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【IDF Spring 2002 Vol.2】XScaleによるインテルの組み込み向け戦略が明らかに

2002年02月28日 09時16分更新

文● 塩田紳二

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25日(米国時間)から開催中の“Intel Developer Forum Spring 2002”(IDF Spring 2002)2日目。今日は朝8時からキーノートスピーチが行なわれ、本格的にさまざまなセッションが開始された。

2日目のキーノートスピーチのテーマは“Communication”。インテルは、現在広く使われているEthernetを立ち上げたメーカーの1社でもあり、いまではネットワーク用デバイスやネットワークカードの大手メーカーの1つでもある。スピーカーとして登場したのは、昨年のIDFでいきなりスキンヘッドになってしまったショーン・マローニ(Sean Maloney)主席副社長兼インテル・コミュニケーションズ事業本部長。

主席副社長兼インテル・コミュニケーションズ事業本部長のショーン・マローニ氏
主席副社長兼インテル・コミュニケーションズ事業本部長のショーン・マローニ氏

ネットワーク関係では、いまGbit Ethernetの普及が始まろうとしている。ほとんどのクライアントマシンが100MbpsのEthernetを装備しており、ADSLや光ファイバーといったブロードバンドで、数M~数10Mbpsの帯域がインターネット接続に使われるとすると、ローカルのバックボーンを含め、それらを上回る帯域が必要になるからだ。

今回発表されたシングルチップGbit Ethernetコントローラー
今回発表されたシングルチップGbit Ethernetコントローラー

今回インテルは、3つの1チップのGbit Ethernetチップを発表した(発表自体は米国時間の25日付け)。サーバー用には、PCI/PCI-Xに直接接続可能なデュアルチャネルの『82546』、ワークステーションにはシングルチャネルの『82545』、そしてクライアント用にはPCI接続の『82540』である。

また無線LAN関係では、インテルはIEEE 802.11aを推進し、将来的にはIEEE 802.11bと11aのデュアルバンド対応を目指すことが示された。

キーノートでは、有線、無線LANのスムースな切り替えをデモ。Ethernetにつながってストリーミング画像を表示していたマシンのEthernetケーブルを抜くと、今度は無線LAN経由で自動的に接続が行なわれ、動画の再生が続くというもの
キーノートでは、有線、無線LANのスムースな切り替えをデモ。Ethernetにつながってストリーミング画像を表示していたマシンのEthernetケーブルを抜くと、今度は無線LAN経由で自動的に接続が行なわれ、動画の再生が続くというもの

もう1つの話題は、XScaleコアを使った各種の製品展開である。当初、XScaleはネットワークプロセッサー(IXPシリーズ)のコアとして採用され、IDF Spring 2002開催直前にPDAや携帯電話向けの汎用プロセッサー(PXAシリーズ)が発表された。さらに今回は、ネットワークストレージなど、ある程度のインテリジェンスを持つ機器用としてI/OプロセッサーであるIOPシリーズが登場した。これにより、いわゆる組み込み分野向けに3つのXScaleベースのプロセッサーが揃い、本格的なXScaleでの組み込み分野攻略が開始されることになった。

無線LANは、2.4/5GHzのデュアルバンドへ向かうとインテルは予測している、というより、そうするつもりらしい
無線LANは、2.4/5GHzのデュアルバンドへ向かうとインテルは予測している、というより、そうするつもりらしい

かつて、x86系のプロセッサーも組込用途に多く使われていたものの、PCとしての性能を向上させることがメインとなったため、逆に組み込み用として使いにくいものとなってしまった。その中で伸びてきたのがARMやMIPSなどのRISC系プロセッサー。そこでインテルは、StrongARMを旧DECから入手、これを進化させてXScaleとしたわけである。

XScaleを使った組み込み向けプロセッサー。ネットワーク機器、PDA/携帯、そして新しくI/Oプロセッサーが登場
XScaleを使った組み込み向けプロセッサー。ネットワーク機器、PDA/携帯、そして新しくI/Oプロセッサーが登場

ARM系のプロセッサーは、コアと各用途向けの機能を組み合わせたものを用途ごとに作って利用することが多い。ARM自身はコアの設計のみを行ない、実際のデバイスは製造していない。そのために非常に多くのARMコア採用のコントローラーがある。ここにそのまま参入すると、顧客ごとにデバイスを製造するということになってしまい、インテルという会社の体制にはあまり向いていない。そこでインテルは、大量出荷を狙える分野に限定してXScaleコアをベースにプロセッサーを作り、それを売り込むというやり方を考えたのである。それが今回そろったXScale採用の3種のプロセッサーなのである。

低価格なxDSLルーターなどに利用できるIXA425。いま最もユーザーに近いところにあるXScaleかもしれない
低価格なxDSLルーターなどに利用できるIXA425。いま最もユーザーに近いところにあるXScaleかもしれない

たとえば、今回発表したネットワークプロセッサーである『IXP425』などは、xDSLルーターなどの低価格通信機器向け。しかし、日本の現状をみると、ADSLルーターは性能競争と同時に価格競争にも入っており、CPUのコストもかなり重視される分野となっている。米国の製品と比べても日本の製品のほうが安くなってきた感じである(もっとも今は円が安くなっているために米国製品が割高になるということもあるのだが)。ここではARM9系のコントローラーが多く使われているようだが、スループットを上げるため、他のアーキテクチャーを採用するといった方向も出てきた。XScaleは、性能的には十分なのでポイントは価格だろう。一般ユーザーのところに最初に入り込むXScaleは、PDAではなくルーターのコントローラーとしてという可能性が一番高いと思われる。

さて、ここで少し展示会場の様子もレポートしておくことにしよう。IDFではショーケースと呼ぶ展示会場がある。通常のコンファレンスイベントと違うのは、展示のみという参加方法がなく、またこのショーケースも開いている時間が限られるということだ。基本的には、コンファレンスのない昼間と夕方のみショーケースが開催されている。

RAMBUSのRIMM 4200。1つのモジュールで2つのメモリチャンネルとなり、毎秒4.2GBのバンド幅を持つ。会場ではPentium 4+850チップセットとの組合せでデモを行なう
RAMBUSのRIMM 4200。1つのモジュールで2つのメモリチャンネルとなり、毎秒4.2GBのバンド幅を持つ。会場ではPentium 4+850チップセットとの組合せでデモを行なう

全体として、今回はXScale関係の展示が多く、逆にItaniumのサーバー展示が少なくなったような印象を受ける。もっとも、企業数でいえば、Itaniumサーバーを作れる企業は数えるほどしかないが、組み込み関係の企業は多数あるといった数の問題かもしれない。

シリアルATAのデモコーナーにこっそりと置かれていた次期Pentium 4用チップセット“Granite Bay”採用のマザーボード。現在の850の後継とされるチップセットでUSB 2.0に対応する予定シリアルATAのデモコーナーにこっそりと置かれていた次期Pentium 4用チップセット“Granite Bay”採用のマザーボード。現在の850の後継とされるチップセットでUSB 2.0に対応する予定
組み込み系メーカーは、インテルの提供する評価用ボードを使って展示を行なっていた。これは、米PalmSource社によるPalm OS 5.0のデモ組み込み系メーカーは、インテルの提供する評価用ボードを使って展示を行なっていた。これは、米PalmSource社によるPalm OS 5.0のデモ

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