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日本TI、戦略説明会を開催──日本にデジタル情報家電専門の組織を設立

2002年04月25日 21時01分更新

文● 編集部 佐々木千之

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日本テキサス・インスツルメンツ(株)(日本TI)は25日、都内で記者やアナリストを集めてビジネス戦略説明会を開催した。社内に、開発・設計・マーケティングをトータルにサポートするデジタル情報家電専門組織“DCES(デジタル・コンシューマ・エレクトロニクス・ソリューションズ)”を300人体制で立ち上げることを明らかにした。

米TIのエンジバス会長、社長兼CEO
米TIのエンジバス会長、社長兼CEO

この説明会は米テキサス・インスツルメンツ社のトーマス・エンジバス(Thomas Engibous)会長、社長兼CEOの来日を機に開催したもので、エンジバス氏は主力のDSPやアナログICの売り上げは、携帯電話の世代交代が進むことで急速に伸びるなどと語った。

デジタル家電向け組織を日本に開設

DCESは、デジタルオーディオ分野や、デジタルカメラ、プリンターなどデジタル画像処理分野向けに、チップ、ソフトウェア、システム構築のノウハウ、サポートをトータルに提供できる組織。茨城県つくばと神奈川県厚木にある研究開発拠点が世界中のTIのノウハウを結集し、デジタル情報家電向けのデジタル/アナログ技術を開発するとしている。

日本TIのK・バラ代表取締役社長
日本TIのK・バラ代表取締役社長

DCESについて日本TI代表取締役社長のK・バラ(Krishnan Balasubramanian)氏は「情報家電分野に強みを持っている日本メーカーとWin-Winの関係を作る。完全なハードウェアとソフトウェアのソリューション、ワールドワイドのTIのリソースを、日本の顧客がグローバル市場で成功するために提供する」などと述べた。

エンジバス氏は、2001年のIT・半導体不況のTIへの影響について触れ、「半導体産業にとっては史上最悪だった。過去の減速局面では戦略的プロジェクトを中止することもあったが、今回は長期計画を進めるだけの財務力を確保していた点が異なる」とし、生産設備に投資することで、半導体工場では300mmウエハーの生産ラインを導入したほか、0.13μmプロセス、銅配線といった最先端技術を採用した製造を開始したと語った。

TIの四半期ごとの事業別売り上げ概況
TIの四半期ごとの事業別売り上げ概況

また「300mm、0.13μmプロセス、銅配線の生産技術は世界で5社しか持っていない。今回の半導体不況によってシリコンの技術を持つものと持たざるものの差ができた」と述べて、不況期に投資できたかどうかが半導体企業の生産技術格差を生んだという認識を示した。2002年の投資については、8億ドル(約1000億円)を0.13μmプロセスおよび2003年に向けた0.09μmプロセスの生産設備に投資するほか、15億ドル(約1900億円)を研究開発に投資するとしている。

不況期に設備投資できたことにより、競争力を維持できたという
不況期に設備投資できたことにより、競争力を維持できたという

TIの半導体事業の状況については四半期ごとの売上高グラフを見せ、TIの下降局面は2001年の第3四半期に底を打ったとした。特にTIの半導体が強い分野であるワイヤレス機器市場に関しては、高機能な携帯電話への採用が進み、2001年代3四半期から3四半期連続で増加したという。

エンジバス氏は今後の展望として、現在出荷している動作速度600MHzの『C64x DSP』、携帯電話向けの『OMAP(オーマップ)』プロセッサーファミリー、信号処理向けDSP/アナログICの3つに注力すると述べた。

C64x DSPはフィンランドのノキア社、米パーム社などの携帯電話メーカー、PDAメーカーのほか、有線および無線ネットワーキングメーカー、家電メーカーの多くが採用したほか、OMAPは世界のほとんどの携帯電話通信規格やOSをサポートしており、ノキア、スウェーデンのエリクソン社、日本電気(株)、富士通(株)、松下通信工業(株)、ソニー(株)など多くのメーカーが採用しているという。

携帯電話向けチップの見通しは明るい

携帯電話向けのプロセッサーでは、米インテル社が『PXA 250』『PXA 210』を2月に発表したが、エンジバス氏は「OMAPは携帯電話向けソリューションとしておよそ50%のシェアを持っている。一方インテルは0%だ。3G携帯電話のアプリケーションが表計算ソフトならともかく、コミュニケーションやマルチメディアが使われるならOMAPが最適だ」と述べ、大きなシェアを背景に余裕を見せた。

DSPの見通しに関しては「携帯電話の世代が進むにつれ、携帯電話に搭載される半導体は飛躍的に増加する。携帯電話全体の原価に占める半導体の割合は、例えば2GのGSM方式端末であれば30%だったものが、2.5GのGPRS対応端末では45%に、3G端末では60%にもなる。これは携帯電話の出荷台数が増えなくとも半導体の出荷が増加することを示すものだ」という。一方、TIの携帯電話マーケットでは中国が最大で、中国の3Gの独自通信規格であるTDS-CDMA向けチップをメーカーと共同開発しているとも述べている。台数の増加と、1台当たりの半導体搭載量の増加によって、TIのDSP/アナログICといった携帯電話向けチップの出荷は、今後しばらくは好調な状態が続きそうだ。

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