このページの本文へ

【詳報】『すべてのPCカテゴリーで競争が始まる』――日本AMD発表会

2001年05月15日 23時20分更新

文● 編集部 佐々木千之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

既報の通り日本AMD(株)は15日、都内で『モバイルAMD Athlon 4プロセッサ』『モバイルDuronプロセッサ』の発表会を開催した。発表会では、新機能の説明やモバイルAthlon 4-1GHzを搭載したノートパソコンのデモを披露した。

日本AMDの堺和夫代表取締役社長
日本AMDの堺和夫代表取締役社長

最初に挨拶した日本AMDの堺和夫代表取締役社長は、1月に開催したプレスミーティングで示した、日本AMDの2001年の目標を再掲し、「(“モバイルPCビジネスへの再参入”について)果たすことができた。日本はモバイルPC分野では世界をリードしており、日本のOEMからのインプットを米本社に伝えることが日本AMDの大切な役割だ」などと述べた。

堺社長が再掲した2001年度の日本AMDの目標
堺社長が再掲した2001年度の日本AMDの目標

今後はすべてのカテゴリーで競争が始まる

次に米AMD社コンピュテーション製品グループ デスクトップ・アンド・モバイル・ストラテジックマーケティング担当副社長のパトリック・ムアヘッド(Patrick Moorhead)氏がスピーチした。

米AMD社のパトリック・ムアヘッド副社長
米AMD社のパトリック・ムアヘッド副社長

ムアヘッド氏は「日本販売されるPCの半数以上がノートPCであり、日本は世界でも最も成長の著しい市場だ。その日本で世界最高性能のノートPCプロセッサーであるモバイルAthlon 4を発表できて嬉しい。AMDはPCこそが今後ともデジタル世界の中心であると考えており、PC向けプロセッサーは今後も最も利益を期待できる分野だ。の世界のPCプロセッサー市場におけるAMDのシェアは2001年第1四半期には22%と、'99年のAthlon投入前の12%から倍増した。今回のモバイルプロセッサーの投入によってさらなるシェアの拡大を期待している」と述べた。

さらに続けて「AMDのサンダース会長はつねづね『他社に勝つには、他社を上回る投資をする、生産で圧倒する、技術革新を進める、という3つの方法がある』と述べているが、AMDは技術革新において他社に勝っていくという方針だ。実際過去2年間において、米国での特許出願数はインテルを上回っている」として自社の技術への自信を見せた。

そして今後のプロセッサー計画に触れ「来月には、Palominoコアを使ったワークステーション/サーバー向けのマルチプロセッサー対応製品を発表する。次世代の0.13μmプロセス技術の研究も進めており、第4四半期にはドレスデンのFab30において0.13μmプロセスによる生産を開始する。2002年下半期には、0.13μmプロセスとシリコン・オン・インシュレーター技術を使い、第8世代プロセッサーである“Hammer”ファミリーを含めた製品を発表する」と述べた。

2002年下半期までのロードマップ
2002年下半期までのロードマップ

ムアヘッド氏は「2年前にAthlonを投入したとき、x86プロセッサー市場における“競争”の水準が大きく転換し、プロセッサー技術の進歩が加速した。間違いなくAthlonの登場によってPCの世界は大きく様相を変えたが、その変化はデスクトップPCの分野だけだったために、それ以外のカテゴリーで消費者は、高価格や過剰な利益を得る企業によって不利益を被ることになってしまった。しかし私は今回、そうした限られた範囲の競争の時代は終わったと言うために東京に来た。今後はすべてのカテゴリーで競争が始まることになる」と締めくくった。

機能詳細、3DNow! ProがSSEコンパチに

続いて日本AMDコンピュテーション製品グループ テクニカル・マーケティング部の小島洋一部長が、モバイルAthlon 4とモバイルDuronについて技術説明を行なった。内容についてはほぼ昨日の記事の通りなので、その後に行なわれた質疑応答を含め、細かく説明された部分や新しく分かったことについてお伝えする。

  • Athlon 4では従来のAthlon(Thunderbird)と比べ、同じくロックで最大20%の省電力化を達成したが、これはAthlonと比べて駆動電圧が0.3~0.4V下がったことと新しいアーキテクチャーによる
  • キャッシュメモリーに加わったデータプリフェッチ機能はハードウェアロジックによって搭載した
  • 52命令を追加し、107命令となった“3DNow! Professional”では、インテルのPentium IIIが搭載しているストリーミングSIMD拡張命令(SSE)とコンパチブルになりSSE向けに書かれたプログラムがそのまま利用できる
  • 今回搭載したPowerNow!においては、最低周波数300MHzから最高周波数まで、ベースクロックの0.5倍刻みで設定可能だが、あまり細かくすると切り替え時のオーバーヘッドが大きくなるため200MHz程度が現実的。駆動電圧も細かく何段階にも設定できるが、こちらも細かくするとオーバーヘッドが大きくなるため、5段階程度になる。これらの設定はセットメーカーが決定する
  • “Athlon 4”という名前は第7世代プロセッサーであるAthlonの4番目の製品という意味。1)'99年8月に発表した初代Athlon(0.25μmプロセス)、2)'99年11月に発表した0.18μmプロセスのAthlon、3)2000年6月に発表した2次キャッシュ統合版Athlon(Thunderbird)、4)Palomino
  • モバイルDuronが“モバイルDuron 2”でないのは、バリューPCを求めるコンシューマーは安定したブランド名を好むことが分かっているため
  • モバイルDuronは、Morgan(モーガン:コードネーム)コアで生産するべき製品だが、当初出荷するモバイルDuronはモバイルAthlon 4と同じPalominoコアを使っており、今後Morganコアに切り替える
  • MorganコアのモバイルDuronのダイサイズは、モバイルAthlon 4と比較しておよそ10~15%小さなものになる(Palominoは128mm2であるため、およそ109~115mm2になる)。トランジスター数はおよそ2500万
  • モバイルAthlon 4とモバイルDuronを、省スペースデスクトップPCにも提供する予定
  • 日本ではコンパックコンピュータ(株)と日本ヒューレット・パッカード(株)がモバイルAthlon 4とモバイルDuron搭載ノートを予定している。そのほかのメーカーについては非公表(※1)
  • パッケージは従来のAthlonと同じSocket A(462ピンのPGA)だが、これまで使っていないピンを信号用に使用する
※1 ASCII24が各メーカー広報部に現時点での対応予定を問い合わせたところ、日本電気(株)は検討しているが時期は未定としているほか、松下電器産業(株)、(株)東芝、エプソンダイレクト(株)、富士通(株)では搭載するかどうかを含めて未定、日本ゲートウェイ(株)、ソニー(株)、日本IBM(株)は現時点での予定はないと答えている(回答が得られたメーカーのみを掲載した)。

PowerNow!によるバッテリー寿命延長のグラフ
PowerNow!によるバッテリー寿命延長のグラフ。下が1.4V/1GHz、上が1.2V/500MHzによるもの
モバイルAthlonと従来のAthlon(Thunderbird)との性能比較グラフ
モバイルAthlonと従来のAthlon(Thunderbird)との性能比較グラフ。最大14%性能がアップするという
バッテリー駆動で動作させた場合のパフォーマンス比較グラフ
モバイルAthlon 4-1GHzとモバイルPentium III-1GHz搭載ノートPCを、バッテリー駆動で動作させた場合のパフォーマンス比較グラフ。Athlon 4はオートマティックモード、Pentium IIIはバッテリーモードで動作
平均消費電力の比較グラフ
PowerNow!において、最大パフォーマンスモードとオートマティックモードで動作させたときの、平均消費電力の比較グラフ。ワープロ利用時には消費電力が2W以下となっている。オートマティックモードでは、アプリケーションに応じてクロックと動作電圧が変更されるため、平均消費電力がかなり抑えられるとしている
PowerNow! オートマティックモードのデモ
コンパックコンピュータのモバイルAthlon 4搭載ノート『Presario 1200』で行なわれた、PowerNow! オートマティックモードのデモ。ビデオ画像の再生中、クロックは最低500MHzから1GHzまで細かく変化した

インテルとの競争は拡大確実

AMDはこれまでにも『K6-2+』『K6-III』『モバイルDuron』などでノートパソコン市場に挑戦しているが、パフォーマンス不足や発熱の問題からノートパソコンメーカーが大量採用するには至っていない。今回のモバイルAthlon 4とモバイルDuronは、パッケージがデスクトップ製品と同じでサイズが大きいものの、CD-ROM、FDD、HDDを内蔵するいわゆる“3スピンドルノート”には十分で、デスクトップパソコンの置き換えとしてのノートパソコン市場においては、魅力的なプロセッサーであり採用メーカーも増えそうだ。これで堺社長の言うノートパソコン市場への再参入と、今後発表予定のマルチプロセッサー対応のPalomino/Morganによる、インテルとの競争の拡大は確実だろう。とはいえ、ノートパソコンにおいてはサブノート/薄型ノート向けの製品、サーバー向けでは大規模サーバー向け製品のラインアップはまだなく、ムアヘッド副社長の言うように「すべてのカテゴリーにおいての競争」が始まるには、まだ少しの時間が必要なようだ。

コンパックコンピュータが日本で発表を予定している『Presario 1200』
コンパックコンピュータが日本で発表を予定している『Presario 1200』。モバイルAthlon 4-850MHzを搭載
日本ヒューレット・パッカードが発表を予定している『hp omnibook xe3』
日本ヒューレット・パッカードが発表を予定している『hp omnibook xe3』モバイルAthlon 4-1GHzを搭載

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン