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【インタビュー】e-GMディレクター テリー・B・ジョンソン氏――ディーラーとユーザーをウェブでつなぐ!!

2001年10月02日 23時55分更新

文● オートアスキー編集部 三浦和也/編集部 中西祥智

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米ゼネラルモーターズ(General Motors:GM)社は10月1日に、ウェブ上で車の見積もりが行なえるサービス“GM BuyPower”の日本版、“BuyPower Japan”のサービスを本格的に開始する。

“BuyPower Japan”
“BuyPower Japan”

BuyPower Japanは、米GMおよびスズキ(株)、富士重工業(株)の3社が出資して9月14日に設立した合弁会社、日本オートウェブサービス(株)が運営する。ユーザーはBuyPower Japanで、3社および(株)いすゞの、GMグループ4社の販売するあわせて65車種179モデルの見積もりを、希望する販売会社に依頼することができる。

また、日本オートウェブサービスは9月27日に、インターネット上での広告配信・管理をおこなうバリューコマース(株)と提携し、BuyPower Japanのプロモーションをバリューコマースが行なうと発表している。

ASCII24編集部およびオートアスキー編集部では9月27日、BuyPower Japanの本格サービス開始に合わせて、General Motors Asia Pacific社の“e-GM”(※1)ディレクター テリー・B・ジョンソン(Terence B. Johnsson)氏、日本オートウェブサービスの松井隆代表取締役社長兼CEO、バリューコマースのブライアン・ネルソン(Brian Nelson)代表取締役社長兼CEOに、BuyPower Japanの戦略について、都内の日本ゼネラルモーターズ(株)本社内でインタビューを行なった。

※1 GMのインターネット関連事業を扱うビジネスグループ

中央が“e-GM”ディレクター テリー・B・ジョンソン氏
左から、日本オートウェブサービスの松井隆代表取締役社長兼CEO、“e-GM”ディレクター テリー・B・ジョンソン氏、バリューコマースのブライアン・ネルソン代表取締役社長兼CEO

3氏の説明によると、まずバリューコマースと日本オートウェブサービスの提携によって、バリューコマースの5万のパートナーサイト、合わせて1日9000万のページビューをBuyPower Japanに誘導する。ジョンソン氏の「BuyPower JapanはE-CRMだ」との言葉どおり、バリューコマースのシステムによって、ウェブ上でのユーザーの行動を把握し、また顧客情報を蓄積する。

BuyPower Japanは、当面はパソコンとコールセンターからのアクセスのみだが、将来的には携帯電話からアクセスできるようにするという。これによって「ディーラーとユーザーをウェブでつなぐ(ジョンソン氏)」ことを目指す。

以下、1問1答

[編集部] 日本の一般ユーザーには、スズキやスバル、いすゞがGMグループという認識がほとんどないのでは?
“e-GM”ディレクター テリー・B・ジョンソン氏
“e-GM”ディレクター テリー・B・ジョンソン氏
[ジョンソン氏] 日本では今回が、GMのアライアンスをアピールする機会になる。スズキ、スバル、いすゞの企業サイトトップにはBuyPower Japanへの入り口バナーが存在し(※2)各ブランドの雑誌や新聞広告にもBuyPower JapanのロゴとURLを載せてゆく。こうして日本のユーザーにGMグループを浸透させてゆきたい。
※2 10月1日現在、スバル、いすゞ、GM日本法人、シボレー、オペルのサイトトップにはBuyPower Japanへのリンクがない。

[編集部] だが、スズキの軽自動車とキャデラックはなかなか結びつかないと思うが?
[ジョンソン氏] 大切なことは、スバルとキャデラックが結びつくかどうかではなく、ユーザーが1つの場所でさまざまな情報を得られることだ。そこで、ユーザーは目的に合った商品を見つけられる。スズキに興味がある人はスズキのサイトに行くが、そこにはBuyPowerへのリンクがある。それらによって、オンラインで客をつなげる事ができる。4社合わせれば、日本で17%のシェアがあり、それこそ軽自動車から高級外国車まで日本のマーケットで受け入れられるあらゆるジャンルのクルマがそろっている。
BuyPower Japanで扱う車種
BuyPower Japanで扱う車種
[編集部] 1999年にe-GMのマーク・T・ホーガン社長は、年内にBuyPowerの日本語版を立ち上げるとしていた。日本でのサービス開始が2年近くかかっているが、遅れた原因は?
[松井氏] パートナーの調整に時間がかかった。また、最終的にユーザーと見積もり情報をやり取りするディーラー側の対応準備にも時間がかかった。以前からウェブ見積もりに積極的に取り組んでいたスバルは比較的すんなりと導入できた。
日本オートウェブサービスの松井隆代表取締役社長兼CEO
日本オートウェブサービスの松井隆代表取締役社長兼CEO
[ジョンソン氏] インドやタイは3ヵ月でスタートできた。日本は、とても特殊な環境だ。サイトのローカライズだけでなく万全の体制でスタートしたいと思った。
[編集部] なぜ“GMダイレクト”などではなく“BuyPower”なのか? 将来他社の車も扱うためか?
[ジョンソン氏] “BuyPower”は世界ブランドだ。たとえばドイツでは、“Opel BuyPower”といった形になる。他社の車を扱うことについては、現状では考えていない。
[編集部] 他の新車見積もりサイトではディーラーのトレーニングやディーラー向けのITサービスを行なっている例もあるが?
[ジョンソン氏] BuyPower Japanでディーラーの管理や、工場の効率化なども行なっていきたい。ただし、SCM(Supply Chain Management)は将来の話だ。
[編集部] 1999年10月および2000年2月の段階で表明していた、トヨタ自動車(株)および同社の見積もりサイト“GAZOO.com”との関係は?
[ジョンソン氏] トヨタとの関係は続いている。北米でも関係がある。だが、具体的な内容については決まっていない。
バリューコマースのブライアン・ネルソン代表取締役社長兼CEO
バリューコマースのブライアン・ネルソン代表取締役社長兼CEO
[編集部] BuyPower JapanでBTO(Build To Order)は行なわないのか?
[ジョンソン氏] それは将来のプランだ。アメリカではパイロットプランとして行なっているが、その結果を見て、マーケットに合ったサービスを導入していきたい。

1999年にカーポイント(現カービュー)、オートバイテルがアメリカで定着したeコマースの輸入という形で日本市場に導入されて2年が経つが、新車購入時にウェブで見積もりをとることが広く定着し、コストに見合う収益が見積もり事業だけであがるまでにはまだ時間がかかるとの見方が強い。

しかし、メーカーサイトに当然のように見積もり機能を期待するまでにユーザーは成長している。そのような状況でGMがアメリカで開発し時間をかけて育てたシステムを共通に提供することができ、サイト運用を共同で行なえるメリットは、参加ブランドにとってはGMアライアンスのひとつの結実と言える。

BuyPower Japanの構造
BuyPower Japanの構造。いすゞは経営再建中のため、出資していない

今後、BuyPower Japanが独自のブランドとして積極的に新車購入希望者の掘り起こしに力を発揮する“積極的な成果”か、または、メーカーサイトの見積もり機能の共同運営“消極的な成果”という意味合いで日本市場の成熟を待つかは、現時点では判断できない。

ただ、サイトオープニングで各ブランドサイトトップページから祝福(リンク)を受けられない現状は、スタートとして非常に苦しい。もっとも困難だと思われる現場ディーラーの対応を得てユーザーにとって“気が効く”サービスの展開こそが積極的な成功に近いと考えられる。

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