(株)東急エージェンシーと、インターネット・通信事業者の香港パシフィック・センチュリー・サイバーワークス(PCCW:Pacific Century CyberWorks)社の子会社である香港アドソサエティ(AdSociety)社は29日、共同で合弁企業“株式会社アドソサエティ・ジャパン”(KK AdSociety Japan)を設立したと発表した。
香港側から日本側に、記念品が贈られた。左からアドソサエティ・ジャパンCEO 佐々木光功氏、香港アドソサエティCEO パトリック・ジョナサン・ウォン氏、東急エージェンシーデジタルソリューション本部副本部長 三瓶健二氏 |
アドソサエティ・ジャパンが設立されたのは4月27日で、本社は東京都港区、資本金は5000万円(出資比率はアドソサエティ85%、東急エージェンシー15%)となっている。
トップ3を目指せ!!
同社のターゲットと賭する市場は、インターネット上の広告市場だ。それも、現在のバナー広告のみではなく、近い将来のブロードバンド化を見据えた、ストリーング映像などをフルに活用した広告を提供する。香港アドソサエティCEOのパトリック・ジョナサン・ウォン(Patrick Jonathan Wong)氏は、日本でのインターネット上の広告の市場規模が、2002年度には2000億円とラジオ広告を上回ると予想し、その市場においてトップは無理でもトップ3には入りたいと語った。
香港アドソサエティCEO パトリック・ジョナサン・ウォン氏 |
他者との競争に勝ち抜く武器として、現時点で具体的に同社の提供する広告形態は3つ。
1つ目は“Unicast Superstitials”で、音声付のフラッシュ・アニメーションをウェブ上からダウンロードして流す。ファイルサイズ100KBまで、解像度550×480ドットの映像を、フルスクリーンで表示することも可能。ユーザーが何の操作もしていない、待ち時間にデータをダウンロードし、ユーザーがアクションを起こした場合はダウンロードを中断するため、ユーザーのレスポンスは悪化しないという。
“Unicast Superstitials”デモでは、かなりきれいな映像が流れた。もっとも、それなりのマシンパワーが必要なのだろうが |
実際の導入例では、広告のクリック率がアメリカで約6%とオンライン広告の平均クリック率0.3%を大きく上回る。ヨーロッパは10.1%と、10人に1人がクリックすることになる。
2つ目は“e-Brilliant 3D Animation Studio”。56kbpsモデムの接続環境でも楽しめる3Dアニメーション。ストーリーの中に広告を紛れ込ませる。通常1ストーリーで約700KB程度のデータを、圧縮することにより56kbpsモデムでも1分以内でダウンロードが完了する。そのストーリーの中に、小物やロゴなどの形で広告を挿入する。
3つめは“Skygo Wireless m-solutions”で、i-モード、EZweb、J-SKYなどの異なるプラットフォームに、単独のシステム上から広告を配信できる。配信する広告は携帯電話上のミニページで、バナーを選択すればそのミニページ上でクイズや投票などをユーザー行なうというもの。
それらに加えて、ストリーミング放送の冒頭やバッファリング時、切り替え時にスポット的に流すCMや、リアルネットワークス(株)と協力して、同社のストリーミングサイト“Real Guide”でインフォマーシャル(情報番組の形態をした広告)を流すことなどを行なうとしている。
“super! city guide”右上の映像と、周囲のさまざまな情報が連動する |
また、香港PCCWが来春配信する予定のコンテンツで、ニューヨーク、ロンドン、香港、東京のシティーガイドやライフスタイルなどについての映像と、地図やさまざまなウェブ上の情報を構成して提供する“super! city guide”への広告の導入も行なう予定。
狙いは国内?それとも国外?
東急エージェンシーデジタルソリューション本部副本部長の三瓶健二氏は今回の提携について、東急エージェンシーは国外に拠点を持っていないため、アドソサエティ・ジャパンおよび香港アドソサエティと協力して、広くアジアに事業を展開するきっかけにしたいとしている。
東急エージェンシーデジタルソリューション本部副本部長 三瓶健二氏 |
一方で、香港アドソサエティCEOのウォン氏は、アドソサエティ・ジャパンのターゲット市場を、日本に絞っているような発言をした。香港アドソサエティは、東急エージェンシー以外にも(株)電通や(株)博報堂などとも協力関係にあり、それぞれの違いを聞かれて、東急エージェンシーとは日本市場を、電通や博報堂とはアジアを、と言うような趣旨の回答をしており、両社の考えは少しすれ違っているようにも感じられた。
もっとも、東急エージェンシー側も香港アドソサエティのみと提携しているわけではなく、お互いに複雑な企業関係の網の中にいるのだが。
ほんのシェア数%でもトップ3になれる
アドソサエティ・ジャパンCEOの佐々木光功氏は、自社の強みは何かという問いに対して、やはり広くアジアに地盤があることを上げた。他社とは違い、アドソサエティ各社の協力で、アジア全体への広告戦略が行なえる。また、上記のように同社の広告の選択肢は豊富で、広告主がニーズに合せて選択することが可能だ。佐々木氏は、あくまでも自分たちはクライアントを重視する姿勢をとりつづけることを強調した。
アドソサエティ・ジャパンCEO 佐々木光功氏 |
また、2001年度の同社の売り上げ見込みは12億円で、2002年の市場規模予測2000億円の1%以下となっている。トップ3を目指すのには少なすぎるのでは、という質問に、佐々木氏はインターネット上の広告の競争は激しく、数%のシェアでも上位に食い込めることを語った。2002年度の売り上げ予測については、明らかにしなかった。
ではストリーミング広告はいつ主流になる?
これからアドソサエティ・ジャパンが始めるストリーミング広告だが、これがいつ主流になるかについて、東急エージェンシーの関係者は「3~5年後」だとした。そして、それまでの投資・費用は、いわば月謝のようなものだと語った。