にあわせてザウルスの機能も変化してきたのだという。

ザウルスシリーズの歴史
ザウルスシリーズの歴史。通信環境や扱うデータの種類が変わるたびに、新しいコンセプトの製品を世に送り出している。

『SL-A300』誕生の背景

『SL-A300』も、これまでのザウルスと同様、現在の通信環境や扱うコンテンツに対応した製品になる。

通信環境はこれまで、アナログからデジタル、携帯電話からPHSなどと変化し、無線LANといった新しいものも登場している。また、扱う情報も、家庭やオフィスにコンピュータが入り込み、ザウルス単体ではなくコンピュータとの連携で情報を扱うようになっている。また、ユーザーにとって扱う情報量が増える一方、ユーザー自身の情報処理能力はそれほど増えていない。「ユーザーはネットワークインフラの上で泳がされている状況だ」(藤原氏)という。

『SL-A300』は、このような環境の変化に対して「ユーザーに常に最適な環境を提供する」ことを目指したという。用途としては、『SL-A300』で情報を作成、処理することよりも、オフィスや家庭で扱う情報と同じものを出先でも見ることにフォーカスしている。また、世界中どこでも同じアプリケーションや機能を利用することを可能にする「世界のザウルス」を目指して開発されたそうだ。

『SL-A300』の位置づけ
『SL-A300』の位置づけ。「コンテンツビューワ」をコンセプトに開発されており、ビジネス情報を見ることに主眼が置かれている。

環境の変化に対応し、「世界のザウルス」を実現するためには、世界のソフトウェア、ハードウェアベンダーの協力が必要になるため、これまでのザウルスと違い、ザウルスに関する情報を公開しなければならない。そこで、「オープンなOS」が必要になる。また、既存のザウルス向けアプリケーションや技術などの資産を容易に移植することができるという「柔軟なOS」が必要になる。Linuxの採用はこうした要請のもとで決定されたのだそうだ。藤原氏は『SL-A300』について、「世界で開発されたソフトウェア、ハードウェアで、お客様に最高の環境を提供する」と語った。

『SL-A300』の特徴

藤原氏は『SL-A300』の特徴として「3つのS」を挙げる。「3つのS」とは、Simple、Smooth、Smallの頭文字。『SL-A300』は、この「3つのS」を実現するためにそれ以外の要素は切り捨て、「徹底的に練り上げた」(藤原氏)のだそうだ。

『SL-A300』は、QVGAカラー液晶搭載の携帯端末の中では世界最小の製品になるという。サイズや重量については「胸ポケットに入れたときに違和感のないものにした」といい、手に持ったときの軽快感のために、比重を1以下にすることにもこだわったという。

また、シンプルな操作を実現する新機能として、「ザウルスショット」、「ザウルスドライブ」を紹介。「ザウルスショット」は、コンピュータの画面に表示されている情報をそのままザウルスに取り込む機能で、画像はJPEG形式、文書はテキスト形式で保存される。藤原氏は「パソコンの情報というのは、基本的に画面に表示されているもの。画面表示をそのまま取り込むことで、シンプルに情報を扱うことができる」とした。また「ザウルスドライブ」は、『SL-A300』とコンピュータをUSBケーブルで接続するだけで、『SL-A300』が外部ストレージとして認識されるというもの。Windowsのエクスプローラからファイルをドラッグ&ドロップで『SL-A300』に取り込むことができる。外部ストレージとして扱われるので、ファイル形式は問わない。「会社で扱っていたデータをそのまま自宅に持ち帰って操作しなければならないときなど、何も考えずにザウルスに取り込めばいいわけです」(藤原氏)。

スムーズな操作を実現する機能としては、「リンクカレンダー」が紹介された。「リンクカレンダー」は、ザウルスの中にあるデータとカレンダーを連携させたもので、たとえばスケジューラに入力されている会議の予定に、その会議で必要な資料をリンクするといった使い方が可能になる。

ザウルスコミュニティ

これまでのザウルスは、ユーザー向けにハードウェアやOSに関する情報は特に提供されてこなかったが、今回のセミナーでは、カタログにも掲載されている『SL-A300』のハードウェアやOSについて紹介された。

『SL-A300』で動作するソフトウェアと開発言語
『SL-A300』で動作するソフトウェアと開発言語。このような情報はこれまでユーザー向けには提供されてこなかった。

開発環境については、C/C++開発環境として『Qtopia』、Java開発環境として『Jeode』、業務アプリケーション開発には、既存のザウルス向け開発環境の『ル・クローン』が提供されるという。また、すでに米国やヨーロッパで発売されている『SL-5500』開発者向けに提供されているのと同等のWebサイトを通じた技術情報の提供がなされるという。

現在、『SL-5500』開発者向けコミュニティサイトには3万人程度の登録者がおり、開発されているアプリケーションは300本以上あるという。開発者の中には日本人もすでに500人以上いるそうだ。日本での開発者向けコミュニティサイトは、「Sharp Space Town for Zaurus」の中に設置される予定で、製品発売と同時期に開設される予定だ。また、ソフトウェアのコンテストなどを世界で実施するなどの予定もあるという。

事実上、Linux搭載機器の中でもっともコンシューマー寄りの製品となるであろう『SL-A300』。ザウルスユーザーの関心も非常に高く、セミナー終了後も藤原氏に質問を投げかける参加者が多く見られた。

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