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オリンパス、レンズ交換型デジカメの標準化を推進――中間決算説明会で

2001年11月21日 23時22分更新

文● 編集部 佐々木千之

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オリンパス光学工業(株)は21日、都内で報道関係者を集めて、19日に発表した中間決算(4~9月期)に関する説明会を開催した。中間決算は、映像機器が赤字となったものの、医療機器の販売が好調だったことと為替差益によって、純利益が17%増の62億円で過去最高を記録した。また、デジタルカメラ事業の戦略について、機種をコンセプトの明確なものに絞ることや、レンズ交換型デジカメの標準化を推進していくことなどを説明した。

2001年度前期は過去最高益を更新

説明会ではまず、菊川剛代表取締役社長が中間決算全体について概要を、森久志財務部長が詳細な数字について説明を行なった。

菊川剛代表取締役社長
菊川剛代表取締役社長

2001年の前期(連結)の売り上げ高は前年同期比14%増の2480億円、営業利益は13.3%増の164億円、経常利益は10.2%増の118億円、当期の純利益は17.3%増の62億円となった。

2001年度中間決算の前年同期との比較
2001年度中間決算の前年同期との比較
事業分野別の売り上げ
事業分野別の売り上げ

事業分野別(※1)売り上げ高では、映像分野が前年同期比14.2%の989億円、医療分野が18.5%増の1165億円、産業分野が4.4%増の287億円、そのほかの事業が25%減の40億円となった。このうち映像分野の売り上げ内容では、デジタルカメラが26.6%増の637億円、銀塩カメラが4.9%減の304億円、録音機が11.8%増の48億円としている。

※1 オリンパスでは事業分野を、銀塩カメラ、デジタルカメラ、録音機などを“映像”、医療用の内視鏡、生物顕微鏡、血液分析機などを“医療”、工業用内視鏡、顕微鏡、光磁気ディスク装置、プリンターなどを“産業”という3つの区分に分けている。なお、これら以外に、システム開発や遺伝子解析サービス事業を行なっている。

映像分野の売り上げの内訳。デジタルカメラが大きく伸びているが、銀塩は減少している
映像分野の売り上げの内訳。デジタルカメラが大きく伸びているが、銀塩は減少している
産業分野の売り上げの内訳。MOディスクドライブ“TURBO MO”シリーズはシェアは拡大したものの、市場の縮小によって売り上げは減ったという
産業分野の売り上げの内訳。MOディスクドライブ“TURBO MO”シリーズはシェアは拡大したものの、市場の縮小によって売り上げは減ったという

菊川社長は「中間決算では、医療関連製品が欧米で好調だったため大幅な増収となった。これに為替差益も加わって、全体で過去最高水準の利益を達成できた。しかし、通期の売り上げ見通しは5100億円、経常利益見通しは270億円といずれも過去最高になると思うが、当期利益見通しは、当初見通しの165億円から110億円下方修正することとなった」と、内外の経済状況を反映し、最高益を下半期はかなり厳しいものになると説明した。

分野別営業利益。医療分野の利益がほかの分野をカバーした格好
分野別営業利益。医療分野の利益がほかの分野をカバーした格好

こうした状況を反映して同社では、2002年春より5年間の新しい経営基本計画を策定中であるという。詳しい内容については改めて説明するとしたが、「将来の経営を盤石なものにするために、成長性、収益性とともに、ブランド力の強化を大きな柱とする。とくにブランド力強化に関しては業績に左右されない固定費として5年間投資を行なう」(菊川社長)という。また「内視鏡依存体質から脱却する。これなくしてオリンパスの将来はない」(菊川社長)として、映像、医療、産業の3事業のバランスのとれた経営を行ないたいとし、特に映像関連事業の収益性を向上したいとしている。

デジタルカメラ事業の収益率改善が鍵に

続いて執行役員で映像システムカンパニーの小島祐介営業本部長がデジタルカメラの事業戦略について説明した。

映像システムカンパニーの小島祐介営業本部長
映像システムカンパニーの小島祐介営業本部長

はじめに市場の動向として、日本写真機工業会による2001年1~9月期の統計を示した。それによると、デジタルカメラの台数出荷統計では国内が328万台、海外が1095万台、金額出荷統計では国内1235億円、海外3796億円となり、台数は1~9月ですでに昨年1年の実績(国内295万台、海外1034万台)を上回っているが、金額では平均単価が下落しており、台数の伸びと比べると低い伸びにとどまっているとした。

日本写真機工業会による、2001年1~9月の出荷統計(台数ベース)
日本写真機工業会による、2001年1~9月のカメラの出荷統計(台数ベース)
日本写真機工業会による、2001年1~9月の出荷統計(金額ベース)
日本写真機工業会による、2001年1~9月のカメラの出荷統計(金額ベース)

ブランド別シェアの状況では、日本では富士フイルム(株)に続いて、ソニー(株)と2位争いを続けており、キヤノン(株)が加わってきたところ。米国ではソニーに続く2位、ヨーロッパでは富士フイルム、ソニー、キヤノン、コダックと共にだんご状態になっているという。

国内デジタルカメラのブランド別台数シェア。富士フイルムをオリンパス、ソニー、キヤノンが追っている
国内デジタルカメラのブランド別台数シェア。富士フイルムをオリンパス、ソニー、キヤノンが追っている
米国でのデジタルカメラのブランド別台数シェア
米国でのデジタルカメラのブランド別台数シェア。ソニーのシェアは30%以上あったものが、少し落ちてきたという
ヨーロッパでのデジタルカメラのブランド別台数シェア
ヨーロッパでのデジタルカメラのブランド別台数シェア。かつてはオリンパスがずぬけていたが、現在はだんご状態になっている

小島氏は今後のデジタルカメラ市場について、松下電器産業(株)の再参入といった要素はあるが、企業の入れ替わりはあるにせよ、シェア上位5社合計が90%を握るだろう、と予測した。

2005年には、上位5社によって市場の9割以上が占められる見通しという
2005年には、上位5社によって市場の9割以上が占められる見通しという

オリンパスのデジタルカメラ事業については、日米欧市場のそれぞれでバランスの取れたシェア、コンパクトタイプから一眼レフタイプまでフルラインのブランド(CAMEDIA)浸透度、CCD向けに特化したレンズ開発力、年10機種以上という商品化スピードが強みであると述べた。

デジタルカメラのキーデバイスであるイメージセンサーについては「CCDではこれまでの有力メーカーとの実績をベースにして強固なパートナーシップを継続する。自社で開発投資を行なうメリットは見えない」として、自社で手がける計画のないことを明らかにした。また、CMOSベースのイメージセンサーについては「現状ではノイズを消すためにマスクをかける必要があり、コスト面でCCDと変わらない。高画素で動画対応ということであればあり得るかもしれない」と述べるにとどまった。

オリンパスは、デジタルカメラ用レンズにおいて強みを持っているという
オリンパスは、デジタルカメラ用レンズにおいて強みを持っているという

2001年中間期のデジタルカメラ関連の売り上げは637億円、通期でも135億円を見込んでいるが、営業利益では中間期68億円の赤字、通期見込みでは112億円の赤字になるという。この理由について、2000年に発売した10倍ズームで手ぶれ機能付きの200万画素機『C-2100 Ultra Zoom』が不調だったことなどを挙げた。この商品(※2)はデジタルカメラでないとできない商品であったが、新しいコンセプトがなかなか市場に理解してもらえなかったという。

※2 なお、C-2100の後継機種で今年発売した『C-700 Ultra Zoom』については好調であるとしている。

オリンパスは在庫を減らすために、年末にかけて生産を抑えることにしていたが、さらに9月の米国でのテロが景気悪化に追い打ちをかけ、また、他社は生産調整に入っていないことから、クリスマス商戦ではデジタルカメラの価格が一層下がるという見通しであることから、中間期の赤字を覆すことができないと予想され、通期でも赤字の見通しになったと説明した。

中長期のビジネスでは、銀塩カメラとデジタルカメラのデザインと技術開発を一本化し、レンズ開発技術力とブランド投資を集中するという。デジタルカメラの一部の製品について、組み立てを中国で2001年度中に開始するほか、同じ価格帯で似たようなコンセプトの商品が競合しないよう、製品ラインアップの絞り込みを行なうとしている。そのほか、レンズ部品の外販事業の拡大、昇華型プリンター用紙の消耗品ビジネス、ソフトウェアの販売といった事業を合わせて500億円の売り上げを目指すという。さらに、他社とのパートナーシップでは、米イーストマン・コダック社とインターネットを通じたプリントビジネスで提携を検討しているほか、米レキサー・メディア社との提携をさらに進めてヨーロッパで展開を図るという。

また小島氏は、どこの会社のボディーでも、どこの会社のレンズでも自由に交換できるような、レンズ交換型のデジタル一眼レフの標準化をオリンパスが中心となって行ないたいという構想についても言及した。日米欧の有力メーカーからの賛同もうけており、フォーラムを結成したいという。なお、この規格のカメラでは3分の4インチサイズのCCDの採用を考えているという。これは、3分の4インチに適した交換レンズを考えた場合、現在の35mmの銀塩カメラの交換レンズとほとんど変わらないサイズになるためで、これ以上のサイズのCCDを使おうとするとレンズが大きくなり、機動性が失われるとしている。

1998年~2001年のデジタルカメラ出荷台数グラフ
1998年~2001年のデジタルカメラ出荷台数グラフ。急激な景気後退により、2001年9月以降は図の青太線から、赤の点線レベルに落ちる見通しで、月ベースでは初めて前年の実績を下回るかもしれないという

デジタルカメラの世界市場で見るとトップクラスの売り上げを持つオリンパスですら、事業収益が赤字になっていることは、デジタルカメラがいかに厳しいビジネスになっているかを物語っている。ドイツのアグファ・ゲバルト社が北米でデジタルカメラの販売を年内で終了するなど、メーカーの淘汰も進みつつある現状で、オリンパスの言うように、上位メーカーによる寡占化は避けられないようだ。同社はこれまでの実績をもとに、トップグループとして勝ち残りを目指す構えだが、来期(2003年度)にデジタルカメラ関連の利益目標について「今期の112億円の赤字をゼロにする」(菊川社長)と述べるにとどまっており、デジタルカメラ市場はまだまだ利益無き戦いが続く模様だ。

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