このページの本文へ

米アップル、開発者向け会議WWDCを開催──今年は将来の話はナシ?

2001年05月23日 19時59分更新

文● 林信行

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

米国時間5月21日、カリフォルニア州サンノゼ市のサンノゼコンベンションセンターにおいて、毎年恒例となった米アップルコンピュータ社が主催する、開発者向け会議“Worldwide Developers Conference 2001(WWDC)”が始まった。

5日間に及ぶ同イベントでは例年、アップルが開発中のハード、ソフトなどの最新テクノロジーが紹介されている。WWDCは通常、同社CEO(現在はスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏)の基調講演で幕を開けるが、今年のWWDCでは、基調講演は行なわず、ファイヤーサイドチャット(暖炉脇での談話)というイベントを行なうと案内していた。'97年にも同名のイベントが行なわれ、当時同社アドバイザーだったスティーブ・ジョブズ氏が来場者からの質問に次々と答えていった。

しかし、今年のファイヤーサイドチャットには、来場者からの質問を受け付けるマイクはなく、ジョブズが一方的に話すという形式で、基本的に“MACWORLD EXPO”の基調講演とあまり変わりはなかった。

ジョブズ氏の講演もMac OS Xに比重を置いたものとなった
今回のWWDCで最も重要なのは“Mac OS X”だ。“Mac OS 9”に関するセッションはほとんど行なわれない。ジョブズ氏の講演もMac OS Xに比重を置いたものとなった

ジョブズ氏は登壇すると「これまで何度もこのステージに立ってきたが、今回いつもと違うのは将来のことを一切話さなくていいということだ」と語り出した。Mac OS Xこそがアップルの未来とするジョブズだが、そのMac OS Xは既に3月24日、7ヵ国語対応という形で世界同時に発売している。

今回のWWDCは、これまでのWWDCと異なり、これから出てくる新製品や新技術を解説するのではなく、既に発売されたMac OS Xの詳細を明かしていくという体裁のイベントになるようだ。

もっとも将来の話はしないと言っても、今日の話をしないとは言っていない。ジョブズはこの講演で3つの重大発表を行ない、それに続いてソフトウェアエンジニアリング部門副社長、アビー・テバニアン(Avie Tevanian)氏は2つの新製品を発表した。

液晶オンリーメーカーに転身

ジョブズ氏の1つめの重大発表は、アップルが発売していたCRTディスプレー製品、『Apple Studio Display 17インチ』が21日に発売中止となり、新しい液晶タイプの『Apple Studio Display 17インチモデル』になるというもの。スティーブ・ジョブズCEOは業界でも全製品LCDに移行したのはアップルが初めて(※1)だと強調した。

※1 編集部注:日本ではすでにシャープ(株)がデスクトップとノートのすべてを液晶ディスプレーとしている。

CRTディスプレイ製品に別れを告げたジョブズ氏
ジョブズ氏はこの日、CRTディスプレー製品に別れを告げた。現在のアップル製品では唯一iMacがCRTを採用しているが、まもなく、これも変わってしまうのだろうか?

Apple Studio Display 17インチモデルは、1670万色表示対応のTFT液晶ディスプレーで解像度は1280×1024ドット、視野角は160度。日本での価格は12万8000円で6月中旬に発売予定。なお、アップルはこの発表に合わせて22インチ液晶ディスプレー『Apple Cinema Display』の価格を29万8000円(日本価格。以下同)に、また15インチの『Apple Studio Display 15インチ』を7万5800円に引き下げた。

アップルが発売するディスプレー3製品は、今日からすべて液晶に
アップルが発売するディスプレー3製品は、今日からすべて液晶となる。いずれもTFT方式で、独自のApple Display Connectorを採用する

2ヵ月前倒しでMac OS Xをプレインストール

今回のWWDCのポイントはMac OS Xだが、同OSについても重大な発表があった。当初、アップルは同OSをMacにプレインストールするのは7月以降としていたが、予定を2ヵ月も繰り上げて21日から──つまり日本時間で22日以降に出荷する製品から──Mac OS Xをプレインストールすることが決まったのだ(なお、22日以降にMacを買った人でMac OS Xがプレインストールされていなかった人はMac OS XUp-To-Dateプログラムが適用される。詳細はこちらのページを参照)。

Mac OS Xは今回のWWDCの大きなテーマだ
Mac OS Xは今回のWWDCの大きなテーマだ

なお、買った直後の標準状態ではMac OS 9が起動する設定になっており、設定を変えないとMac OS Xは起動しない。Mac OS Xでは、古い(Mac OS 9以前の)アプリケーションはMac OS Xの“クラシック機能”を使って実行するために、Mac OS 9もあわせてインストールする必要がある。Mac OS 9をインストールした場合、OS 9とOS XのどちらのOSで起動するかは、簡単に設定できる仕組み。

Mac OS Xは2ヵ月前倒しでプレインストール開始
Mac OS Xは2ヵ月前倒しで、今日から全Macintoshにプレインストールする。ただし、デフォルト設定ではMac OS 9が起動する

ちなみにMac OS Xに関してはいくつか重要な統計も発表した。1つは現在出荷されているMac OS Xネイティブのアプリケーションの数が600本以上になったこと。続いては米MACWORLD誌の統計で、同誌読者の84%がMac OS X対応機を持っており、68%がMac OS Xを既に購入または今夏までに購入予定、82%がMac OS X製品が出次第ネイティブ版アプリケーションに乗り換えたいと考えており、マーケティングセグメントによっても違うが、57~82%の読者が現在、愛用しているアプリケーションからMac OS Xネイティブのアプリケーションへの乗り換えを検討しているというものだ。

ジョブズはMac OS Xのユーザーが極めてImpatient(我慢ができない)と説明し、成功を維持する上でも新しいチャンスを掴む上でも、Mac OS Xネイティブアプリケーションを1日でも早く提供することが重要だと力説、これからトップへ向けての熾烈なレースが始まると開発者達をたきつけた。ジョブズ氏はいち早くMac OS Xに対応したメジャーアプリケーションとして米マクロメディア社の『Flash』と米ファイルメーカー社の『FileMaker Pro』を紹介した後、Mac OS Xがバイオテクノロジーの研究者やエンジニアリング系ユーザーなど、これまでMacに疎遠だったUNIX系ユーザー達も惹きつけ始めていることを強調した。

購入体験も新しく

3つめの話題は、アップルが最近バージニア州とカリフォルニア州ロサンゼルスに開店した同社直営店についてだ。ジョブズ氏はバージニア州の店舗の開店準備期間から開店イベントまでの模様を綴ったビデオを披露。ビデオの中ではジョブズ氏自らが店の内部を案内した。

アップル直営店をジョブズ氏自身がビデオで案内
先日開店して話題のアップル直営店(バージニア州)をジョブズ氏自身がビデオで案内した

2つの第1号店舗がオープンしたのは先週土曜日(19日)で、まだオープンから3日しか経っていないが、両店には2日間で7700人が訪れ(予想をはるかに上回るあまりの混雑に入場制限が行なわれたようだ)、935本のソフトを含む59万9000ドル(約7300万円)を売り上げたことを発表した。ジョブズ氏はこれらの直営店が、他のアップル製品取扱店に対してのモデルストアになると語った。

開店から2日間は大盛況で7700人が訪れた
開店から2日間は大盛況で7700人が訪れ、大行列ができたという

なお、ジョブズは直営店をオープンした理由を、現在5%であるMacの米国でのシェアをさらに伸ばし、Macの良さをわかってもらうことと説明しており、年内に合計25店舗をオープンする予定だと語った(なお、ジョブズは5%というシェアは、米国のクルマ市場におけるダイムラークライスラー社とBMW社のシェアをあわせたものを上回っていると力説した)。

Mac OS X ServerとWebObjectsも発表

ジョブズ氏のファイアーサイドチャットに続いて行なわれた、ソフトウェアエンジニアリング担当副社長、アビー・テバニアン氏の講演ではMac OS Xの9つの特徴と共に、同社のPure Java対応のウェブアプリケーションサーバー『WebObjects 5』と新サーバーOS、『Mac OS X Server 10.0』を発表した。

早期のMac OS X開発をよびかけた
テバニアン氏は今こそが未来だと、早期のMac OS X開発をよびかけた

WebObjects 5は、7万2800円(税別)で、6月からアップルのオンラインストア、Apple Storeと7つの販売店で発売する。詳細はWebObjectsのページを参照。Mac OS X Serverは、6月上旬にやはりApple Storeと6つの販売店で発売する。価格は10クライアントライセンス版が5万9800円、無制限版が9万8000円。詳細はMac OS X Serverのページを参照。

なお、WWDCの講演では触れていないが、アップルはこれらの製品と同時に2種類の構成のサーバー機も発表している。

詳細は以下の通り:

  • 『Macintosh Server G4』(34万8000円。Apple Store価格:以下同):
    • PowerPC G4-533MHz、256MB SDRAM、1MB2次キャッシュ、60GB UltraATA/66ハードディスク、133MHzシステムバス、ATI RAGE 128 Pro(16MB SDRAMグラフィックスメモリー装備)、CD-ROMドライブ、USB×2、FireWire×2、10/100/1000Base-SX、Mac OS X Server(Unlimitedクライアントライセンス)
  • Macintosh Server G4(46万8000円):
    • PowerPC G4-533MHz×2、256MB SDRAM、1MB2次キャッシュ×2、60GB UltraATA/66ハードディスク、133MHzシステムバス、ATI RAGE 128 Pro(16MB SDRAMグラフィックスメモリー装備)、CD-ROMドライブ、USB×2、FireWire×2、10/100Base-TX×4、10/100/1000Base-SX、Mac OS X Server(Unlimitedクライアントライセンス)

さらにテバニアン氏の講演では5月末までにスウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語、フィンランド語、中国語(簡体字および繁体字)、韓国語、ブラジルのポルトガル語に対応したMac OS Xも出荷すると発表している。

現在、7ヵ国語対応のMac OS Xだが、5月末に15ヵ国語対応に
現在、7ヵ国語対応のMac OS Xだが、5月末にはさらに8ヵ国語(中国語は簡体中文と繁体中文)に対応する

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン