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【BrainShare vol.2】キャッシュサーバーの導入で10倍の効率を実現―ヴォレラ社のネットキャッシュ戦略を聞く

2001年03月22日 19時33分更新

文● UpsideJapan 鹿毛正之

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3月18日からの6日間、米ユタ州のソルトレイクシティーにおいて米ノベル社主催の年次カンファレンス“Novell BrainShare 2001”が開催されている。今回、このBrainShareの会場において、米ヴォレラ社のスタッフに、同社の戦略についてインタビューすることができた。

ヴォレラ(Volera)は、ノベルのキャッシュサーバー関連部門がスピンアウトして今年2月に設立された企業だ。現在はノベルの100%子会社だが、通信大手のノーテルネットワークスとコンサルティング大手のアクセンチュアが出資をする予定で、キャッシュアプライアンス市場における主要企業としての足場を固めようとしている。

ヴォレラ社Webサイト
ヴォレラ社のウェブサイト、“MEKE THE NET FLY”(ネットを羽ばたかせる)が同社の合言葉だ

ノベルでは『Internet Caching System 1.3』というウェブキャッシングソフトをラインナップしており、デルやHPといったハードウェアメーカーのキャッシュサーバーに採用されている。キャッシュアプライアンス市場においてノベルは17%のシェア(2000年時点)を握っており、今後はヴォレラを分社化したことで、マーケティングや製品開発の強化を行なっていく予定だ。

ASCII24では今回、ヴォレラ社でマーケティング部門のディレクターを務めるブライアン・フォースティン(Brian Faustyn)氏に、同社の概要と今後の展開についてインタビューを行なった。

ウェブキャッシュ製品だけでなくサービスも提供

[ASCII24] まず、ヴォレラ社がノベルからスピンアウトした理由について教えてください。
[フォースティン氏] ノベルには、20年前にNetWareを開発したドリュー・メイジャー(Drew Major)というエンジニアがいます。彼が4年前に、ウェブキャッシングに関する新しい技術を開発しました。これは単なるキャッシングではなく、ファイル管理システムの発展型といえるもので、ソースの段階からウェブコンテンツをマネージメントするというものです。
その技術をベースにノベルでは『Internet Caching System』(ICS)を発売したのですが、ノベルは企業ユーザーをターゲットとしたベンダーであり、キャッシュアプライアンスの主要ユーザーであるISP業者向けのセールスは得意としていません。そこで、ノベルにとって新しい顧客を開拓するために分社化に至ったというわけです。ちなみにメイジャー氏は現在、ヴォレラのCTO(最高技術責任者)に就任しています。
[ASCII24] ヴォレラの製品ラインナップについて教えてください。
[フォースティン氏] ヴォレラでは、製品とサービスの両方を提供しています。『Excelerator』はICSをベースにした製品で、他社製品に比べ高いパフォーマンスを持っています。ICSは第三者機関による調査において、3年連続で最高のプライスパフォーマンスを持つ製品だと認定されています。
サービスについては“Content Exchange”というサービスを提供しています。これはウェブキャッシングのホスティングを代行するほか、コンテンツの更新や再配信を代行する管理サービスも行なっています。

ターゲット分野の市場規模は2兆円以上!

[ASCII24] ICS(現在はExcelerator)の市場シェアは17%だと聞いていますが
[フォースティン氏] 17%というのは2000年における数字ですので、現在はもう少し高くなっているでしょう。この数字を、わずか1年で達成したということが重要だと思います。キャッシュアプライアンス市場は非常に競争が激しいマーケットであり、そのなかで17%という数字を達成できたことは実にエキサイティングなことです。今後は、これまでUNIXに特化していたインクトゥミ社がインテルベースのサーバーに対応してきますので、競争はますます激しくなるでしょう。
[ASCII24] キャッシュアプライアンス全体では、どれくらいの市場規模があるのでしょうか?
[フォースティン氏] キャッシングサーバーやロードバランサーといったハードウェアの市場規模は、2003年に37億ドル(約4600億円)に達すると予想されています。また、すべてのサービスを含んだ数字では、2004年に220億ドル(約2兆7000億円)になるという予測もあります。
この数字の内訳は、コンテンツデリバリーサービスが約15億ドル、スイッチ製品やロードバランサー製品などが約30億ドル、そしてアクセラレーション製品が40億ドルとなっています。
[ASCII24] ヴォレラがターゲットとする分野は何になりますか?
[フォースティン氏] 中心となるのはやはり、アクセラレーション製品の分野でしょう。ですが、当社では製品とサービスの両方にフォーカスしていきますし、製品に関してもキャッシングサーバーだけでなくスウィッチ製品も対象にしていきます。当社に資本参加するノーテルネットワークスとは、エンド・ツー・エンドのソリューションを提供するための協力関係を結んでいく予定です。

一般企業向けにもサービスを展開―IPOは2年以内に

[ASCII24] ノベルとの今後の関係はどうなるのでしょうか?
[フォースティン氏] ノベルでは企業ユーザー向けの製品を多く出していますが、そこにヴォレラの製品を組み合わせることで、コラボレーションを図ることになります。具体的には、セキュリティー管理インフラの『iChain』にExceleratorのエンジンを組み込むことで、認証の高速化を可能にするといった例が挙げられます。
また、ウェブキャッシング製品はISPだけでなく、企業内のウェブ環境を効率化するのにも役立ちます。従業員向けにウェブコンテンツのキャッシングとフィルタリングを行なうことで、スループットを40%効率化することができるという数字もあるのです。
[ASCII24] 日本を含めた海外への展開について教えてください。
[フォースティン氏] ヨーロッパ市場に関しては、ヴォレラが自社でサービス展開を行なっていきます。日本市場については、ノベル(株)と良好な関係を保っており、同社を通じてセールスやサービスの提供を行なっていく予定です。
[ASCII24] 株式公開(IPO)についての見通しはいかがでしょうか?
[フォースティン氏] ヴォレラは、IT分野におけるネクストウェーブを捕まえるのに絶好のポジションにいると考えています。現在ハイテクセクターは全般的に不調ですが、18~24ヵ月以内にはIPOが果たせるのではないかと思います。

ハイテク不況は心配なし―携帯への対応も検討中

[ASCII24] ハイテクセクターが落ち込んでいる現状について、ヴォレラではどのように分析していますか?
[フォースティン氏] 当社では、それほど深刻には受け止めていません。たとえばウェブホスティングを利用している企業を見た場合、いわゆるドットコム企業は全体の1割程度に過ぎないのです。インターネットのバンド幅のほとんどは、普通の企業が使っています。ですので、ハイテクセクターが落ち込んでいるからといって、キャッシュアプライアンスの需要が下がっているわけではないのです。
今後、企業ユーザーはますますインターネットをビジネスに活用するようになるでしょう。そのとき、1台のプロキシサーバーを導入することで、ウェブサーバー10台分の効率を得ることが可能です。そのため、キャッシュアプライアンスへの需要はますます大きくなってくることでしょう。
[ASCII24] 最後にワイヤレスへの展開についてお伺いします。日本では5月にも次世代携帯電話のサービスが開始しますが、そうなるとインターネットのトラフィックはますます増加し、キャッシュアプライアンスの需要も大きくなると考えられます。ヴォレラではワイヤレス分野への展開をどのように考えているのでしょうか?
[フォースティン氏] インターネットに対応したワイヤレス市場は、キャッシュアプライアンスにとってパーフェクトな場所だと考えています。現在のところ、特定の携帯電話キャリアと話をする段階には至っていませんが、WAPの動向は以前からトラッキングしています。ヴォレラでも今後、携帯電話などのワイヤレスに対して明確な戦略を立てていく予定です。

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