このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

ブロードバンドの屋台骨 「メトロ」を完全解剖

ダークファイバに灯をともせ!─テクノロジー編

2001年04月14日 05時41分更新

文● ネットワークマガジン編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ダークファイバを借り受けてブロードバンドサービスを提供するプロバイダは、加入者線を収容する電話局舎に各種機器を設置(コロケーション)し、サービスを提供することになる。しかし、高速なメトロの構築には、いくつかの条件をクリアしなければならない。必須条件を大別すると、

  1. 高速・広帯域
  2. 長距離
  3. 高信頼性
  4. サービスの拡張性

などである。しかも、こうした条件を満たしながら、安価にシステムを構築し、迅速にサービスをスタートさせる必要がある。ダークファイバをいかに収益性のあるサービスにつなげていくかという点で、機器の選定は事業を大きく左右するのだ。以下、メトロで用いられている新世代の伝送技術と実際の製品について解説していきたい。

 まず問題になるのが伝送容量の問題である。というのも、ブロードバンドサービスの拡大とそれに伴うデータトラフィックの増大により、既存の専用線やATMをベースにしたメトロの伝送能力に限界が近づいているのである。今、日本で起こっているブロードバンドサービスの状況を考えてもらいたい。たとえば、64kbpsのISDNのサービスであれば、同時に100ユーザーがアクセスしても、バックボーンは6400kbps(6.4Mbps)あれば十分足りる。しかし、640kbpsのADSLサービスの同時アクセスが100ユーザーだったらどうだろう。この場合は、ISDNの十倍の64Mbpsのバックボーンを用意しなければならない。しかも、ダイヤルアップ接続ならともかく、現在CATVインターネットやADSLなどのサービスは基本的に常時接続される。つまり、加入者数に対して同時アクセスするユーザー数の比率は高くなるのだ。加入者が増えるほどユーザーの利用できる帯域は必然的に細くなるため、バックボーンは増速していかなければならない。

 既存の専用線は、TDM(Time Division Multiplexing:時分割多重方式)と呼ばれる多重化技術を採用した伝送方式である。1つの回線を使用する時間によって等分し、複数のアプリケーションやシステムに順番にそのタイムスロットを割り当てることで帯域を共用する。しかし、TDMという方式は通信していない端末に対してもタイムスロットを割り当ててしまうため、基本的に回線の利用効率が悪い。通信している端末にだけタイムスロットを割り当てる統計的時分割多重化装置(Statistical TDM)という方法もあるのだが、この方法だと仮に全端末がいっせいに通信を開始すると、あっという間に伝送遅延が起こってしまうというデメリットがある。

 この結果、現在の光ファイバ網で多く利用されているTDMでの伝送では、光ファイバの伝送能力が生かし切れない。単一のチャネルでも20~40Gbpsが限界と考えられており、帯域幅がうなぎ登りに増えていくと、専用線の伝送速度とコストではプロバイダの採算が合わなくなってくるのだ。

TDMによる伝送図
TDMでは時間ごとに分割したタイムスロットにデータを載せることで、多重化を行なう。たとえば1.5Mbpsを3つのタイムスロットに分ければ、1つのアプリケーションは512kbpsの帯域を利用することができるわけだ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ