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LinuxWorld EXPO開催

2002年01月31日 23時40分更新

文● 塩田紳二

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Linux関連最大のイベントである『LinuxWorld Conference & Expo/New York 2002』(以下、LinuxWorld)が始まった。New Yorkはまだ、昨年9月のテロ事件の影響が残る。市内には至る所に警官がいて、会場周辺も多くの警官がパトロール中。テロ事件のトレードセンターは、残骸がすっかり片づき、いまでは見学者用の展望台までできている。もっとも、物見遊山の客向けではなく、真剣に場所を見たいと思う人向けだ。というのも、入場は無料ながら、展望台から6ブロックも先(1km以上はあった)にある博物館のチケット売り場まで、チケットをとりにいかねばならないからである。多くの人が並べるように遠くにあるのではない。チケットは時間指定で、この往復2kmを歩くだけの覚悟がある人だけが展望台に入れるのだ。周辺には、寄せ書きや絵(なかには千羽鶴もあった)などがあり、重苦しい雰囲気。トレードセンター崩壊の跡が残り、ホコリまみれになった無人のビルもある。

LinuxWorldの会場となるJavits Convention Centerは、事件後、救援物資などが集積されたという。ここで開催予定の多くのイベントが中止になったが、年も明け、ようやく平常を取り戻しつつある時期の開催となった。今年のNew Yorkは暖かい。LinuxWorldのNew Yorkでの開催は今年で3回目。1回目、2回目とも開催時期は1月末で、これまでは道路脇に雪が残り、コートを着て、毛糸の帽子をかぶってもかなり寒かったのだが、今年は、夜でもコートなしで歩き回ることができる。

Jacob K. Javits Convention Center
会場となるJacob K. Javits Convention Center。New Yorkのマンハッタン島にある唯一のコンベンションセンターだ。一見平和そうだが、周辺には多数の警察車両があり、警察官がたくさんいる。

規模を拡大しつつ回を重ねるLinuxWorldだが、やはりテロ事件の影響は避けられない。予想していたほど来場者が少ないわけではないが、会場は昨年よりも多少狭く、出展者も減っている。例年なら日本からも多くの参加者があるのだが、今年はあまり見かけない。聞けば、日本の会社は海外渡航を禁止あるいは制限しているところが多いのだとか。不況の影響もあるのだろうが、テロ事件が心配という部分もある。その問題のNew Yorkでもあるため、よけいに行きにくくなっていると思われる。

イベントは、29日(現地時間)のチュートリアルや来場者登録などから始まり、キーノートスピーチや展示は30日から開催される。同時に職探しのイベントが同じJavits Convention Centerで開かれており、景気が後退している米国では格好のニュースになったらしく、テレビの中継車が数台やってきていた。また、初日のキーノートスピーチが、米Compaq Computerとの合併で話題になっている、米Hewlett PackardのCEOであるCarly Fiorina氏であることも影響しているのかもしれない。

テレビの取材陣。
29日にはテレビ中継車もやってきた。職探しのイベントも開催されており、合わせて取材が行なわれたようだ。

初日には、HPのFiorina氏、午後からは、米IBMの上級副社長であるWilliam M. Zeitler氏がスピーチを行なった。HPはCompaqとの合併、IBMは前日にCEOの交代が発表されるなど、話題的には十分。特にHPのFiorina氏は、今年1月8日から開催されたCES(Consumer Electronics Show)でもキーノートスピーチを行なうなど、今年はひっぱりだこという感じだ。

HPのCEO、Carly Fiorina氏。
HPのCEOであるCarly Fiorina氏。笑顔がステキなおばさまという感じなのだが、ときおり厳しい表情も。

ただ、例年LinuxWorldで行なわれるメーカー系のキーノートスピーチは、コマーシャル的なところが多く聞いてためになるというものでもない。昔のようにLinus Torvalds氏がスピーチするとか、多少は開発者向けのところを出してほしいところだ。さて、そのFiorina氏のキーノートだが、Compaqとの合併(“Merge”といっているが、主語はHPで、多分にHPによる買収というイメージが強いようである)について触れ、Compaqとの合併はLinuxにとってよいことだという。両者ともItanumをメインにしたサーバを開発しており、しかもそれぞれがLinuxと競合するUNIXを持っている。またWindowsも採用している企業であり、これら3つをまとめて扱える両社が統合することで、より強力にマルチプラットフォーム戦略を押し進めていけるという。

HP & Compaq。
コンパックとの合併についての話題にも触れる。CESのときにはほとんど触れることがなく、公の場で話ができる程度には進展があった模様。
HP 200A Audio Oscillator。
HPの最初のヒット商品である『HP 200A Audio Oscillator』。これがディズニーの映画「ファンタジア」で使われた。HPは映像と音を同期させる技術で制作に協力。HPが成長するきっかけになったという。
Shrek & HP。
DreamWorksの映画にもHPのワークステーションが使われているという。

CESのときには合併についてはほとんど触れなかったが、今回はLinuxを例に両社が合併するメリットを強調した。ここはNew Yorkであり、いわば米国の株取引の中心でもある。やはりここで株主向けにメッセージを出しておくことが必要ということなのであろう。なお、製品関連としては、HPが開発していた組み込み向けのJavaエンジン『Chai-LX』(Chaiは“お茶”)を使ったPDA(もちろんカーネルはLinux)の試作品を発表している。

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