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エリクソン、丸紅、ハンドスプリングが日本初のBluetooth実証実験

2001年06月19日 23時46分更新

文● 編集部 佐々木千之

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日本エリクソン(株)、丸紅(株)、ハンドスプリング(株)は19日、記者説明会を開催し、Bluetoothを使った情報サービスの実証実験を7月下旬に開始すると発表した。この実証実験は“Bluetooth Launch Trial(B.L.T.)プロジェクト”と名付けられており、3社が中心となって協力会社から機器や場所の提供を受け、インターネットカフェや新幹線の車内でコンテンツ配信実験などを行なう予定。Bluetoothの実証実験は国内で初めてのこととしている。

Bluetoothは'98年5月にエリクソン、フィンランドのノキア社、米インテル社、米IBM社、(株)東芝の5社が提唱した、2.4GHz帯域の電波を使った無線通信規格。データ転送レートは毎秒721kbit。携帯電話へ組み込むことが前提とされ、パソコン用に開発されたIEEE802.11bの無線LANなどと比較して、通信速度や通信可能範囲(半径約10m。ただし増幅することで最大100mまで可能)で劣るものの、Bluetoothチップサイズの小ささや消費電力の少なさが特徴となっている。

ハンドスプリング(株)の代表取締役小宮山茂樹氏、日本エリクソン代表取締役モーガン・ゲングッソン氏、丸紅情報通信プロジェクト部長の橋本克朗氏
(左から)ハンドスプリング(株)の代表取締役小宮山茂樹氏、日本エリクソン代表取締役モーガン・ゲングッソン氏、丸紅情報通信プロジェクト部長の橋本克朗氏

B.L.T.プロジェクトの目的は、Bluetoothを使った“ホット・スポット・サービス”商用化のための実証実験。Bluetoothの技術的検証、端末の接続性、コンテンツ、位置依存型アプリケーション、ユーザー認証方法、ビジネスパートナーの開拓も含めた実験にする予定。実証実験で行なう“ホット・スポット・サービス”は、Bluetoothの比較的狭い通信範囲を利用して、その場所に特化したメニューや情報といった、位置依存型のコンテンツを提供するもの。エリクソンでは、デパートに入ったときに、時間限定のセールについての案内を携帯電話やPDAに流すといった例や、駅で時刻表データを流すという例を挙げている。

ホット・スポット・サービスの概要
ホット・スポット・サービスの概要

実証実験は東京都千代田区丸の内で三菱地所(株)が運営する“丸の内カフェ”、東京都港区お台場でソニーコミュニケーションネットワーク(株)が運営する““www”So-net/cafe”、秋葉原で(株)ソフマップが運営するパソコンショップ“ソフマップ”店舗、および西日本旅客鉄道(株)(JR西日本)の“新幹線ひかりレールスター”車内において実施する。開始時期は丸の内カフェと“www”So-net/cafeが7月、ソフマップ店舗とひかりレールスター車内が秋としている。東京地区においては、B.L.T.プロジェクトのウェブサイトを通じて、モニター100人を募集して機器を貸与するほか、機器の短期間の貸し出しを行なう。ひかり車内においても乗車中の機器貸し出しを行なうとしている。

実証実験のネットワーク構成
実証実験のネットワーク構成

各スポットでは、ソニーコミュニケーションネットワークが持つSo-netチャンネルのコンテンツ、B.L.T.プロジェクトのストリーミングビデオの提供や、インターネットへのアクセスサービスが利用できるとしている。実証実験中の利用は無料。当初はモニターと、各スポットで機器の貸し出しを受けた人だけが利用できるが、実証実験中にBluetooth機能内蔵の機器を持ったユーザーであれば、自由に使えるようにする予定。

実証実験で提供を予定しているコンテンツ
実証実験で提供を予定しているコンテンツの種類

実験において3社は、エリクソンがBluetoothのアクセスポイント『BLIP(Bluetooth Local Infotainment Point)』とアクセスポイント管理/コンテンツサーバー『BLIP Server』を提供、丸紅は各スポットを接続する光ファイバーネットワークを提供、ハンドスプリングはPDA『Visor』を提供する。3社以外の協力会社は以下の通り。

  • ソニーコミュニケーションネットワーク
  • カシオ計算機(株)
  • コンパックコンピュータ(株)
  • 日本ヒューレットパッカード(株)
  • イリンクス(株)
  • 丸紅テレコム(株)
  • ワイヤレスソリューション社
  • 西日本旅客鉄道
  • 三菱地所
ひかりレールスターでの運用の概要
ひかりレールスターの車内では、コンテンツサーバーを用意してそこからの情報を利用する。途中駅でコンテンツのアップデートも行なうという

発表会で行なわれた日本エリクソンの鈴木氏のプレゼンテーションによると、「Bluetooth機器の普及は当初の見込みより若干遅れているものの、普及は始まっている。2005年には世界で7億台の機器にBluetoothが内蔵されると考えている」と、Bluetoothの普及に自信を見せた。ただ、現時点で無線通信の機器やサービスとしては、IEEE802.11b規格の無線LANが急速に普及しつつある。これに対しては「IEEE802.11bが主にパソコンを対象としているのに対し、Bluetoothでは携帯電話やPDAを対象とするので競合するものではない」としているが、現時点で提供されているBluetooth機器は、まだパソコン用が多く、PDAでBluetoothを内蔵したものは登場していない。機器が普及しない状態でBluetoothサービスの商用化は難しいとも思えるが、こうした実証実験を行なうこと自体が、一般ユーザーへの知名度アップや各機器メーカーへのアピールもかねていると考えられる。

ハンドスプリングの『Visor Prism』
ハンドスプリングの『Visor Prism』は、コンパクトフラッシュアダプターと、コンパクトフラッシュタイプのBluetoothカードで使用する
カシオ計算機のPocket PC『Cassiopeia E-750』(左)とエリクソンのBluetoothアクセスポイント『BLIP C11』(右)
カシオ計算機のPocket PC『Cassiopeia E-750』(左)とエリクソンのBluetoothアクセスポイント『BLIP C11』(右)

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