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積水化学工業、オゾン水による半導体レジスト除去技術を開発

2001年11月28日 01時14分更新

文● 編集部 佐々木千之

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積水化学工業(株)は27日、都内で記者発表会を開催し、高いオゾン透過性を持つ中空糸膜を使った、高濃度オゾン水による、環境負荷の少ないクリーンな半導体レジスト除去技術(※1)を開発したと発表した。

※1 半導体レジスト除去:半導体チップの製造において、半導体ウエハー上にコーティングした感光性樹脂(フォトレジスト)を、回路パターン露光後に取り除く工程を指す。

積水化学工業、高機能プラスチックスカンパニー P2プロジェクトヘッドの上ノ山智史氏
積水化学工業、高機能プラスチックスカンパニー P2プロジェクトヘッドの上ノ山智史氏

積水化学の開発した方法では、純水に浸した、非多孔性膜を使った中空糸にオゾンガスを透過させ、純水にオゾンを溶け込ませてオゾン水を作る。オゾン水によるレジスト除去(オゾン溶解法)では、オゾン濃度が高いほど反応が速くなる。同社は中空糸膜の厚みを数10μmまで薄く整形してオゾンが透過しやすくし、また中空糸も内径0.5mm程度と細いものにしてオゾンガスと純水の接触面積を大きくしたという。こうした性質を持つ非多孔性膜の中空糸は、同社が新たに開発したもので、圧力にも比較的耐えられるため、ガスを加圧(0.3MPa(メガパスカル))してオゾンを溶融しやすくし、現在のオゾン水法では最高水準の150ppmというオゾン濃度が可能となったとしている。

積水化学が開発した、非多孔性膜の中空糸を使用したオゾン溶解モジュール
積水化学が開発した、非多孔性膜の中空糸を使用したオゾン溶解モジュール。直径15cm、長さ20cmのたまご型をしている

従来は“多孔性膜法”や“ばっ気法”によって、オゾン水を作っていたが、これらの方法はオゾンガスが直接純水に触れるため、ガスに含まれる金属も一緒に純水に溶けてしまい、半導体ウエハーを汚染するという問題があった。また、多孔性膜は圧力に弱くオゾン濃度を上げにくい(30ppm程度)ことや、ばっ気法では、大規模なガス溶融タンクが必要という問題もあったという。

各種オゾン溶解法の原理
各種オゾン溶解法の原理。多孔性膜の中空糸では管の中に純水を通すが、積水化学の方法では外側を通す
各種のオゾン溶解法との比較
各種のオゾン溶解法との比較

こうして作った高濃度オゾン水は、ウエハーや液晶基板の入った反応槽に送って反応させるが、反応槽の上部を石英ガラスにして、波長254nmの紫外線をオゾン水に当てることで、オゾンがさらに強い酸化分解力を持つ水酸基ラジカルになり、毎分2μmというオゾン利用技術としては、最高レベルの除去速度を得たとしている。なお、一般的には毎分1μmの除去速度であれば、実用に耐えるという。

積水化学の開発したレジスト除去システム
積水化学の開発したレジスト除去システムの概要

同社によると、従来、半導体チップや液晶の製造工程におけるレジスト除去や基板洗浄では、硫酸過酸化水素や有機溶剤が使われてきたが、環境保護意識の高まりによるISO14001(※2)の認証や化学物質排出管理促進法(PRTR法)の施行に伴なって、レジスト除去/洗浄後の廃水処理が不要(※3)なオゾン水を使う方法が注目されているという。ただ、オゾンは水に溶けにい性質を持ち、高濃度のオゾン水の製造が困難なことから、反応速度が遅く、現状では従来の薬品を使う方法が使われている。

※2 ISO14001:国際標準化機構(ISO)が定めた“環境マネジメント規格”であるISO14000シリーズの仕様書。規格の要求事項が記されている。

※3 レジスト(有機物)と反応したオゾン/水酸基ラジカルは、酸素、水、二酸化炭素に分解する。

オゾン水を利用する方法では、レジスト除去後の処理が不要になる
オゾン水を利用する方法では、レジスト除去後の処理が不要になる
非多孔性膜を利用することで、金属の混入を完全に防げるという
非多孔性膜を利用することで、金属の混入を完全に防げるという

現在のレジスト除去では、オゾンを利用しない、プラズマなどを用いてレジストを分解燃焼させるドライレジスト除去法(アッシング法)が主流だが、この方法だけでは完全な除去が難しいことや、処理温度が250度以上の高温になるため、ガリウム砒素半導体のような、熱に弱い化合物半導体での運用が難しいことなどの問題がある。これに対して積水化学の方法では、常温で処理が可能というメリットもあるとしている。

各種レジスト除去法との比較。今回発表の技術が最もバランスのとれた除去方法であるとしている
各種レジスト除去法との比較。今回発表の技術が最もバランスのとれた除去方法であるとしている

今回同社が開発したレジスト除去システムでは、中空糸膜の寿命が長いことや、システムの規模が比較的小さく済むため、これまでの方法と比べてシステム全体の価格では3~4割安くできるという。同社では12月5日から日本コンベンションセンター(幕張メッセ)で開かれる半導体関連のイベント“セミコンJAPAN 2001”で、レジスト除去装置を展示する予定。積水化学では、こうしたイベントなどを通じて開発パートナーを求め、2003年くらいをめどに事業展開を目指す計画だ。

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