「FC31 Fusion」 |
RADEONファミリなどでビデオチップベンダとして知られるATI Technologies初のPC用チップセット“RADEON IGP”。コードネーム“A3”として知られ、3月の発表時、夏頃に登場するとされていた搭載製品が梅雨明けを待たずにアキバへデビューした。第1弾となったのはRADEON IGPのローンチパートナーとなっているFIC製の「AT31 Fusion」(型番:AT31)。RADEON IGPはPentium 4用の“RADEON IGP 330/340/340M”とAthlonファミリ向けの“RADEON IGP 320/320M”が用意されているが、AT31 Fusionは“RADEON IGP 320”チップセット搭載するMicroATXマザーボードだ。
パッケージはATI Technologies製チップ搭載製品らしく、これまでのFIC製品とは違う“赤”いもの。2重パッケージを採用しているのも芸が細かい |
ボード裏面 |
RADEON 7000(VE)相当のビデオコアを搭載するRADEON IGP
Pentium 4/Athlon向けに合計5製品がラインアップ
“A3”こと“RADEON IGP 320”。チップクーラーを剥がすと“A3”の刻印が見える |
RADEON IGP(Integrated Graphics Processor)はRADEON 7000、つまりRADEON VEビデオコアを内蔵するNorth Bridge。ここでRADEON 7000(VE)についておさらいしてみると、同製品は第1世代RADEONシリーズのレンダリングエンジン“Pixel Tapestry”とメモリバンド幅を効率的に利用する技術“Hyper Z”、そしてDVD-Video動き補償とデュアルモニタ出力のサポートというRADEONファミリの特徴は押さえつつも、RADEON 256(現RADEON 7200)からハードウェアT&Lエンジンを省略し、PC2100(DDR266) DDR SDRAMに対応するメモリバス幅を128bitから64bitへと狭めたビデオチップ。ローエンド向けと位置づけられる製品で、実際にATI TechnologiesやFICのウェブサイトを見る限り、RADEON IGPの内蔵ビデオコアとしてのRADEON 7000(VE)は、ビデオチップとしてのRADEON 7000(VE)とほとんど同じものであると考えて良さそう。Pentium 4用のRADEON IGP 340MにはMobility RADEON 7500と同様の省電力技術“PowerPlay”テクノロジが搭載されるという特徴はあるものの、Nvidia製ビデオ統合チップセット“nForce”が搭載する“TwinBankアーキテクチャ”のような、自作派注目の機能を搭載しているわけではなく、パフォーマンスという意味でそれほど特筆すべき点が見あたらないのは事実だ。
しかし、統合チップセットではじめてデュアルモニタ出力に対応したのは見逃せないところでもある。端子が用意されていないため、セカンドアナログ出力やDVI出力は行えないものの、CRTモニタ+TVといったデュアルモニタ出力を標準でサポートする統合チップセットとしてビデオキャプチャ全盛となっている時代にマッチするかもしれない。定評のある画質が統合チップでも健在だとすれば、メーカー製PCやベアボーンPC市場、あるいはノートPC市場を席巻する可能性もあるだろう。
パッケージに記載されるAT31の仕様 | 裏面にはなぜか搭載していない“Charisma Engine”についての説明が | “RADEON IGP 320”を搭載するAT31 FusionはSocket Aを用意している |
AT31 Fusionが搭載するのは“VT82C686B” |
一方RADEON IGPにはSouth Bridgeとして“IXP 200/250”(IXP:IO Communication Processor)、あるいはVIA製“VT82C686B”などのサードパーティ製チップを接続可能。IXP 200/250を接続する際には266MB/秒の帯域幅を持つ“A-Link”で、一方サードパーティ製チップを接続した場合には133MB/秒のPCIバスで接続されることになる。接続するSouth Bridgeによってバス幅が変化するという仕様はユニークだが、これはローエンド向けの統合チップセットとして、チップ選択の柔軟性を高めるための措置だろう。ちなみにAT31 Fusionが採用するのはお馴染みのVT82C686Bであり、Ultra ATA/100対応でUSB2.0コントローラや3Com製のMAC(ネットワークコントローラ論理層)を内蔵するIXPは今回、その姿を見せていない。
初のデュアルモニタ対応マザーボード
添付のTV出力ブラケット |
そんなRADEON IGP(RADEON IGP 320+VT82C686B)搭載製品として初登場となるとAT31 Fusionの赤い基板を見てみると、拡張スロットはAGP×1、PCI×3。DIMMスロットは2本で、合計4バンク、2GBまでのPC2100 DDR SDRAMを搭載可能だ。オンボードではAC'97コーデックとRealtek製のネットワークコントローラを搭載。MicroATXマザーボードとしては標準的だが、S/コンポジット端子をハーネスで引き出し、内蔵するRADEON 7000のグラフィックをデュアルモニタ出力したり、TV/ビデオデッキのみへ出力できるというのはRADEON IGP 320マザーボードらしい特徴と言えるだろう。もちろん、デュアルモニタ出力を標準でサポートするマザーボード単体が登場したのは今回がはじめてだ。TV出力信号はNTSC/PALなどから選択できる。なおFSB設定については不明。
豊富なビデオ出力設定項目がユニークだ |
特別な仕様でないため、Windows 98SE以降に幅広く対応。CPUはAthlon XP 2100+サポートとあるが、先日登場したThoroughbredコア版Athlon XPを利用できるかはわからない |
チップクーラーの配線はなんともFICらしい |
1万5800円でいち早く販売を開始したのはOVERTOP。並行輸入品であるため、保証は1カ月間になるという。スペックを考えると初物だということを考えてもやや高めであるのは否めないが、まったく未知数のチップセット搭載製品だけに、その性能が気になってしょうがない“人柱”たちの注目を集めそうだ。
【関連記事】