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ハードやOSに依存しないアプリケーション実行環境の普及を目指す協議会が9月に設立

2001年07月13日 19時21分更新

文● 編集部 佐々木千之

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京セラ(株)、シャープ(株)、日本ビクター(株)、英Tao Group社の4社は12日、都内で記者発表会を開催し、特定のハードウェアやOSに依存しないアプリケーションやインターネットコンテンツが実行できるプラットフォームの仕様の策定、普及・啓蒙を目的とした“オープン・コンテンツ・プラットフォーム協議会(OCPA:Open Contents Platform Association)”を9月に設立すると発表した。

OCPAでは、Tao Groupが開発した組み込み型のJavaアプリケーション実行環境『intent』を核とし、共同で策定する拡張APIを備えた機能モジュールを組み合わせることで、ハードウェアやOSに依存しないオープンプラットフォームの普及を目指すとしている。

京セラ通信機器事業部マーケティング部責任者の木村一氏
京セラ通信機器事業部マーケティング部責任者の木村一氏

発表会ではまず、京セラ通信機器事業部マーケティング部責任者の木村一氏が、OCPA設立に至った背景について説明した。それによると、インターネットの普及が進み、インターネットにアクセスするデバイスもパソコンから携帯電話など、さまざまな機器に広がっている。加えてワイヤレスネットワークも含めたネットワークのブロードバンド化によって、コンテンツ配信というビジネスチャンスが到来しているという。

そうした中で、コンテンツホルダーやコンテンツプロバイダー側から、コンテンツを流通させる上で、すでに保有しているコンテンツ/アプリケーションをできるだけ少ない手間、少ない費用で廉価に複数のデバイスに展開したい、質の高いコンテンツ/アプリケーションをできるだけ簡単に作成したいといった要求がある。一方ハードウェアメーカーから見ると、自社が開発したデバイスになるべく早く多くのコンテンツを提供したい(してもらいたい)という要求がある。

OCPAが目指すオープンプラットフォーム
OCPAが目指すオープンプラットフォーム
“オープン・コンテンツ・プラットフォーム”のコンセプト
“オープン・コンテンツ・プラットフォーム”のコンセプト

つまり、インターネットコンテンツとインターネットアクセスデバイスが多様化し、なるべく手間を掛けずに多数のデバイスに対応したいコンテンツ側と、自社のハードウェアになるべく多くのコンテンツを引き入れたいハードウェアメーカーの思惑が一致したことから、OCPA設立の動きが出てきたものだとしている。

OCPA設立までのスケジュールとしては、17~19日に東京ビッグサイトで開催される“ワイヤレスジャパン(モバイルインターネット・ソリューション展)”において、19日に概要を説明するカンファレンスを開催、8月下旬には受付を開始し(※1)、9月下旬に第1回の総会を開催したいという。

※1 発起人4社を除いて、現時点でOCPA設立に賛同している企業は、ウエブソフト・インターナショナル(株)、(株)エイチアイ、(株)カプコン、サイバーゲート(株)、(株)ジャストシステム、(株)ズームシステムズ、(株)セガ、(株)タイトー、デジタルハリウッド(株)、バンダイネットワークス(株)、(株)富士通プライムソフトテクノロジ、プライムアトラス(有)、(株)メディアグレー、メトロワークス(株)、(株)モバイルコンピューティングテクノロジーズ、モンタビスタソフトウェアジャパン(株)、(株)リネオ、英クライテリオン ソフトウェア(Criterion Software)社、カナダのエスピアル・グループ(Espial Group)社、英Mathengine社、カナダのプラズミック(Plazmic)社、英SSEYO社、の22社。

OCPAへの参加は、コンテンツプロバイダー、アプリケーションサービスプロバイダー、ハードウェアメーカー、通信事業者などに広く呼びかける方針。OCPAで策定した各種仕様は一般公開する予定。また、アプリケーションやコンテンツ、機器の動作確認、相互接続性の検証の支援なども行ないたいとしている。

日本ビクター理事技術開発本部技師長の柴本猛氏
OCPAが策定するプラットフォームについて説明した、日本ビクター理事技術開発本部技師長の柴本猛氏
intentのシステム概要
intentのシステム概要

英Tao Groupが開発したintentは、さまざまなOSやCPU上(※2)において、仮想プロセッサー(VP:Virtual Processor)によるアプリケーション実行環境を提供するもので、intent向けに書かれたアプリケーションは、どのOS/CPU上のintentでも同じように動作する。アプリケーションの開発言語としては、広く利用されているCおよびC++と、Javaが利用できる。特にintentのJava実行環境は米サン・マイクロシステムズ社のPersonalJava 1.1.3/1.2、KVM/CLDC+MIDPといった標準仕様に適合するうえ、一般的なJava実行環境よりも、10~100倍高速に実行(対KVM比では40倍高速という)できるという特徴を持つ。またintentは組み込み向けに開発されているため、実行に必要なメモリーが少ないことも特徴となっている。

※2 intentが現在サポートするCPUは、ARM6/7/9、humb、StrongARM、ColdFire、M-CORE、SH3/4、PowerPC、Tx86、R3000/4000/5000、V850。サポートする(ホストとなる)OSは、EPOC、Linux、ITRON、QNX4、OS-9000、VxWorks、Windows 95/98、Windows NT/2000、Windows CE。

英Tao Group社会長のフランシス・チャリグ氏
英Tao Group社会長のフランシス・チャリグ(Francis Charig)氏

OCPAでは、このintentの標準環境(標準API)にプラスして、intentが持っていないが共通仕様としたほうが良いと思われるAPIを、拡張APIとして策定するとしている。例としてはMPEG-4などの各種コーデック、3Dグラフィックス、アニメーションなどがあるという。これらのAPIをOCPA拡張APIとして策定することで、こうした機能を提供するライブラリー/ミドルウェアのベンダーが異なっても、アプリケーション側には変更の必要がなくなることを狙っている。

intentの標準APIとOCPA拡張APIの関係
intentの標準APIとOCPA拡張APIの関係

今回の発表では、OCPA設立後の、標準化策定の時期など、具体的活動スケジュールについては未定としており、いくらかのんびりしているようにも見える。とはいえ、すでにアプリケーションベンダーを中心に22社もが、賛同の意志を示していることは、現在のハードウェアごとにアプリケーションを用意しなければならない現状に対する切実な不満を示しているものといえ、設立後の動きは活発なものになりそう。OCPAの活動が実を結べば、携帯電話やPDA、セットトップボックス、カーナビなどで、共通のアプリケーション/コンテンツが利用できるようになる。利用者側にとっても大きなメリットがもたらされるはずだ。

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