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博報堂ほか3社、地上デジタル放送の公開実験“東京パイロット実験フェーズ3-ステージ2 FINAL”を実施

2001年12月25日 18時59分更新

文● 編集部 田口敏之

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(株)博報堂、(株)東京放送、(株)エヌ・ティ・ティ・データ、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモの4社は20日、地上デジタル放送のパイロット実験“東京パイロット実験”への取り組みの一環として、地上デジタル放送の公開実験“東京パイロット実験フェーズ3―ステージ2 FINAL”を、東京都港区田町の笹川記念館で実施した。公開実験は、20日と21日の2日間に渡って行なわれた。協賛として、松下電器産業(株)、日本電気(株)、三菱電機(株)の3社が参加している。

地上デジタル放送を受信できる携帯電話。アンテナ部が端末に収まらないため、肩からバッテリーと一緒に下げている。アンテナとバッテリーの重さを訊ねたところ「5キロ」という答えが返ってきた地上デジタル放送を受信できる携帯電話。アンテナ部が端末に収まらないため、肩からバッテリーと一緒に下げている。アンテナとバッテリーの重さを訊ねたところ「5キロ」という答えが返ってきた

地上デジタル放送は、現行の地上アナログ放送に置き換わるメディアとして、BS・CSデジタル放送と同様、高品質・高付加価値の放送サービスを展開できると期待されている。会場では、次世代の放送・広告サービスを検証するための実験のデモンストレーションを公開した。実験は““次世代HDTVエンコーダー”による固定TV向け放送の画像品質検証”、“携帯端末向けCMの広告効果についての検証”、“新視聴サービスとターゲティング広告提供手法の提供”、“携帯電話受信機での放送・通信融合サービス”の4種類。実験には、各社の要素技術をベースに“携帯端末向けの広告表現手法”、“MPEG-7による放送サービス”、“放送と連動した携帯電話向け映像配信サービス”、“高圧縮技術”などを取り込んでいる。

HDTV受信携帯電話でリアルタイムに受信する映像は、テレビカメラ直接撮影して、会場中央の大スクリーンに投影された
HDTV受信携帯電話でリアルタイムに受信する映像は、テレビカメラ直接撮影して、会場中央の大スクリーンに投影された

最初のデモンストレーション““次世代HDTVエンコーダー”による固定TV向け放送の画像品質検証”では、東京タワーからリアルタイムに伝送されてくる地上デジタル放送波を受信してモニターディスプレーに上映し、画質を検証した。固定TVとは、一般家庭向けのTVのこと。伝送されてきた放送波は“映像信号事前解析方式”の採用で映像と音声の高圧縮化が可能になったという“次世代HDTVエンコーダー”によって圧縮したもの。高圧縮・低ビットレートによる放送にも関わらず、従来のHDTVと変わらない画質を提供するものだという。

携帯電話受信機向けのCMと、TV向け放送用CMの表現上の差異を検証するプレテストの結果。赤が携帯電話受信機向けのCM。この場合は、通常のTV向けCMよりも好感度を持たれている
携帯電話受信機向けのCMと、TV向け放送用CMの表現上の差異を検証するプレテストの結果。赤が携帯電話受信機向けのCM。この場合は、通常のTV向けCMよりも好感度を持たれている

2番目のデモンストレーション“携帯端末向けCMの広告効果についての検証”では、携帯電話受信機(TV放送などの映像を受信して閲覧できる携帯電話機)向けのCMと、通常の家庭用TV向け放送用CMの表現上の差異を検証し、携帯電話受信機向けの新しい広告表方法を検討した。主催者側は、実験に先立って、携帯電話受信機で通常のTVと同じCMを視聴した場合の、視聴者の反応を聞くというプレテストを行なっている。テストの結果、視聴者は通常のTVで視聴した場合と、ほとんど変わらない反応や評価を返した。これによりTV放送を閲覧できる携帯電話受信機は、CM放送の媒体に十分成り得る、という結論に至ったという。

また、携帯電話受信機でCM放送を行なう場合、広告効果を向上させる手法として、4つの表現方法があるとして、その実例を挙げた。まず、TVCMよりも被写体となる商品を大きく捉える“クローズアップ型”、文字によるメッセージを直接画面に流す“メッセージ型”、デザインやキャラクターなどで、視聴者の感覚に訴える“記号型”、そして携帯電話のパーソナルな特性を生かして視聴者に直接呼びかける“呼びかけ型”の4つ。また、これらのCMの実例を放送した後に、4つの要素を組み合わせたという“複合型”のCMの上映を行なった。

寸劇仕立てのデモンストレーション。父親が帰ってきて、“タイムシフト視聴”で最初からTV番組をまた見ていると、途中に挿入されるCMが異なっている。父親の嗜好情報によって、蓄積されていたCMに差し替えられている
寸劇仕立てのデモンストレーション。父親が帰ってきて、“タイムシフト視聴”で最初からTV番組をまた見ていると、途中に挿入されるCMが異なっている。父親の嗜好情報によって、蓄積されていたCMに差し替えられている
ターゲッティング広告の仕組みと概要。デジタル放送におけるCMや番組などの映像データには、MPEG-7によって、内容に関するメタデータが付与されている。映像データの内容と受信機に設定した個人データを照合して、受信機のHDDにCMなどを蓄積する
ターゲッティング広告の仕組みと概要。CMや番組などの映像データには、MPEG-7によって、内容に関するメタデータが付与されている。映像データの内容と受信機に設定した個人データを照合して、受信機のHDDにCMなどを蓄積する

3番目のデモンストレーション“新視聴サービスとターゲティング広告提供手法の提供”では、“地上家の生活”という寸劇仕立てで、HDTVの視聴サービスとターゲッティング広告提供の手法を発表した。内容は、蓄積型デジタル放送受信機でTV番組を録画しながら、番組を最初から視聴できる“タイムシフト視聴”。また受信機に登録した家族それぞれの個人データに合わせて、MPEG-7でメタ情報を組み込んだCMが蓄積され、タイムシフト視聴時に、視聴者の好みによってCMが差し替わる“ターゲッティング広告”。そして、これと同様の技術を用いて、番組内の視聴者の好みの部分だけを自動的に保存しておき、後で視聴できる“マイメニュー視聴(オンデマンド視聴)”といった、地上デジタル放送と蓄積型デジタル放送受信機で行なえる、新しいTVの視聴の形を提示した。

競艇のライブ中継を携帯電話受信機で視聴しながら、オッズなどをデータ通信で閲覧できるようになっている
競艇のライブ中継を携帯電話受信機で視聴しながら、オッズなどをデータ通信で閲覧できるようになっている

最後のデモンストレーション“携帯電話受信機での放送・通信融合サービス”では、MPEG-4でリアルタイムエンコーディングされたライブ中継を、HDTVを受信・閲覧できる携帯電話受信機で視聴して、画質を評価した。題材には、実験当日、大阪府の住之江競艇場で開催された“賞金王決定戦競争”を採用した。実際に放送したライブ中継では、携帯電話受信機に約1秒前後の映像の遅延があったものの、ブロックノイズなどは目立たず、十分視聴に耐える画質といえるものだった。また携帯電話受信機では、放送を受信するのと同時に、オッズや選手紹介などといったレースに関連した情報が、データ通信によって取得でき、これによって投票も行なえるという説明を付け加えた。

地上デジタル放送を受信する携帯電話端末のモデル
地上デジタル放送を受信する携帯電話端末のモデル

主催者側は、地上デジタル放送サービスについて「ここまでできる段階にきた。後は、スムーズに移行していきたい」と述べた。

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