このページの本文へ

CME(旧リキッドオーディオ・ジャパン)、韓国企業と提携し、ロシアのクラシック音源40万タイトルを国内で提供開始

2001年10月15日 23時05分更新

文● 編集部 中西祥智

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

(株)サイバー・ミュージックエンタテインメント(以下CME)は15日、韓国のイエダン・エンタテインメント(Yedang Entertainment)社と提携し、イエダン・エンタテインメントが権利を持つロシアの未公開のクラシック音源約40万タイトルの国内での提供を、11月に開始すると発表した。

同日の記者発表会
同日の記者発表会。前列最も左がCMEの西牟田博文代表取締役社長、1人置いて右がイエダン・エンタテインメントのByun,Dae-Youn代表取締役、その右が米パイプライン・ミュージックのDenny Diante代表理事

CMEは10月1日付けで、(株)リキッドオーディオ・ジャパンから社名を変更した。旧リキッドオーディオ・ジャパンは、7月に米リキッドオーディオ社とのライセンス契約を解除したため、社名の変更を求められていた。今回の発表は、社名を変更し、経営陣も一新したCMEとしての第一歩となる。

今回発表した音源は、旧ソビエト連邦の国営放送局“オスタンキノ”およびレコード会社“メロディア”の保管していたもの。エフゲニー・キーシン(Evgeny Kissin)の演奏するピアノ曲62曲やアルトゥール・ルービンシュタイン(Artur Rubinstein)のピアノ曲12曲、スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter)のピアノ曲633曲、作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチ(Dmitri Shostakovichvich)が自らの作品を演奏したもの158曲などがある。中には、イタリアのテナー歌手ルチアーノ・パヴァロッティ(Luciano Pavarotti)が1964年にボリショイ劇場で歌ったときの録音盤4曲などもあるという。

イエダン・エンタテインメントが韓国で販売しているCD
イエダン・エンタテインメントが韓国で販売しているCD。ドボルザークやチャイコフスキー、ベートーベン、バッハなどの曲を収録している

モスクワ郊外のオスタンキノの資料保管所にあるそれらの音源の版権は、米パイプライン・ミュージック(Pipeline Music)社が保有している。イエダン・エンタテインメントがその版権のアジア地域における半永久的な独占契約を得て、さらにCMEがイエダン・エンタテインメントから日本国内の独占提供権を獲得した。独占提供権を取得するための費用については、現時点では公開していない。

CMEはそれらの音源を日本国内でCDとしてパッケージ販売するほか、イエダン・エンタテインメントと共同して、アジア地域においてインターネット配信する。パッケージ販売は年間300タイトル以上、インターネット配信については、サービス開始時4000タイトルを提供するという。

CMEの西牟田博文代表取締役社長
CMEの西牟田博文代表取締役社長

同日の記者発表会でCMEの西牟田博文代表取締役社長は、CMEの前身が「あのリキッドオーディオ・ジャパンだ」とした上で、「私たちは高い授業料を払って、インターネット配信について勉強してきた。(その経験から)今日、明日に、インターネット配信だけで商売が成り立つようになるとは思えない」とし、音楽配信だけでなくパッケージ販売も行なうことを説明した。

また、西牟田社長は「1900年代初頭のソ連にはいい音楽家がいた。それらをCDやDVDで21世紀に再現し、インターネットで自由に聴けるようにする」と述べた。また、イエダン・エンタテインメントとの提携によって、今後はジャズやソウル、ポップスも両社で協力して提供していくとし、さらにはアジア系アーティストを擁することも視野に入れている。

イエダン・エンタテインメントのByun,Dae-Youn代表取締役
イエダン・エンタテインメントのByun,Dae-Youn代表取締役

イエダン・エンタテインメントのByun,Dae-Youn代表取締役は、「今回の音源は、日本のクラシックファンにも気に入ってもらえる質の高いものであり、またCMEによる音楽配信にも期待している」と語った。また、米パイプライン・ミュージックのDenny Diante(デニー・ディアンテ)代表理事は、この40万タイトルの音源が「“ニューヨーク・タイムズ”などでは9000億円の価値があるとしている」ことを挙げた。

音源のデジタル化、復元作業は、3社が協力して行なう。すでに2万タイトルの復元(マスタリング)が完了しているという。ただし、そのマスタリングのための設備投資が200万ドル(2億4000万円)、総費用2億ドル(240億円)とCMEでは見積もっている。

米パイプライン・ミュージックのDenny Diante代表理事
米パイプライン・ミュージックのDenny Diante代表理事

CMEがパッケージ販売するCDは、イエダン・エンタテイメントが制作する。すでに韓国では、20タイトルを販売しているという。年間300タイトル以上の提供を予定しており、1タイトル2800円から3200円で販売する。

インターネット配信についてはWindows Media Audioでの試聴が可能で、ダウンロード販売はDigital Rights Management(DRM)およびWindows Media Technologyによって、1度しかデジタルコピーのできない音楽データを提供する。提供方法は有料の会員制とし、ウェブサイト上の楽曲をすべて視聴可能なA会員、デジタル化したすべての楽曲を視聴およびダウンロード可能なB会員、すべての楽曲を視聴およびダウンロード、またパッケージCDを月に5タイトルまで無料で配布するC会員に分類する。会員にはそれぞれ、月に1000円、3000円、1万円を課金する。

CMEでは11月にまず、インターネット配信を先行して開始し、その状況を見ながら、年内にパッケージ販売を開始するという。ダウンロード販売とパッケージ販売の比率については、パッケージ販売は20%程度で、残りがダウンロード販売になると予想している。サーバーなどのインフラは、リキッドオーディオ・ジャパン時代の資産を活用する。ダウンロードサイトをCMEのサイトとするか、または新たなサイト名とするか、他社のポータルサイトなどの1コンテンツとするかについては、現在検討中。

なお、オスタンキノには音源だけでなく映像も保管されている。CMEでは、当初は音楽のパッケージ販売・配信を行なうが、将来的にはRealVideoに独自の著作権保護機構を追加した形式による、動画の提供も検討しているという。

チャイコフスキーとストラビンスキーのCD
チャイコフスキーとストラビンスキーのCD。ピアノがエフゲニー・キーシン、指揮がバレリー・ゲルギエフ、演奏はSt. Petersburg Academic Symphony Orchestra

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン