それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実 |
発行(株)小学館プロダクション(http://www.shopro.co.jp/)
本書のカバーには丸い穴が開いていて、そこからペンギンが見えます。実は、カバーを外すと、表紙はペンギンでいっぱいです。Linuxというとペンギンですが、どうしてペンギンになったかの逸話も書かれています。Linux開発者についての、非技術的なことが一気に読める本です。
私がLinuxを使いだしたのは1995年で、もう6年になります。当時噂は聞いていて、どのくらい安定して動くか心配していたけれど、全然問題なく動いてしまいました。周辺機器のサポートは少なかったものの、簡単に入手でき、ソフト開発に必要なものがほとんどそろっていたLinuxはすぐに手放せないものになり、今日まで使い続けています。
Linuxの開発者のLinusは、Linuxの創造者ですが現在まだ31歳です。今日、ちょっと成功しかけると、すぐに企業化を目指したりするのが一般的ですが、彼はそういうことに走らず、ひたすら知的興味に走りました。何カ月もかけてシステムが動くようになっていくことは、プログラマにとって何よりの歓びであり満足です。20年以上前になりますが、私もまだ趣味で8080用のコンパイラを作っていて、動き始めたときは、何ともいえない満足感を味わったものです。
本書は、Linus自身が書いたり話したりした本、つまり自叙伝であることが何よりの特徴でしょう。とはいっても、自叙伝的な雰囲気はしません。Linuxの開発や、Linuxコミュニティが成長していく過程の話が当然多いのですが、家族のこと、さらにフィンランドという国の特徴や、教育制度なども述べられています。フィンランドは世界一インターネットが普及し、携帯電話も世界一普及し、Nokiaという世界最大の携帯電話機メーカーもあります。Linuxがこういう国で生まれたのは決して偶然ではないでしょう。
Linus流で書かれている部分が多く、ハッカーの話し言葉になっていて必ずしも読みやすいとは言えません。自叙伝というよりも、雑誌のインタビュー記事を集めたような感じで、とてもくだけた調子ですが、それが古い権威的なソフト開発体勢とは正反対の、皆でより楽しくオープンソースとしてOS作りをしていたら、そのOSが圧倒的なシェアを占めてしまった流れを感じさせてくれます。
できるだけ専門用語は避けるようにしていても、かなり大量の専門用語が使われていて、コンピュータに詳しくない人がこの本をどこまで読みこなせるのかは疑問です。内容もそれほどまとまっていなくて、いかにもハッカーが思い出すままに書いた感じになっています。本書は、書店の一般書のコーナーにも多数置かれていましたが、ちょっと心配でもあります。こんな感じの若者が、大企業が莫大な金をかけて開発したOSを凌駕するものを作ったということが日本の一般の人々にも少し理解してもらえば、日本も変わるでしょうか。
『それがぼくには楽しかったから』のカバーはこうなっている!
カバーが完全にかかった状態。 |
カバーを少し外してみた。丸い穴が空いている。 |
カバーを全部はずした状態。 |
ペンギンさんがいっぱい。 |
古田島氏による書籍紹介はこちら!!