イー・エフ・アイ(株)(EFI)は14日、東京・新宿区の本社に報道関係者を招いて、本社の米Electronics for Imaging社(米EFI)が米国で10月22日発表した、モバイルワーカー向けプリントサービス“PrintMe Network(プリントミー ネットワーク)”の説明会を開催した。米EFIのガイ・ゲット(Guy Gecht)CEOがサービスの概要について解説した。
米EFIのガイ・ゲットCEO |
米EFIはカラープリンター用のコントローラー製品『Fiery(ファイアリー)』シリーズを開発、販売している企業で、米ゼロックス社、米ヒューレット・パッカード社のほか、キヤノン(株)、ミノルタ(株)、(株)リコー、コニカ(株)、シャープ(株)、エプソン(株)など多数の日本のプリンター/コピー機メーカーとOEMパートナー関係を結んでいる。
PrintMe Networkは、外出先でプリントアウトが必要になったときに、空港やホテル、コンビニエンスストアなどに設置してあるプリンターから、特別なソフトウェアや複雑な設定なしでプリントできるという環境をもたらすサービス。印刷するためにはパソコンを用意する必要はなく、携帯電話に届いたメールに添付されていたPDFを印刷する、といったことも可能で、ゲット氏は「いつでもどこでも、銀行のATMを利用するように簡単に印刷できる環境を提供する」と述べた。
PrintMe Networkの構成図 |
PrintMe Networkシステムは、インターネット上に置かれたPrintMeサーバーと、プリンターに接続した『PrintMe Station』と呼ぶ小型の端末で構成される。基本的には、ユーザーがファイルを印刷しようとする場合、PrintMeサーバーに対してファイルを送り、次に出力するプリンターを選択、そして指定したプリンターに行って、そばにあるPrintMe Stationのプリントボタンを押す、という手順となる。
『PrintMe Station』ネットワークインターフェースとパラレルポート、USBポートを備える。プリンターとはパラレルポートかUSBポートで接続する |
PrintMe Networkの特徴は、ユーザーがPrintMeサーバーにデータを送る手段を複数用意していることだ。パソコンから印刷する場合、PrintMeサーバーにウェブブラウザーを使ってログインし、ファイルのアップロードを行なう方法と、PrintMe Networkプリンターのユニバーサルドライバーと呼ぶプリンタードライバーソフトを組み込んでおいて、ワープロなどアプリケーションから印刷の際、出力先プリンターとしてPrintMeプリンターを選ぶ、という方法がある。アプリケーションからの印刷の場合は、プリントの操作をすると、ウェブブラウザーが起動してPrintMeサーバーへのログイン画面を表示する。あとはユーザーウェブブラウザーの操作でプリンターを指定するなど、ユーザーがファイルをアップロードするのと同様の操作となる。
PrintMeサーバーにアップロードしたファイルのリストを表示しているところ |
さらに、パソコン以外のPDAや携帯電話からの印刷を想定して、印刷したいファイルを添付したメールをPrintMeサーバーに送る方法もある。この場合メール送信後に、HTMLの表示が可能なPDA/携帯電話でPrintMeサーバーにログインして印刷の指示をする。PrintMeサーバーに送られたファイルは、サーバー上に蓄積されるので、同じファイルを印刷のたびに送信する必要はない。また、PrintMeサーバー上のファイルの印刷指示は、自動応答システムを使った音声の指示によっても行なえるようにするとしている。
PrintMe Networkでは、印刷ジョブに対して割り当てられる“ドキュメントID”によって管理する |
PrintMeサーバーに送られたファイルの印刷では、各“印刷ジョブ”に対して固有の“Document ID”が割りあてられる。基本的には最終的な印刷の際に、プリンターに接続されたPrintMe Stationに、このDocument IDを入力する必要がある。これは重要書類が他人の目に触れるといった問題を防ぐための機能。この機能は社内の印刷においても役に立つはずだとしている。セキュリティーのための機能として、印刷可能な期間の設定や、部数を指定することも可能となっている。逆に、Document IDなしにすぐにプリンターから印刷することもできる。
PrintMe Stationに、ドキュメントIDを入力することで、印刷操作が可能になる |
米EFIは、米国とカナダにおいて、米アドビ システムズ社、米ゼロックス、米ヤフー社、米Sir Speedy社、米STSN社、米TROY Group社、米Itrezzo社、カナダのThe Printing House社と協力して、PrintMe Networkの試験運用を始めている。日本についてのスケジュールは未定だが、ゲット氏によると、EFIと関係を持つプリンターメーカーからの反応が良く、また、日本はインターネットにアクセスできる携帯電話が非常に普及し、コピー機を備えたコンビニエンスストアも多いことなどから「日本は大きな市場になる。非常に期待している」としている。
米アドビ システムズのブルース・チゼン社長兼CEO |
説明会には米アドビ システムズのブルース・チゼン(Bruce Chizen)社長兼CEOも出席し、「PrintMe Networkは印刷に革命をもたらす。信頼性の高いビジネス印刷を、いつでもどこでも可能にするものだ。アドビはEFIとともにPrintMe Networkの構想を進めていく」と述べた。同社の『Acrobat Reader』に、PrintMe Networkを使った印刷機能を組み込む計画だとしている。
説明会では、ザウルスを使った文書の印刷や、携帯電話のカメラで撮影した画像をメールして印刷するといったデモンストレーションも披露していた。
これまで外出や出張先で印刷しようとすると、プリンターを探し、プリンターケーブルを用意し、プリンタードライバーをインストールするなど、かなりの手間がかかった。今回のPrintMe Networkが普及すれば、そうした面倒がかなり軽減されることは確かだ。ゲット氏は「PrintMe Networkの技術はオープンスタンダードとして広く普及させるつもりだ」としており、米EFIは有力プリンターメーカーとの関係も深いことから、プリンターやコピー機の対応はスムーズに行なわれる可能性が高い。気になるサービス料金については明らかにしなかったが、割安感のある料金設定がなされれば、ビジネスユーザーを中心に普及が進むことが予想される。