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松下、2002年度経営方針――グループ5社を完全子会社に

2002年01月10日 21時57分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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松下電器産業(株)は10日、2002年度の経営方針に関する説明会を行ない、グループ全体の事業再編のため、松下通信工業(株)、九州松下電器(株)、松下精工(株)、松下寿電子工業(株)、松下電送システム(株)の5社を完全子会社(持ち株100%化)とすることを明らかにした。

中村社長
松下の中村社長による会見は、大阪/枚方市の松下電器人材開発カンパニー内にある会場と東京会場を通信衛星で双方向中継し実施された

松下グループ内の“AVCネットワーク”“アプライアンス”“インダストリアル・イクイップメント”“デバイス”の4セグメントにおいて、事業ドメインを設定し、グループ内の役割分担を明確化を行なう。これまでグループ内で重複/競合していた事業を一本化することで、開発リソースの最適配分やスピーディーな商品開発、経営ロスの排除を実現するのが狙いという。

設定される事業ドメインは、AVCネットワークが“AVC”“固定通信”“移動通信”“カーエレクトロニクス”“システム”、アプライアンスが“家庭電化・住宅整備”“照明”“健康システム・環境システム”、インダストリアル・イクイップメントが“健康システム・環境システム”“FA”、デバイスが“半導体”“ディスプレイ・デバイス”“電池”“電子部品”“モータ”。

松下グループでは、例えばカーナビゲーションなど1製品カテゴリーにおいてグループ内の別々の会社がそれぞれ製品を製造/販売するといった事業形態が続いていたが、今回の事業再編により、事業の重複/競合を排除し、これまでグループ内で分散していた経営リソースを事業ドメイン単位に結集するとしている。

また同社は、事業ドメインごとの自主責任経営を進めるため、10月1日に株式交換により松下通信工業、九州松下電器、松下精工、松下寿電子工業、松下電送システムの5社の持ち株100%化を実施する。本日付で覚書に調印され、4月下旬に株式交換契約に調印、6月末に定時株主総会で決議され、10月1日に株式交換が実施される予定。交換比率は、松下電器産業1に対し、松下通信工業が2.884、九州松下電器が0.576、松下精工が0.332、松下寿電子工業が0.833、松下電送システムが0.538。

説明を行なった同社取締役社長の中村邦夫氏は、「持ち株100%化を実施した後は、完全子会社として残す。取り込むことはない。事業再編によりどの会社が何の事業を担当するといったことはこれから検討し、後日改めて発表する」としている。また、今回の事業再編によるリストラについては「事業再編後の姿をどうするかによって決まることなので、現在は何も決まっていない。事業ドメイン化はリストラのためにするのではなく、特に開発部隊の重複を排除し、集中させることで商品化スピードが加速することを期待してのこと」としている。

さらに、これまで事業の一本化を行なわなかった理由として「今までは事業が重複していても、それがかえって競争力となっていたが、デジタル社会となって開発投資がかさんできた。重複事業をひとつにすることで開発投資を有効かつスピーディーに商品化できる。よって持ち株を100%化し、事業ドメインを明確にして進めていくことにした」と述べた。

なお、日本ビクター(株)については「ビクターとはブランドが違うので、別会社としてやっていく。独立でやっていけるリソースを持っているので別会社として進めても問題ない」としている。

さらに同社は、自己株式の取得も実施する。取得期間は11日から4月下旬まで。取得する株式は普通株式で、総額1000億円(6000万株)を取得するという。取得した自己株式はいわゆる金庫株として保有し、資本効率の向上を図るほか、10月1日の株式交換時に交付する株式の一部としても活用するという。

今回の事業再編は、明日からプロジェクトが始動し、アプライアンス、インダストリアル・イクイップメント、デバイスの3セグメントについては2003年に再編が完了する見込み。ただし、AVCネットワークについては、市場の動きが速いため、早急にプロジェクトを進め10月1日には再編を完了させたいとしている。

同社は、2001年度の決算が赤字と見込まれることから、2002年度は2000年度の営業利益まで引き上げることを目指し、V字回復に向け“大幅な販売増”と“合理化・コストダウン”に強力に取り組むという。製品の販売増に向け、市場のボリュームゾーンで占有率No.1を達成し経営に大きく貢献できる製品を“V商品(Victory21)”とし、これらを中心に価格競争力を含めた強い製品を投入するという。

V商品の候補は、PDPやカラーTV、DVDレコーダー、携帯電話、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコンなど。特に携帯電話のシェア奪回について中村社長は、「日本における携帯電話の占有率が2001年度に激減したのは、503i機種で失敗したから。2002年度は総力をあげて次期製品の開発に取り組む。製品の魅力をいかに他社と差別化するかがポイントだ」としている。

中村社長は、「2001年度は大変厳しい経営環境、グループとして赤字決算にならざるをえない。責任を感じている。しかし2001年度は構造改革断行の年であり、“破壊と創造”の破壊が終わって創造に移ろうと取り組んできた。構造改革を積極果敢に行ない、一応改革の手を打ち終えたと考えている。2002年度目標は売上高が前年比105%以上、営業利益は2000年度実績レベルに近づけたい。2003年度については、先だって掲げた売上高9兆円は今後見直す必要があるが、営業利益率は売上比5%以上を目指す」と語った。

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