独自のスタンスで進化を続けてきたソニーのPalmデバイス「CLIE(クリエ)」に、ハードウェアキーボード搭載の新モデルが登場した。「Wingデザイン」と名付けられた折り畳み式の本体は、利用形態に合わせて姿を変える独創的なギミックを備えている。
携帯電話に発想を得た
ハイブリッドスタイル
PEG-NR70VとPEG-N750Cの大きさの比較。TURN STYLEではヒンジとデジタルカメラのある上部が若干大きくなるが、厚さや横幅に関してはほぼ同等だ。 |
携帯電話のように中央で2つに折り畳める本体のデザインは、鳥が翼を大きく広げる姿から「Wingデザイン」と名付けられた。本体にはQWERTY配列のハードウェアキーボードが搭載されており、広げると内側から液晶とキーボードが現れる仕組みになっている。
本体は全面マグネシウム合金製で、筐体色はサテンシルバーの1色のみ。キーボード使用時の本体は、実質2台分のサイズとなるため、一見大きく感じるが、折り畳んでしまえば72.3(W)×136.6(D)×16.7(H)mmと比較的コンパクトなサイズに収まる。これは「PEG-N750C」と横幅や厚さがほぼ同等で、ヒンジのある上部が18.1mm上部に張り出す程度の差だ。重量は40g重い200gとなったが、実機を手にしてみるとずっしりとした重みによって、逆に金属外装の質感が際立っている。
回転型液晶のギミック。液晶をひねるように外側に向け再び折り畳むと、従来のCLIEのような形状に変わる。液晶画面は自動的に上下反転する。 |
ソニーでは液晶を開きキーボードを使用できる状態を「OPEN STYLE」、液晶を反転させて閉じた状態を「TURN STYLE」と呼び区別している。長文の文字入力を行う際にはOPEN STYLE。予定や保存した画像を見るだけならよりコンパクトなTURN STYLEといった具合に、用途に応じた使い分けができる。画面表示は液晶の向きに合わせて自動的に反転するため、デバイスを持ち替える必要は一切ない。
クロック倍増でさらに向上したレスポンス
PalmSource 2002で試作機が公開された際には32bit ARMベースのCPUが採用されるという噂も流れた本機だが、引き続き16bitのDragonball Super VZが採用されている。ただし、クロック周波数が従来比2倍の66MHzとなり、ATRAC3/MP3のデコードに使用するDSPを画像処理にも使用することで、処理能力は従来のCLIEを大きく上回るものとなった。
音楽用のDSPを画像処理にも利用することによって、画像のサムネイル生成や拡大表示の速度が飛躍的に高まっている。 |
メモリ容量に関しては、PEG-N750Cの倍となる16MBを装備する。ATRAC3/MP3対応の音楽再生機能やジョグダイヤルなどPEG-Nシリーズの主要機能はもれなく装備するほか、PEG-Tシリーズに搭載されていた赤外線リモコンの機能やFM音源も引き続き利用できる。
今回からWebブラウザ「Xiino」は体験版となり、90日以降は1980円でのレジストが必要となった。Outlookと同期できる「IntelliSync Lite」やWord/Excelファイルの閲覧が可能な「Documents To Go」といったビジネス向けのソフトも付属する。PEG-NシリーズとPEG-Tシリーズの長所を兼ね備えた、まさにCLIEシリーズの「フラッグシップ機」という名がふさわしい1台に仕上がっている。
個性的なキーボードの配列には慣れが必要
本体を開くとキーボードとアプリケーション起動ボタンが登場する。配列はPCなどと同じQWERTY配列だが、記号や機能キーがやや特殊な位置となる。 |
キーピッチは、実測で6.5mm程度あり、この種の製品としてはゆとりあるサイズと言える。ストロークは浅めだがしっかりとしたクリック感があり、打ち心地は悪くない。ボタンは両手の親指で押すことになるが、キートップが十分に離れているので、誤って余計なキーを押してしまうこともまずない。
キー配列は上部の3段がアルファベット。4段目が句読点や機能ボタン、最下部がShift、Space、カーソルボタンといった構成だ。アルファベットの並びはPCと同じのため、自然に打てるが、BSが3段目の一番右(Mの隣)にあったり、利用頻度の高い数字や音引きを「Fn」と同時に押す必要があるなど、かなりクセのある配列だ。最初のうちは、これらを目で探しながら慣れていくしかないだろう。
なお、アプリケーション起動ボタンはキーボードの上部に備えているため、ボタンを押すためには本体を広げないとならない。ワンプッシュでPIMやメモの確認ができる従来のPalmデバイスのシンプルさが失われてしまったのは残念な部分だ。
オリジナルソフトのWorld Alarm。付属ソフトに関しては、従来のPEG-NシリーズとPEG-Tシリーズを包含する形となっている。 |