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コンパック、サーバー内蔵のRAIDを簡単にSANに移行できるストレージ製品を発表

2002年01月22日 21時47分更新

文● 編集部 佐々木千之

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コンパックコンピュータ(株)は22日、都内で記者発表会を開催し、同社のIAサーバー『Compaq ProLiant(プロライアント)』で使用しているHDDを抜いて本体のHDDベイに差し込むだけでSAN(Storage Area Network)環境に移行できるストレージ製品『StorageWorks by Compaq Modular SAN Array 1000』を発表した。2月上旬に出荷開始で、価格は180万円。

『StorageWorks by Compaq Modular SAN Array 1000』これはMSA ファブリックスイッチ6オプションキットを装着して冗長構成にした状態
『StorageWorks by Compaq Modular SAN Array 1000』これはMSA ファブリックスイッチ6オプションキットを装着して冗長構成にした状態
MSA1000の前面パネルの機能
MSA1000の前面パネルの機能
MSA1000の背面の機能説明
MSA1000の背面パネルの機能説明

StorageWorks by Compaq Modular SAN Array 1000(以下MSA1000)は、高さ4U(約178mm)のラックマウントタイプ筐体に、RAIDコントローラー(RAID ADG(※1)対応)、毎秒2Gbitの転送速度を持つファイバーチャネルスイッチ(6ポート)を内蔵する。MSA1000の1台あたり最大14台のHDD(Ultra3 SCSI)を収納可能(72GBのHDDを使用した場合約1TB)で、2台のHDDエンクロージャーを追加して、最大42台(約3TB)まで拡張できる。当初サポートするOSはWindows 2000とWindows NT 4.0のWindows系のみだが、Compaq Tru64 UNIX、OpenVMS、さらにSolarisなど他社の主要なUNIXと接続可能にするとしている。なお、Windows 2000/NTサーバーであれば、ProLiant以外の他社製IAサーバーとも接続できる。

※1 RAID ADG(Advanced Data Guarding):コンパックが開発した、大規模ディスクアレー向きのデータ保護技術で、基本的にはRAID 5を拡張したもの。RAID 5のシステムでは、それぞれの物理HDDにパリティーデータを分散して記録することで、ディスクアレー中の1台のHDDに障害が起きた場合にデータを復旧できるが、2台以上のHDDに障害が起きた場合はデータが失われてしまうため、HDDを多数使ったディスクアレーではリスクが大きい。RAID ADGでは2セットのパリティーデータを物理HDDそれぞれに記録するため、ディスクアレー中の2台のHDDに同時に障害が発生しても、データを復旧できる。

RAID ADGの概要
RAID ADGの概要
コンパックコンピュータ、取締役副社長兼エンタープライズビジネス統括本部長河合聰氏
コンパックコンピュータ、取締役副社長兼エンタープライズビジネス統括本部長河合聰氏

標準構成のMSA1000では、電源のみが冗長構成となっているが、RAIDコントローラー『MSA1000 コントローラオプションキット』(82万円)、ファイバーチャネルスイッチ『MSA ファブリックスイッチ6オプションキット』(96万円)をオプションとして用意しており、これらを追加することで、RAIDコントローラーとファイバーチャネルを二重化可能。

エンタープライズビジネス統括本部ストレージ製品本部ストレージ製品企画部部長の本間孝秀氏
エンタープライズビジネス統括本部ストレージ製品本部ストレージ製品企画部部長の本間孝秀氏

コンパックコンピュータのストレージ製品本部ストレージ製品企画部の本間孝秀部長は、MSA1000の“際だった特徴”として3つを紹介した。

1つめは“DtS(DAS(※2) to SAN)アーキテクチャ”。MSA1000では、ProLiantで使われているRAID構成のHDDをProLiantから取り出し、MSA1000のHDDベイに挿入して、ストレージボリュームとサーバー(HDDを取り出したProLiant)の所有関係を設定することで、DAS環境からSAN環境への移行できるというもの。コンパックがSAN製品として初めて可能にした技術という。MSA1000が、挿入されたHDDのパリティーデータをスキャンしてRAIDボリュームを自動的に再構成するため、SAN環境への移行に関するストレージ管理者の手間とリスクがわずかですむとしている。

※2 DAS(Direct Attached Storage):ネットワーク経由で接続するストレージに対して、サーバーに直接接続されたストレージを指す言葉。

2つめは毎秒2Gbitのファイバーチャネルスイッチを内蔵したこと。これまでSAN製品はファイバーチャネルスイッチが外付けになっていることが一般的だったが、これがSANシステムが複雑で高価になる一因になっていたという。MSA1000ではファイバーチャネルスイッチ内蔵することで、「非常にリーズナブルな価格付けができた」(本間部長)としている。なお、価格については、同クラスのストレージ製品とファイバーチャネルスイッチの組み合わせと比べ、「およそ半分」(本間部長)程度としている。

3つめはRAID ADG機能。SAN関連のストレージ製品ではディスクアレーを構成するHDDの数が多いため、同時に1つ以上のHDDに障害が発生する可能性を考えると、RAID 5ではなくRAID ADGが最適であるという。

また、本間氏はDAS環境と比較した場合のSAN環境の利点について、「DASではサーバーごとに用意しなくてはならず、ストレージが分散するために利用効率が悪い。SANなら利用効率が上がるとともに、サーバーとストレージを独立して管理・運用でき、柔軟なシステム構築が可能になる」という。データのバックアップについても、SAN環境であれば、利用しているネットワークパフォーマンスを低下させない高速バックアップや、集中管理が可能だとしている。

SAN環境に移行することによるバックアップ作業についてのメリット
SAN環境に移行することによるバックアップ作業についてのメリット

IT産業を取り巻く経済状態は厳しく、IT管理者への予算は2001年には前年比5%しか増加しなかったが、企業のデータ量はここ1、2年は100%の伸びとなっており、効率的なストレージ管理に対する要求があるという。本間氏は、米メリルリンチが行なった、DASからSANへの移行によって、個別の管理を統合化し、容量利用効率が向上することで、ストレージ管理者の管理効率が5倍になるという調査結果を挙げ、SANの導入メリットはIT企業にとって非常に大きいと述べた。

MSA1000が狙う市場。コンパックのストレージ製品中、最大のボリュームゾーンになるという
MSA1000が狙う市場。コンパックのストレージ製品中、最大のボリュームゾーンになるという

MSA1000は、ProLiantのDAS環境SAN環境への移行をねらい撃ちした製品といえるが、ProLiantシリーズは、世界で120万台以上を販売しているベストセラーIAサーバーであり、かなりの需要が見込めると考えられる。コンパックはMSA1000の国内販売目標として、初年度500~1000台という数字を挙げたが、同社が販売目標を具体的に示すことは珍しく、このこと自体、MSA1000へ相当の自信を持っていることの現れだろう。発表会では、2台のサーバーで動いていたDASのRAIDシステムを、MSA1000を使ったSAN環境へ移行するというDtSアーキテクチャーのデモンストレーションが行なわれたが、システムの設定も含めて10分ほどで終了し、確かに移行に際する手間は少なく、短時間に行なえることを見せつけた。価格もこれまでのSANの半額程度ということで、MSA1000の投入によって、国内でのSAN環境への移行を強く促す製品であるといえる。

MSA1000の管理画面。ウェブベースで、リモート管理が可能。もともと2つのディスクアレイ構成のシステムに、2台のProLiantのRAIDシステムを追加し、4つのアレイ構成になったところ
MSA1000の管理画面。ウェブベースで、リモート管理が可能。もともと2つのディスクアレイ構成のシステムに、2台のProLiantのRAIDシステムを追加し、4つのアレイ構成になったところ

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