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【TECHXNY/PC EXPO Vol.1】TECHXNYが開幕──キーノートはパームCEO

2001年06月27日 23時09分更新

文● 塩田紳二

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“TECHXNY”は、昨年まで“PC EXPO”として開催されていたイベント。PC EXPO以外のいくつかのイベントを併合してこの名前になった。会場は、ニューヨークの“Jacob K Javits Center”である。同イベントは、現地時間の26日から28日まで開催される。傾向としては、かなりコンシューマー寄りであるが、ニューヨークという場所のせいか、新製品発表の場としても利用されることが多い。また、日本のメーカーも多数参加しており、昨年はソニーのCLIEが米国市場向けに、日本での発表に先んじて展示されたりしたイベントである。

会場となったJacob K Javits Convention Center
会場となったJacob K Javits Convention Center

キーノートは、パームのヤンコフスキーCEO

キーノートスピーチは、米パーム社CEOのカール・ヤンコフスキー(Carl Yankowski)氏。多くの旧製品の在庫を抱え、新製品である『m500』シリーズも値引き販売されているというパーム社。そのためもあってか、今回は特に新製品の発表などはなかった。スピーチは、パームの現状解説といった話とデモ、重要パートナーの紹介といった内容。印象としては、かなり企業向け市場を重視したのもの。不況ということもあり、個人消費よりも、企業の一括購入を期待してのことだろうか。そういえば、コンパックコンピュータの『iPaq PocketPC』も企業向け販売でシェアを上げたのだとか。

初日のキーノートスピーチを行った米パーム社CEOのヤンコフスキー氏
初日のキーノートスピーチを行った米パーム社CEOのヤンコフスキー氏。実は、この人元米国ソニーエレクトロニクスの社長。そう考えると松下と組んでAV路線もありかなって気がする

今回は、初めてSDカードのI/Oデバイス(SDIO)として“傾き”を検出するデバイス(当然SDカードサイズ)のデモが行なわれた。これは、傾きセンサーを内蔵しており、スロットに装着してパーム本体を傾けることで、スクロールなどの操作が行なえるようになるもの。いままでモックアップの展示のみだったSDIOにもようやく実際に動作するものが登場したわけだ。

初めて公開された、実際に動作するSDIOカードであるMotionSense社のMoveIt!
初めて公開された、実際に動作するSDIOカードであるMotionSense社のMoveIt!。傾き検出デバイスを内蔵する

もう1つ気になったのは、SDをプロモーションするパートナーとして松下電器産業が登場したこと。これまで、“SD Assosiation”としての活動はあったが、パームと松下とが直接並んだのは、これが初めてであろう。国内では、ソニーがすでにPalmOS採用PDA“CLIE”を発売している。そして『メモリースティック』とソニーのAV技術というコンセプトで展開しているのだが、ちょうど松下とパームの組合せで同じような展開が可能になる。松下も家電製品やAV製品でSDカードを採用しており、そのビューアーや情報管理機器としてパームが使われるという可能性もあるだろう。なんとなく気になる組合せである。

PalmOS採用マシン
PalmOS採用マシン。最後のマシンは、GPS機器を手がけるGermin社のもの。PalmOSの採用は表明したがマシン自体の発表はまだ。おそらくGPS一体型のマシンと思われる

展示会場は?

さて、展示会場のほうだが、ここには多数の出展がある。すでに昨日(現地時間25日)、新しい『モバイルPentium III-M』を公開したインテルだが、IBMやソニー、富士通などのモバイルPentium III-M搭載ノートマシンをいくつか展示している。このPentium III-Mプロセッサーだが、コードネームで“Tulatin(テュアラティン)”と呼ばれていたもの。0.13μmプロセスルールのPentium IIIである。また、これらの展示マシンには、同時にモバイル向けチップセットである『830M』シリーズが採用されているという。様々な話から推測するにグラフィック機能を内蔵しない830MPが使われているようだ。

VAIO Notebook PC GR
モバイルPentium III-M(Tualatin)を搭載し、Intel830MP(Almador)を搭載したVAIO Notebook PC GR。また、広視野角のLCDを採用している模様
VAIO Notebook PC GRのスペックプレート
VAIO Notebook PC GRのスペックプレート

また、ソニーは、米国市場向けのPalmOS採用PDA CLIEに、すでに国内販売されているPEG-N710C(国内ではPEG-N700C)に加え、『PEG-S320』と『N610C』の2機種を展示していた。これは、現時点では、米国のみ販売予定で国内での販売予定はないとのこと。PalmOS 4.0を採用しており、カラーLCD採用のPEG-N610Cは、色数が65536色にアップ。N710Cが持つ音楽再生機能やリモコン付きヘッドホンは附属しないが、高解像度液晶やメモリースティックスロット、ジョグダイヤルは備えている。簡単にいえば、N710C(N700C)の廉価版である。しかし、音楽再生機能がなくなったため、Palm本来の姿により近いイメージのマシンになったような気がする。筆者などは、はっきりいってこちらのほうが“欲しい”。売っているなら買ってかえりたいぐらいである。価格は予想小売価格で400ドル(約5万円)。

米国のみで発売されるPEG-N610C米国のみで発売されるPEG-N610C。機能的には日本で発売されているPEG-700Cから音楽再生機能を省略した

S320は、従来のモノクロモデルの後継機で、こちらもPalmOS 4.0搭載。簡単にいえば、N610Cのモノクロ、標準解像度版といったもの。こちらはかなり安く予想小売り価格200ドル(約2万5000円)。カラー、ハイレゾリューションはいらないから安いのが欲しいという人むけか。こっちも意外にいいかもしれない。なお、日本国内での出荷はほとんどがカラーモデルであったため、やはりこのS320も国内出荷は予定されていないとのこと。

カシオ計算機のBE-300 Pocket Manager
カシオ計算機のBE-300 Pocket Manager。独自のGUIを持つ

また、カシオ計算機ブースには、PocketPCではないWindows CE採用PDA“BE-300 pocket Manager”が展示されていた。これは、CEカーネル(Embeded版)を使って、その上に独自GUIと独自アプリケーションを載せたもの。しかもフラッシュメモリーは、ファイルシステムとしてのみ使われ、カーネルやアプリケーションは、RAM上に展開して動作するため高速になる。逆に従来のWindows CE機では、メインメモリの一部をファイルデバイスとして使っていて、それがメインメモリーを圧迫していたが、このユーザーデータは、フラッシュ上に置かれて、それを直接読み書きするという。

カシオは、メールやウェブブラウザー、PIMソフトに加え、WordやExcelのビューアーを用意した。また、同マシン用にアプリケーションを作るためのSDKも公開するという。

トランスメタ James Chapman氏インタビュー

今回会場で、先頃日本でTM5500/5800を先行発表した米トランスメタ社のチャップマン(Chapman)副社長に話をうかがう機会があり、その模様を簡単にレポートしておく。米国で25日に同CPUを正式発表したわけだが、基本的には、それに関して、従来からの情報のアップデートを目的としたプレス向けのミーティングであった。

トランスメタのセールス、マーケッティング担当副社長のジム・チャップマン氏
トランスメタのセールス、マーケッティング担当副社長のジム・チャップマン(James M Chapman)氏。かつてサイリックス社やインテル社で仕事していたのだとか

同社は、TM5500/5800の後継として来年には、256bit VLIW版コアの“High Performance Crusoe”および、周辺回路を取り込んだ“High Integration Crusoe”(長いので以下HICとする)の2つを計画している。このうち、HICには、サウンドやグラフィックスの機能が統合される。その応用分野として、強力なパームサイズのマシンがあり得るだろうとのこと。HICとメモリーなど若干の回路でマシンができあがり、長時間(プラットフォーム全体で消費電力が2分の1に下がるという)利用できる小型のマシンができるわけだ。しかもx86コードがそのまま動くため、たとえば、Windowsをそのまま動かすことも可能になる。

トランスメタのTM5800プロセッサー
トランスメタのTM5800プロセッサー。ESとあるのでエンジニアリングサンプルと思われる。マジックの手書き文字が、いかにも現場にあったものを持ってきたという感じ

この周辺機能の集積だが、Crusoeは、ソフトウェアを使って命令コードを変換する(Code Morphing Software)というアーキテクチャーを取るため、たとえば、一部のハードウェアをソフトウェアで仮想的に実現することが可能だ。この仮想的なハードウェアというのもCrusoeのコンセプトの一部といえる。だから、集積される周辺回路の一部の機能をソフトウェアで実現することで、単に回路を集積する以上に消費電力の削減などが可能になるのではないだろうか。この点について、Chapman氏は、70%ぐらいが実際のハードウェアで、残りはソフトウェアのエミュレーションになるだろうという。こういう手法を取ることで、ダイサイズを小さくできるとも述べた。

また、日本のメーカーが採用したのに米国メーカーでの採用がなかったのは、政治的な問題(メーカーとインテルの関係)もあるだろうが、米国でミニノート市場がほとんどないということも大きな理由だという。昨年、トランスメタのブースには、米IBMのThinkPad 240にCrusoeを内蔵した試作機が展示されたが、IBMは結局、Crusoeを採用しなかった。そういえば、ThinkPad 240はもともと、日本向けに作られた機種で、日米共通の機種ではなかった。いくつかの米国メーカーは、最近では日本市場の大きさを無視できないため、日本国内向けの機種で採用を検討しているところもあるという。

明日は2日目の模様をレポートする予定。

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