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富士通、自然に還るパソコンを2004年に発売――原料はトウモロコシ

2002年06月05日 15時41分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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富士通(株)と(株)富士通研究所は5日、植物系素材を利用した“生分解性プラスチック”をノートパソコンの筐体部品に採用する技術を共同で開発したと発表した。

両社が開発した生分解性プラスチックは、トウモロコシ等の植物を原料とするポリ乳酸を主成分としたもの。糖類や有機酸、デンプン、セルロースを元に合成、誘導してプラスチックを生成するので、土に埋められた場合、微生物の働きによって水と炭酸ガスに分解され、自然と同化する。また、焼却された場合も有害化学物質が発生しない。さらに、製造時に必要なエネルギーも、現用のPC/ABS樹脂に比べて半分の消費量で済むという。

パソコンとトウモロコシ
写真左は、生分解性プラスチックを部品の一部に採用している既存製品『FMV-BIBLO NB9/1600L』。写真右は、筐体全体に生分解性プラスチックを採用した試作機。試作機は実はちゃんとパソコンとして動作するのだが、燃えやすいので商品として出荷できる段階ではないという。なお、写真中央にあるのが今回開発された生分解性プラスチック
分解の様子
埋められた生分解性プラスチックは、微生物によって徐々に分解されていく

富士通では1996年より生分解性プラスチックをLSI用トレイ等に採用していたが、タルク(土の主成分であるケイ酸マグネシウム)を添加して強度を高め、収縮率を最適化したことで、今回ノートパソコンの筐体部品に適用できたという。なお、プラスチックの分解は地中の微生物の働きによって行なわれるので、通常使用する際には問題ないという。

富士通は、3月5日付けで発表したモバイルPentium 4搭載ノートパソコン『FMV-BIBLO NB9/1600L』の一部品に、この生分解性プラスチックを採用、さらに5月14日付けで発表した『FMV-BIBLO NB』シリーズ夏モデルにも採用している。生分解性プラスチックが採用されている部品は、赤外線受光部をふさぐためのパーツ“IRマスク”(重量0.2g)。富士通は国内/海外とも同じ筐体のノートパソコンを販売しているが、海外向けモデルが赤外線ポートを備えているのに対し、国内向けモデルは装備していない。そのため、国内向けモデルでは、赤外線受光部をプラスチックでふさいでいるのだという。

IRマスク
『FMV-BIBLO NB』シリーズに採用されている生分解性プラスチックを採用したパーツ“IRマスク”とは、これ(赤丸部分)のこと。既存ユーザーは、手持ちのFMV-BIBLO NBをチェックしてみよう

富士通では、1998年から全国5ヵ所のリサイクルセンターで、パソコンを含めた事業系機器の使用済み製品を回収/リサイクルしているが、製品の開発段階から環境配慮に取り組むべくパソコン向けの生分解性プラスチックの開発を進めているという。富士通担当者は、「富士通の基本はリサイクルだが、たとえ回収/リサイクルから漏れて廃棄され地中に埋められたとしても、生分解性プラスチックなら分解されて水と炭酸ガスになる」としている。

なお、現在の生分解性プラスチックでは、難燃性の問題から筐体全体に採用できないため、両社は今後、有害物質の発生しない難燃化技術を開発し、2004年後半には、生分解性プラスチックを筐体全体に採用したノートパソコンを秋冬モデルとしてリリースしたいとしている。なお生分解性プラスチック採用パソコンの価格については、現時点では、現用のPC/ABS樹脂と比較すると1.5倍のコストがかかってしまうが、2004年には同程度となる見込みという。

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