このページの本文へ

【東京モーターショー2001 Vol.3】クルマにも着実にIT化の波が──感情を持つクルマも登場

2001年10月25日 23時21分更新

文● 編集部 佐々木千之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

千葉・日本コンベンションセンター(幕張メッセ)開催中の“東京モーターショー2001”の自動車メーカーブースで、次世代の“自動車ITシステム”が展示されている。その中から、いくつかをピックアップした。

BMW、来春登場の高級車にジョイスティックを搭載?

ビー・エム・ダブリュー(株)(BMW)のブースでは、8年ぶりにフルモデルチェンジするという、フラッグシップセダン“BMW 7シリーズ”を展示している。日本で2002年春に発売する予定というこの7シリーズには、車内のさまざまなスイッチやレバーなどを従来のクルマよりも減らし、運転操作に必要な機能をハンドルとその周辺に集中して、ドライバーがより運転に集中できるという、“iDrive(アイドライブ)”というコンセプトを導入している。

この手のひら大のコントローラーで、エアコン、カーナビ、ラジオなど、さまざまな操作をすべて行なう
この手のひら大のコントローラーで、エアコン、カーナビ、ラジオなど、さまざまな操作をすべて行なう。重みもあり、質感もある、しっかりした作りだ

iDriveコンセプトで最も特徴的なのは、運転席右側(左ハンドル車の場合)にある、“コントローラー”だ。このコントローラーは手のひらサイズのダイヤル状のもので、左右の回転と上下左右斜めの8方向への動き、上から強く押すことによるボタンとしての動きで、ダッシュボード中央にある液晶ディスプレー“コントロールディスプレー”に表示されるメニューをコントロールする。これによって、エアコン、ラジオ、ステレオ、カーナビゲーションシステム、TV、電話などの操作をコントローラーとコントロールディスプレーに集約している。

これがダッシュボード中央にあるディスプレー。メニューはすでに日本語化されていた
これがダッシュボード中央にあるディスプレー。メニューはすでに日本語化されていた

また、7シリーズでは通常のクルマなら、このコントローラーの位置にあるシフトレバーやサイドブレーキなどがない。シフトレバーは、ハンドルのちょうど左右の手で握る位置に、ボタンとなって埋め込まれている。さらに、7シリーズはオートマチック車なのだが、止まっている地面が平坦でも、傾斜のある坂道の途中でも関わりなく、ブレーキから足を離すとその位置に自動的に制御してとどまり続ける。発進するには、ただアクセルを踏めばいいという。

スイッチがいくつも埋め込まれた7シリーズのハンドル。左右にある銀色の四角いスイッチがシフトアップスイッチ。シフトダウンは裏側にあるスイッチで行なう
スイッチがいくつも埋め込まれた7シリーズのハンドル。左右にある銀色の四角いスイッチがシフトアップスイッチ。シフトダウンは裏側にあるスイッチで行なう

BMWによると、iDriveコンセプトは運転者が車内で行なうすべての操作を素早く確実に行ない、さまざまな情報を得ながら、より快適で安全な運転を楽しめることを目指したものという。iDriveはまず、最高級セダンの7シリーズから導入するが、将来はBMWのすべての車種に搭載していくとしている。なお、BMWのブースでは、実車に搭載したシステムのほかWindows上で動作していると思われる(ウインドーの枠から推測)エミュレーターも展示されているが、iDriveの本物のシステムはBMWの車内で開発した独自のOSを使用しているとのことだった。

日産は2003年に投入を計画する“2003i”を展示

日産自動車(株)ブースでは、2003年の実用化を目指した、高速通信ネットワークシステム“2003i”と、2005~2010年を見据えた“ネットビークルideo(イデオ)”を展示している。

“2003i”。外見は現在の普通のクルマに見えるが……
“2003i”。外見は現在の普通のクルマに見えるが……

2003iはダッシュボード中央に、幅360mmという大型のディスプレーを配置し、ハンドルに情報操作用の4つのボタン“4ポイントコントローラー”を搭載、ジョグダイヤル型のスイッチにはメニューの状況に応じて、スイッチを押すために必要な力が変わる“フォースフィードバックスイッチ”を使っている。ディスプレーはディスプレー面を凸型にすることで、圧迫感を低減している。また、フォースフィードバックスイッチは、操作に必要な力を変化させることで、手元や画面を見なくても操作できるようにしたという。

計器類も含めて、ダッシュボード中央の幅360mmの大型ディスプレーに表示を集中させている
計器類も含めて、ダッシュボード中央の幅360mmの大型ディスプレーに表示を集中させている

また、無線通信によるネットワークシステムでは、ユーザーの好みや走行状況、位置などによって、どういった情報が必要かを判断して収集する“エージェント”機能を採用しているという。また、複数のクルマが互いに通信し、それぞれのディスプレーに相手のクルマの経路や現在位置を表示する機能などを備えるとしている。

こちらはコンセプトカーの“ideo”。このようなオープンカータイプのほかに、屋根の付いたタイプも展示していた
こちらはコンセプトカーの“ideo”。このようなオープンカータイプのほかに、屋根の付いたタイプも展示していた

一方のideoは2005~2010年の未来のクルマのコンセプトカー。クルマを情報によって人と街をつなげるインターフェースとして「街にあふれる情報をリアルタイムに取り込んで、今までにない運転する楽しさ、便利さを提供する」というものだ。

ダッシュボード全面ディスプレーはさすがに大きい
ダッシュボード全面ディスプレーはさすがに大きい
切れ目のない横長のディスプレーに、このような形で情報/映像が浮き上がるように表示する
切れ目のない横長のディスプレーに、このような形で情報/映像が浮き上がるように表示する

ideoでは、ダッシュボードの全面を横1170×縦280mmというディスプレーとしており、ハンドルに付けられた小型のジョイスティック“サムコントローラー”によって、表示を切り替えることができる。ディスプレーには、自車を上空から眺めるような3次元のバードビューによるナビゲーション画面や、サイドミラーの代わりに取り付けられているCCDカメラからのクルマ周辺の画像、映画館の上映情報、駐車場の混雑状況などを表示する。情報の切り替えは機械的でなく、“人の指示に対して生きているような動きで反応する”という。

ideoの後部座席から前方を見たところ
ideoの後部座席から前方を見たところ

ソニーとトヨタが協力した“感情のあるクルマ”

トヨタ自動車(株)ブースには、ソニー(株)とのコラボレーションによって“共に喜び、共に悲しみ、人とクルマが心を通わせる。長くつきあうほど成長する”というテーマで作り上げられた、感情を持つクルマ“pod(ポッド)”が展示されている。

これが“pod”の休んでいる状態。これに人が近づくと……
これが“pod”の休んでいる状態。これに人が近づくと……
人が近づくと、車体が持ち上がってドアが開く。ボディーがオレンジ色に光っているので、機嫌がいいはずだ
人が近づくと、車体が持ち上がってドアが開く。ボディーがオレンジ色に光っているので、機嫌がいいはずだ

podは、自動車としての基本部分をトヨタが、人とのインターフェース部分をソニーが担当したという。ダッシュボードの“メインディスプレー”と、4つの各座席にある“各席ディスプレー”で、クルマと乗員とのコミュニケーションをとる。運転者が安全でスムーズな運転をすると、ディスプレー上の顔が機嫌良くなり、さらにボディー外側のイルミネーションがオレンジ色に光り、“しっぽ”を振る。反対に乱暴な運転をすると怒り、イルミネーションが赤く光るなどの“感情表現”をする。

これがpodのしっぽ。動きで感情を表現する
これがpodのしっぽ。動きで感情を表現する
こちらはソニーが展示していた、“podの座席”。座席ディスプレーを実際に操作できる
こちらはソニーが展示していた、“podの座席”。座席ディスプレーを実際に操作できる
これが座席ディスプレー。操作はタッチパネルに触れるか、右側のジョグダイヤルによって行なう
これが座席ディスプレー。操作はタッチパネルに触れるか、右側のジョグダイヤルによって行なう

また、ドライバーの好みや性格を読みとって、サスペンションの堅さなどを調節したり、音楽の好みを覚えて、自動的に選曲したりする。podに乗っていないときは、手のひらサイズの“ミニポッド”を運転者の近くに置いておくことで、そこで聴いた音楽やテレビ番組から情報を取り込むという。なお、“感情を持つ”というと、同じソニーのペットロボット“AIBO”が頭に浮かぶが、AIBOのシステムとは関係ないとのことだ。

podの模型の手前に置いてある青い物体が“ミニポッド”。podに乗っていないときはこれを自分のそばに置いておく
podの模型の手前に置いてある青い物体が“ミニポッド”。podに乗っていないときはこれを自分のそばに置いておく

東京モーターショーでは、自動車メーカー各社がこぞってIT/ネットワーク機能を充実させたクルマを出展する! と思いこんでいたのだが、大きく展示していたのは紹介した3社ぐらいで、ほかのメーカーはまったく展示していないか、あるいはごく部分的な展示にとどまっており、いささか拍子抜けした。クルマという移動のための機械として完成したシステムに、まだまだ発展途上のIT技術を融合させるのはまだまだ難しいということかもしれない。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン