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インテル、高性能PDA/スマートフォン向け次世代“StrongARM”『PXA 250/210』発表

2002年02月12日 10時58分更新

文● 編集部 佐々木千之

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インテル(株)は12日、PDAや携帯電話のアプリケーション処理用プロセッサー『インテル PXA 250 アプリケーション・プロセッサ』『インテル PXA 210 アプリケーション・プロセッサ』を発表した。

『インテル PXA 250 アプリケーション・プロセッサ』
『インテル PXA 250 アプリケーション・プロセッサ』

PXA 250/210は『StrongARM』(※1)を発展させた“XScaleマイクロアーキテクチャー”を採用した、32bitのRISCプロセッサー。インテルはXScaleマイクロアーキテクチャーを採用したプロセッサーとして、ネットワークスイッチやストレージ製品向けの『IOP310 I/Oプロセッサー』を発表しているが、Pocket PC機などのPDAに採用されている『StrongARM SA1110』の直接の後継となるプロセッサーとしてはPXA 250/210が初めての製品。

『インテル PXA 210 アプリケーション・プロセッサ』
『インテル PXA 210 アプリケーション・プロセッサ』

XScaleマイクロアーキテクチャーは、米インテルが2000年8月に“Intel Developer Forum 2000 Fall”で発表したアーキテクチャーで、“ARM v5アーキテクチャー”(※2)をベースに、キャッシュ構造やパイプライン構造などで独自の拡張を加えた。StrongARMと比較すると、より低い電力消費でより高い性能が得られるとしている。

※1 StrongARM(ストロングアーム)は英アーム社が開発したRISCプロセッサーアーキテクチャー“ARM v4アーキテクチャー”を基に、米ディジタル・イクイップメント社(DEC、現米コンパックコンピュータ社)が拡張したもので、'98年5月にDECの半導体事業部をインテルが買収した際にインテルのものとなった。

※2 英アームのARMアーキテクチャーは現在“v6”まで発表されている。StrongARMや英アームの『ARM920T』は“v4”、PXA 250/210や英アームの『ARM1020』は“v5”にそれぞれ準拠している。v6に準拠するプロセッサーは未発表。

PXA 250/210に採用したXScaleコアは、ARMアーキテクチャーにはない部分として、マルチメディア用の演算用のアキュームレーターを追加している。パイプラインは7段(一部8、10段)で、インテルによると高速化のため組込用としては深い段数にしたという。パイプラインを深くしたことに伴なって、動的分岐予測や、“Hit-under-Miss Data-cache”(※3)など、パイプラインによる命令の並列実行効率を上げるための機能をサポートした。

※3 プログラムコード実行時に、ある命令が必要とするデータがまだキャッシュメモリー内に読み込まれていなかった場合、StrongARMでは外部メモリーからデータを読み込むまでの間、そこでパイプラインの実行が止まっていた(これを“ペナルティ”と呼ぶ)。Hit-under-Miss Data-cacheでは、そのような場合でもパイプラインの実行を止めず、次の命令を実行するというもの。ほかの命令を実行している間に、外部メモリーからデータが読み込まれて処理されれば、まったくパイプラインの実行速度に影響を与えないですむというもの。

高性能PDA向けの『PXA 250』と携帯電話のアプリ処理向け『PXA 210』

PXA 250は、インテルが高性能なPDA向けと位置づけている製品で、コアの最高動作周波数が400MHz、300MHz、200MHzの3種類を用意する。PXA 210は今後の携帯電話に要求される高度なアプリケーション処理のための製品で、コアの最高動作周波数は200MHzと133MHzを用意する。動作周波数は必要に応じて動的に変更できるが、PXA 250/210では、ある周波数“ターボ・モード”とそれよりも低い周波数“低消費電力モード”の2種類のモードを瞬時に切り替えられる機能(※4)を備える。0.18μmプロセス技術で製造し、パッケージはPXA 250が256ピンのPBGA(プラスチックBGA。17×17mm)、PXA 210が225ピンのTPBGA(ThinPBGA。13×13mm)となっている。

※4 PXA 250/210のこの機能を使うと、あらかじめ設定した高低2種類の動作周波数を、1クロック以内で切り替えることができる。この動作周波数は400MHzと200MHz、あるいは400MHzと100MHz、300MHzと200MHzというように設定できる(周波数の段階は100MHzとは限定されない)。ただし、周波数が低いモード(低消費電力モード)に変更となっても、コア電圧は高速動作時(ターボ・モード)に必要な電圧で固定されたままとなる。

PXA 250メモリーインターフェースは32bitと16bitで、電圧2.5Vおよび3.3VのSRAM、フラッシュメモリー、SDRAMをサポートする。PXA 210は16bitメモリーのみをサポートするが、PXA 210のコアからは32bitのメモリーに見える仕組みになっている。そのほか、MMC(Multi Media Card)/SDカード、IrDA、Bluetooth、USB(1.1)などのインターフェースを持つ(PXA 250のみPCカード/コンパクトフラッシュのインターフェースも持っている)。また、カラー液晶ディスプレーのコントローラー(最大800×600ドット。16bitカラー)も備えている。動作周波数とメモリーインターフェース以外のPXA 250とPXA 210の違いは、PCカード/コンパクトフラッシュインターフェースの有無と汎用I/Oピンの数で、PXA 250が15ピンに対してPXA 210は2ピン。内部アーキテクチャーには違いはないとしている。

StrongARMとPXA 250/210で大きく異なるのは消費電力で、206MHz動作のSA1110の消費電力が約800mWなのに対して、PXA 250は300MHz動作時で411mW、200MHz動作時では256mWと、大幅に低消費電力化が図られている。なおPXA 250とPXA 210では、同じ動作周波数なら消費電力はほとんど同じだという。

インテルはPXA 250をPocket PC機や、ARMアーキテクチャーに移行する次世代Palm機向けに提供する計画。またPXA 210は、高度なアプリケーションをサポートする次世代の携帯電話向けに提供(※5)するとしている。

※5 現在の携帯電話では、無線部の信号処理とアプリケーション(Javaなどの外部アプリケーションも含む)の処理を1つのプロセッサーが行なっている。インテルでは、今後、データ通信速度が向上し、アプリケーションも複雑になることが予想されるが、そうした状況では、無線部の信号処理と、アプリケーション処理のためのプロセッサーを別にすることを提案している。

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