プログラム的にはもう、7割はできているんです。開放区のルーム番号を入力して、PDFファイルで出力できる仕組みと、課金して本にして、2日程度でユーザーさんに届けるというところまで。でも、少なくともトントンになるくらいの、ビジネスの仕組みとしてやっていく目処が、今はまだちょっと立っていないのでどうしようかなと。
それから、サイトの中の雑談で、新しいハードを買ったとか、ビールを飲んだという以外に、本を読んだとかCDを買ったとかいう話が出てきますよね。その本が面白そうだなと思って、ポッと買えたら便利だし、買って読んで、またネタになるという。……そういう循環が作れればいいかなと。
それでいくばくかの売り上げが立てば、みんなが雑談をしているだけでお金が儲かる仕組みというものが、もしかしたらできるのかもしれない。できないですけれどもね、実際は。そんなに儲かるわけじゃないから。ただそういう良い循環ができればいいな、と思ってるんです。
最初はテキストに徹底的にこだわっていたんですけれども、肩肘張って文字にこだわるよりは、色いろなツールを使ってみんながわいわいやっているようなほうがいいな。僕が何もしなくても面白いと。そういう風になっていてほしいな。一年も先はちょっとわからないですね。なくなっちゃってる可能性も十分考えられるし。そんなに大きく変わらないと思いますけれどもね。三年ぐらいは、まあまあ同じようなやりかたでもいいかなって思っています。
ただ、そういう“ノリ”とかは、なかなかお金に変わらないわけじゃないですか。それが最後は分かれ目になるんですよね。「こういうノリを作ったりできますよ」というのに、対価を払ってくれればいいんですけれども。
インターネット業界は、景気が悪くなっているじゃないですか。オルトアールの何割かは、僕の中では遊びですが、そんなに遊んでばっかりもいられないという状況ですね。一番大事なのは、オルトアールの“成果”をビジネスに発揮させつつ、オルトアールもやるという状態にしたい。オルトアールと、オルトアールの技術を使ったビジネスを成り立たせる。だからユーザーの方々は、商売になるように応援していてください。
オルトアールの語源は、“Alternative Reality――もう一つの現実”、から来ているという。船田氏とタフ社、そしてML5のメンバーをはじめとして、オルトアールに参加するユーザーたちは雑談によって、現実のような、そうでないような、ネット上のもう一つの社会を作りあげた。
サイト立ち上げから1年が経過し、開放区の利用者はますます増えつづけている。軽快かつスピーディーな雑談はとどまることなく続くだろう。ネットバブルも崩壊した現在、インターネットビジネスで売り上げをたてることは非常に難しい。しかしインターネットによるコミュニケーションがますます重要さを増してくるこれからの時代、気負うことなく気軽にできる“雑談”は欠かせない要素になるのかも知れない。そして“雑談”のノリがビジネスになる時代が、ひょっとしたら、来るかもしれない。