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シャープ、広視野角・高画質の18.1型SXGA液晶ディスプレー発表

2001年12月14日 21時30分更新

文● 編集部 佐々木千之

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シャープ(株)は14日、都内で記者発表会を開催し、広視野角・高速応答の“ASV&低反射ブラックTFT液晶”パネルを搭載し、10bitの多階調処理によるなめらかな階調表現が可能な18.1インチの1280×1024ドットカラー液晶ディスプレー『LL-T1820-H』『LL-T1820-B』を発表した。本体カラーが“フロスティーグレー”のLL-T1810-Hが27日、“ブラック”のLL-T1810-Bが2002年1月27日に発売予定。価格はオープン。編集部による予想店頭価格は約22万円。

『LL-T1810-H』(左)と『LL-T1810-B』(右)。違いはボディーカラーのみ
『LL-T1810-H』(左)と『LL-T1810-B』(右)。違いはボディーカラーのみ
情報システム事業本部液晶ディスプレイ事業部の中村眞事業部長
情報システム事業本部液晶ディスプレイ事業部の中村眞事業部長

発表会で説明した、情報システム事業本部液晶ディスプレイ事業部の中村眞事業部長によると、LL-T1820-H/Bの一番の特徴は10bit多階調処理機能を搭載したことで、これに同社の高性能液晶ディスプレーパネルであるASV(アドバンスト・スーパーV)&低反射ブラックTFT液晶を組み合わせて、医療やデザインなどの業務用途に対応できる高品位の画像表現が可能としている。

LL-T1810-H/Bの特徴
LL-T1810-H/Bの特徴
LL-T1810-H/Bが採用した多階調処理技術の概要
LL-T1810-H/Bが採用した多階調処理技術の概要

LL-T1820-H/Bに搭載した10bit多階調処理は以下のような仕組みとなっている。まずパソコンからの8bitのディスプレー出力信号を、ディスプレー内部で10bit化してγ(ガンマ)補正する。次に補正後の10bitの信号を、米国シャープ研究所(Sharp Laboratories of America)で開発したBit Depth Expansion(BDE)技術によって8bit信号に変換し、ASV液晶ディスプレーパネル(入力8bit)に送って表示する。BDE技術は、人間の視覚的特性に着目して、8bit駆動の液晶で10bit相当の表示を可能にする技術。最終的にユーザーが液晶ディスプレーを見た場合に、10bit相当の画像品位が得られるという。ディザリング処理のように解像度を犠牲にしたり、誤差拡散処理のように画像がぼけたりするというデメリットがないとしている。

γ特性・γ補正の説明図
γ特性・γ補正の説明図
γ補正機能による表示の違い
γ補正機能による表示の違い
γ補正設定による、画像暗部の表示デモ。これは標準設定による表示
γ補正設定による、画像暗部の表示デモ。これは標準設定による表示
γ補正値を変えて、暗部の階調を見やすくした。撮影者がヘルメットに映り込んでいたことが分かる
γ補正値を変えて、暗部の階調を見やすくした。撮影者がヘルメットに映り込んでいたことが分かる

中村氏によると、こうした10bitの多階調処理を液晶ディスプレーに搭載したのは他社も含めて初めて。従来は、レントゲン画像のような微妙な階調が要求される画像表示において、本来はない画像(色)が見えるといった問題があったが、LL-T1810-H/Bではこうした問題は発生しないという。また、ディスプレーの設定項目の1つとして、γ補正値を調整可能にしており、これについても液晶ディスプレーとして初の機能だとしている。

10bitと8bitのγ補正処理の比較(上)と、BDEとほかの階調処理との比較(下)
10bitと8bitのγ補正処理の比較(上)と、BDEとほかの階調処理との比較(下)
LL-T1810-H/Bのγ補正設定
LL-T1810-H/Bのγ補正設定
10bitの多階調処理の比較デモ。従来のディスプレーでは本来なめらかに変化する部分に等高線のような“疑似輪郭”が出てしまっている
10bitの多階調処理の比較デモ。従来のディスプレーでは本来なめらかに変化する部分に等高線のような“疑似輪郭”が出てしまっている
LL-T1810-H/Bの表示では、疑似輪郭がなくなめらかな表示となっている
LL-T1810-H/Bの表示では、疑似輪郭がなくなめらかな表示となっている

LL-T1810-H/Bに搭載したASV&低反射ブラック液晶ディスプレーパネルは、同社の液晶ディスプレーテレビ“AQUOS(アクオス)”にも採用しているが、より高精細で静止画像を多く表示するコンピューターディスプレー向けに材料を含めて調整したという。中村氏は、ASV&低反射ブラック液晶ディスプレーパネルの特徴として、“輝点問題”への対応と広視野角への対応技術について紹介した。

LL-T1810-H/Bと従来の液晶ディスプレー、およびCRTディスプレーとの比較チャート
LL-T1810-H/Bと従来の液晶ディスプレー、およびCRTディスプレーとの比較チャート

輝点問題とは、TFT液晶ディスプレーパネルにおいて、製造時の問題や経年劣化によって液晶のドットを駆動するトランジスターが動かなくなり、常に100%の点灯状態(赤、青、緑の点)になること。これは、一般的なTFT液晶ディスプレーパネルでは、トランジスターが動作しないときは明るく(バックライトを通し)、動作するときに暗くする“ノーマリーホワイト”という仕組みになっているため。ASV&低反射ブラック液晶ディスプレーパネルでは、その逆にトランジスターが動作しないときに暗くする“ノーマリーブラック”仕様になっている。これによって、トランジスターが動作しなくなっても、輝点ではなく黒い点になるために視覚上目立ちにくくした。

ASV液晶ディスプレーパネルと、一般的なTN(Twist Nematic)液晶ディスプレーパネルとの比較
ASV液晶ディスプレーパネルと、一般的なTN(Twist Nematic)液晶ディスプレーパネルとの比較

広視野角への対応では、一般的なTFT液晶ディスプレーパネルが、液晶分子の方向を1方向に揃えるのに対して、ASV&低反射ブラック液晶ディスプレーパネルでは、分子が全方向に向くため、角度による見え方の差が少ないとしている。

ASV液晶ディスプレーパネルと一般的な広視野角液晶ディスプレーパネルの視野角特性の比較グラフ。特に正面から見たときのコントラストと、斜め方向から見たときの特性が向上しているという
ASV液晶ディスプレーパネルと一般的な広視野角液晶ディスプレーパネルの視野角特性の比較グラフ。特に正面から見たときのコントラストと、斜め方向から見たときの特性が向上しているという

LL-T1810-H/Bの18.1インチASV&低反射ブラック液晶ディスプレーパネルの視野角は上下左右170度、応答速度は25m秒、コントラスト比は400:1で最大輝度は220cd/m2。解像度は1280×1024ドットで最大表示色は1677万色。色再現性の国際規格“sRGB”に対応したsRGBモードを備える。

LL-T1810-H/Bを斜め後ろから見たところ
LL-T1810-H/Bを斜め後ろから見たところ

インターフェースは、DVI-I映像入力端子×2、USB(アップストリーム×1、ダウンストリーム×2)を持つ。パネル部は90度の回転が可能で、回転時に縦横の表示を変換するユーティリティーソフトが付属する。スタンド部は高さが上下に80mm、パネル角度も左右方向に90度、上向きに30度、下向きに5度動かせる。電源部はパネル部分に内蔵する。また、パネルの枠部分を従来モデルの約40.5mmから約17mmに狭額縁化している。

パネルを90度回転したところパネルを90度回転したところ

シャープでは、高品位の画像表示能力を生かし、医療、CG画像制作、印刷デザインなどの業務ユーザーをターゲットにするとしている。中村氏によると、10bit多階調処理とASV&低反射ブラック液晶ディスプレーパネルの組み合わせは、同社の16インチの1280×1024ドット液晶ディスプレーにも採用したいというが、現時点でのボリュームゾーンである15インチクラスの製品については、価格競争となっていることから、「検討中で結論は出ていない」と述べるにとどまった。

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