このページの本文へ

【2002 CESレポートVol.2】米マイクロソフトのゲイツ会長、Windowsの家庭向け機能拡張“Freestyle”と“Mira”を初披露

2002年01月08日 23時17分更新

文● 編集部 佐々木千之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

米ネバダ州ラスベガスで7日夕(現地時間)、“2002 International CES”の初の公式イベントとして、米マイクロソフト社のビル・ゲイツ(Bill Gates)会長兼チーフソフトウェアアーキテクトが基調講演を行なった。講演の中でWindowsの家庭向けの機能拡張である“Freestyle(フリースタイル)”と“Mira(ミラ)”を初めて披露した。また『Windows CE』の新バージョンとなる『Windows CE.NET』(Talisker:コードネーム)も発表した。

米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクト
米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクト

“2001 International CES”における同氏の基調講演では、後半に披露した『Xbox』が大きく目立ってしまったものの、前半部分は“家庭におけるパソコンの位置づけは、これまでも、そしてこれからも中心であり続ける”というメッセージを伝えるものであった。

これに対して、今回のCESにおけるゲイツ氏の基調講演では、パソコンが家庭のネットワークやサービスの中心にあるのは当然ということか、“パソコンが中心になるとこんなことができる”ということでなく、(すでにネットワーク/サービスの中心にある)パソコンをもっと活用するための技術として、『Windows XP』『Windows CE.NET』『.NET』“MSN”などを基盤としてWindowsの使い方を家庭向けに拡張する、FreestyleとMiraを披露した。ゲイツ氏は、これらの技術によってデジタル技術をもっと自由に使って豊かな生活を享受できる時代を“Digital Decade(デジタルの10年)”と名付け、さまざまなデモを交えてDigital Decadeの生活“eHome”を見せた。

Windows XPの2ヵ月の出荷本数はWindows Meの2倍、Windows 98の3倍だという
Windows XPの2ヵ月の出荷本数はWindows Meの2倍、Windows 98の3倍だという

Digital Decadeの基盤となるOSの1つであるWindows XPは2001年10月の発売以来、2ヵ月で1700万本を出荷、Digital Decadeの一部を担う『Xbox』も2001年11月の発売以来、150万台を出荷し、これまでのゲーム機の記録を上回る勢いだという。また、基調講演で正式発表となったWindows CE.NETは、携帯電話やPDA、Pocket PC、TV、アプライアンスなどの“スマートデバイス”に向けた、“堅牢なリアルタイムOS”であると紹介した。ソニー(株)、富士通(株)、カシオ計算機(株)、(株)日立製作所、韓国のサムスン電子社、米モトローラ社、米シンボルテクノロジーズ社など14社が採用の見込みだとしている。

ソフトウェアによってデバイスやコンテンツ、サービスが統合されるという
ソフトウェアによってデバイスやコンテンツ、サービスが統合されるという
Windows CE.NETの採用を予定している家電メーカー
Windows CE.NETの採用を予定している家電メーカー

Windows CE.NETの発表に続いて、Windows CEを搭載した数々のデバイスを使ったデモが行なわれた。このデモでは、無線LANによってホームネットワークと接続しているPocket PCでテレビ番組表を見て、好きな番組を予約すると、ネットワークを介してHDDビデオレコーダーにすぐ予約が行なわれたり、パソコンやPDA、スマートフォンなどでアドレス帳を共有したりして、連携や上方の共有による便利さを強調していた。

Windows CE.NETを搭載したスマートフォン。横にしたディスプレーでWindows Media Videoを再生している
Windows CE.NETを搭載したスマートフォン。横にしたディスプレーでWindows Media Videoを再生している
スマートフォンのウェブブラウザーでウェブサイトを閲覧しているところ
スマートフォンのウェブブラウザーでウェブサイトを閲覧しているところ
ホームPC、Xbox、デジタルセットトップボックス、ネットワークサービスなどがソフトによって一体となってDigital Decadeをもたらす
ホームPC、Xbox、デジタルセットトップボックス、ネットワークサービスなどがソフトによって一体となってDigital Decadeをもたらす

そして、FreestyleとMiraの説明に移った。それによるとFreestyleは、Windows XPの機能を拡張するソフトウェアで、キーボードを使わなくてもさまざまな機能が利用できるようなユーザーインターフェースや、リモートコントロール機能を提供する。“Digital Experience”を共有するための、家庭向けの技術だという。一方、Miraは(Freestyle)によって拡張されたWindows XPを搭載するパソコンを、家中のどこででも自由に持ち運んで使うための、無線接続された一種のディスプレーデバイス。ディスプレーパネルはタッチパネルになっており、もちろんMiraを使ってパソコンのコントロールも可能になっている。

“Freestyle”と“Mira”の概要
“Freestyle”と“Mira”の概要
FreestyleとMiraは、同社のeHome部門の研究成果だという。右の人物が持っているのがMira
FreestyleとMiraは、同社のeHome部門の研究成果だという。右の人物が持っているのがMira

デモでは、ビデオ画像を手元のワイヤレスディスプレー(Mira)で見たり、インターネット経由のビデオチャット(TV電話?)を行なったりしたほか、“FreestyleとMiraのある生活”とでもタイトルを付けたくなるような、両親と子供数人の家庭でFreestyleとMiraがどのように便利に使われるかを紹介するビデオを流した。

Miraでウェブブラウザーを開いたところ
Miraでウェブブラウザーを開いたところ
Freestyleはシンプルなユーザーインターフェースを持つ
Freestyleはシンプルなユーザーインターフェースを持つ
Miraを使って、ビデオチャットをするというデモを披露した
Miraを使って、ビデオチャットをするというデモを披露した

Freestyleで拡張したWindows XPを搭載するハードウェアは、韓国のサムスン電子、日本電気(株)、米ヒューレット・パッカード社、Miraについては米インテル社、米ナショナル セミコンダクター社、台湾のビューソニック社、米Wyse Technology社をパートナーとして開発中であるとしている。FreestyleとMiraの正式リリース時期については基調講演では触れられなかった。

Freestyle/Miraのハードウェアパートナー
Freestyle/Miraのハードウェアパートナー
FreestyleとMiraの機能を紹介するビデオに登場したMira
FreestyleとMiraの機能を紹介するビデオに登場したMira

基調講演ではこのほかにも、Digital Decadeをもたらすものとして、Windows Media Audioがパイオニア(株)、(株)ケンウッド、(株)東芝、アイワ(株)、松下電器産業(株)、米Apex Digital社、中国のShinco Electric Group社のDVDプレーヤーでサポートされることが発表された。

Windows Media AudioをDVDに記録すると、160時間以上、3000曲が1枚に収まるという
Windows Media AudioをDVDに記録すると、160時間以上、3000曲が1枚に収まるという

今回の基調講演では、技術的には確かに異なるものの、一見Miraとそっくりの外観を持ち、2002年後半登場予定の“次世代のラップトップ”『タブレットPC』との比較や違いについての説明がなされなかった。タブレットPCではWindows XPの上位互換バージョンOSを搭載しているとアナウンスされているので、Miraに比べると強力な仕様になっており、価格も高価になると考えられる。Miraは家庭内でのみ利用する端末であり、タブレットPCは単独で動作し、ビジネスに利用するための高性能端末というカテゴリー分けになるのではないだろうか。

基調講演の最後には、Xboxのゲームが紹介された。ゲイツ氏はクリスマス休暇にXboxのゲームをやり込んで過ごしたのだとか
基調講演の最後には、Xboxのゲームが紹介された。ゲイツ氏はクリスマス休暇にXboxのゲームをやり込んで過ごしたのだとか

マイクロソフトは今回披露したFreestyleとMira、そしてそれを動かすWindows XPとWindows CE.NETで、パソコン以外のデバイスにも自社のOS/技術の搭載を働きかけていくことになる。マイクロソフト以外にも、こうしたホームネットワークサービス構想を持つ企業はいくつもあり、この2002 CESでも展示が行なわれると予想される。それら企業はマイクロソフトのこの動きにどのように対応していくのか興味が持たれる。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン