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月刊アスキー遠藤編集長が聞くPocketGearの戦略。そしてMobile GearはLinuxを搭載!?――NECモバイル関連の責任者、成澤祥治氏インタビュー

2001年11月05日 00時00分更新

文● 聞き手:月刊アスキー 遠藤 諭 /構成:編集部 中西 祥智

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[遠藤編集長] Pocket PCは、Palmマシンと比べてどうなんでしょうか?
[成澤氏] たとえば、北米と日本とでは、こういうPDAに期待する項目が全然違うんですよ。日本では、ちょっと業務系のアプリを乗せると、「これもできねえか、あれもできねえか」とすぐに来る。北米では割り切りがあって、「これさえできりゃいい」とかね。割り切りは、彼らのほうがいい、特に企業系は。

日本だと、「せっかくここまでやったんだから、この機能を入れて、もうちょっとこれ効果的にやってよ」なんてすぐに来ますね。そうすると、Palmじゃもたないですよ。メモリー、アドレス空間を含め、マルチタスク、リアルタイム性も含めて。
[遠藤編集長] でも、IBMはPalmでやると?
[成澤氏] いやいや、余計なことを言うと、また怒られるんで(笑)。でね、たとえばJava入れましたと。うち、(PocketGearに)Javaを標準搭載したでしょ。リクアイメントがすごいんだよ。せっかくJava入れたのだからってね。おいおい、ちょっ待てよと。これ、パソコンじゃねえぞ、と(笑)。やっぱり、ああいう感覚ってのは、日本は強い。昔からそうですよね。
「おいおい、ちょっ待てよと。これ、パソコンじゃねえぞ、と」
「おいおい、ちょっ待てよと。これ、パソコンじゃねえぞ、と」


Pocket PCだと、XMLやSQLなんかを裏で使うようなマルチタスクのソフトを作るときに、あんまり重いものは作れませんけど、ちょっとしたものだったらやってあげるわけですよ。そういうことはね、Palmではできないんです。Palmは“PIMプラスアルファ”ですよ。そうやって割り切れば、あれで十分。ぼくはPalmをばかにしているわけでもなんでもないんです。ただ、その使い方、使われ方によって、割り切ってやっているのかなと。
[遠藤編集長] 企業向けだったら、Pocket PCだと?
[成澤氏] 我々も最初、PalmもLinuxも含めて、2年くらいざーっと(検討を)やったんですよ。でもPocket PCに落ち着いたっていうのは、そういうところが大きい。
[遠藤編集長] え、Palmをやる可能性があったということですか?
[成澤氏] いやいや、最初は評価するということ、やるかやらないかは別としてね。いろんなOSでやってみたんですよ。やっぱり、こういうやつもね、将来どう持っていくかっていうのはね、企業において本当に考えなけりゃいけないですよ。
[遠藤編集長] ちょっと、見えないですよね。
[成澤氏] そう。なんか、なんでもいいから、みんな乗っけりゃいいと。どの方向へ持っていくかみんなわからずにね。何でもいいから入れて、みたいな感じになりつつあるわけでしょ、メーカーが。だから、中途半端なんだよね、それぞれが。
[遠藤編集長] まあ、全部乗っけちゃえばいいですよ(笑)。
[成澤氏] 肥大化してくるでしょう、どんどん。で、値段ばっかり高くなってね。
[遠藤編集長] 現状で、Windows CEとかPocket PCとか、あるいは御社のPocketGearのこれからの予定でもいいんだけれども、それらの企業の割合っていうのはどれくらいですか?
[成澤氏] 企業が安定的に伸びる、1年半から2年くらいまではね、まあ、だいたい半々ですよ。立ち上げ時は、やっぱりコンシューマーのほうが、立ち上げの2ヵ月、3ヵ月で考えるとコンシューマーのほうがいい。売り上げに対する割合が高い。企業系は、評価したりする時間がかかるから。
[遠藤編集長] コンシューマーと企業系に、まったく同じものを売られるんですか?
[成澤氏] いや、我々CTOと呼んでいるんですがね、Mobile Gearも、企業向けのやつはアプリケーションを取り替えている。電源抜いても消えないようにね。データも、お客さん情報が消えちゃあこまるから、お客さんと「この部分はどれに入れますか」、と。「RAMに入れますか、フラッシュメモリーに入れますか」、と議論しながらね。で、その形でやってあげる。だから、お店に出ている製品のカッコ書きに書いてある、たとえば、PIMがこんなの入ってますとかいうのは、企業向けには入ってないかもしれない。

ボードと画面だけを渡すOEMがけっこうある

[遠藤編集長] あのドコモさんのsigmarionみたいに、特殊な売り方というか、企業売りでもコンシューマー売りでもない、特殊な企画とかそういうのは考えてらっしゃる?
[成澤氏] やっぱり、ある程度台数がまとまらないと、企業系をやるというのは、なかなか難しいですよね。開発費もかかりますし。既製品を使うのとは違って、コストが上がりますから。むしろ、ボードと、画面だけを渡すというOEMが、あるんですよ。けっこう制御系に入っている。
「ボードと、画面だけを渡すというOEMが、けっこうあるんですよ」
「ボードと、画面だけを渡すというOEMが、けっこうあるんですよ」
[遠藤編集長] たとえば、石油プラントかなんかの中心部に……。
[成澤氏] いえいえ。この前まとまったのは、電波望遠鏡の制御。
[遠藤編集長] へ~。
[成澤氏] 移動用の、転がっていく電波望遠鏡があるんだけれども、それのコントロールを、これにしようかと。そこに、一番最初に目を付けてね、最初は、これをこのまま入れたんですよ。そのシステム、売っているんですけど(笑)。なんだこれ、どう見たってMobile Gearだよな、街から買ってきて入れたんだろうってね(笑)。それを、ちゃんと作るようになったとか、そういうのが大きいわけですよね。
[遠藤編集長] う~ん。
[成澤氏] こいつも(PocketGearも)決まっているところがあるんですが、まだ言えないですけれどね。
[遠藤編集長] もっと、こう、特殊な売り方とか。たとえば、御社のMobile Gearのページ(121ware.com)に、下に広告がたんまりと出てくる。Mobile Gearだと、半分しか見えないんだけど。
[成澤氏] フレームでしょ。下げてしまえば……。
[遠藤編集長] え、あれ動くの? 下は固定で、HTMLで書いてあるでしょう。だから、Mobile GearのベージなのにMobile Gearで見るとコンテンツがほとんど読めない……そんなグチは置いてとくとして、そこにね、ガストの広告が出ていたんですよ。ガストに端末を置いて、占いをやったりしてますよね。たとえばそういうところで、(PocketGearの)いままでにない売り方や使い方が……。ほら、キーボードとは使い方が違うじゃないですか。そういう話ってないんですか?
[成澤氏] あの、携帯電話の代わりみたいにね、決済すると、いうものは……。
[遠藤編集長] 電子マネー?
[成澤氏] そうそう。IP-VPN入れたから、やってくれ、と。考えてくれ、というのはきてますけれどね。
[遠藤編集長] いわゆる普通の電子マネーですよね。
[成澤氏] まあ、面白い話は、けっこう飛び込んできますけれど、どこまでね、本物かどうなのか読みきれないところがあってね。
[遠藤編集長] ただ、全体としては、こっち(PDA)に向かっているのは間違いない?
[成澤氏] 全体としてそっちかというと、いや、どうだろう? 企業集団の中で、全体がこれに向かっているかというと……。いや、これも絶対必要だから、我々も始めたんだけれど。ただ、まだ(Mobile Gearのほうが)バランスがいいんだよね、提案するときに。
[遠藤編集長] ふーん。
[成澤氏] お客さんに提案しているときに、話を実際に聞いてみると、(PDAの)画面とペンでは、まずいところも出てくるんじゃないの、と。お宅はちょっとまずいんじゃないかと、そういうところは、我々切り分けてキーボード付きのHandheld PCのほうを提案するわけですよ。で、それでも難しければ、モバイルノートだとか、我々B5ノートもやってますからね。これも全部、一緒に売るんですよ。
[遠藤編集長] なるほど。
[成澤氏] だから、意外と皆さんに、これからはPDAの世界みたいな書き方をしていただいているけど、僕らはある意味それをうまく使って、悪乗りしているみたいなところがあってね(笑)。
[遠藤編集長] PocketGearはStrongARMですよね。その辺の話というか、そのマシンの場合、CPUはなんでそれに決まったんですか?
[成澤氏] マイクロソフトがStrongARMしか対応しないからどうだとか、こうだとか言われているけれど、我々はそんな話とは全然違うところで、これを決めたわけです。最終的にPocket PCにしようと決めた時点でですね、その時点で最もCPUとして、もしくはソフト開発をやっていただけるところもひっくるめて、(StrongARMとMIPSと)どっちがパイが大きくていいかと。

すると、総合評価で、StrongARMがいいということになったんですよ。コンパックさんなんかも(iPAC Pocket PCで)StrongARMを使っているからね。開発キットをそろえることについても……
[遠藤編集長] 自社のCPU(MIPS系のVRシリーズ)を使うよりも?
[成澤氏] ずいぶん悩みましたよ。
[遠藤編集長] ほう。性能だけで……。
[成澤氏] いえ、違う違う。総合的な評価で。国内だけにしか出さなかったら、VRで多分行きましたよ。
[遠藤編集長] うーん、じゃあ、海外も相当見込んでるって感じですか?
[成澤氏] ええ。ヨーロッパはヨーロッパ、北米は北米で、いろいろとやりたいということを、提案されていましたからね。
遠藤編集長愛用の『Mobile Gear II MC/R450』の背面
遠藤編集長愛用の『Mobile Gear II MC/R450』の背面。後述するが、このマシンはその後、哀れな姿に……
[遠藤編集長] 米国では『Mobile Pro』、ヨーロッパでは『Mobile Gear』ですか、ちゃんと流れていますからねぇ。アジアはどうなんですか?
[成澤氏] アジアは、まだこれからでしょうね。
[遠藤編集長] 今、アジアでは流行ってますよ。夏中国に行って、中国風を吹かしてるんですけど……。
[成澤氏] でも、中国では安いでしょう?
[遠藤編集長] 中国では、Palm型の端末が、おっしゃたようにめちゃめちゃ安い。『掌上王』とか『名人』とかいう、電子手帳のちょっと高級なやつがとっても売れているんですが、Windows CE機もありますよ。韓国なんかでも、Windows CE機たくさん出てますよね。

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