米国時間の2月26日に“Intel Developer Forum Spring 2001”が始まった。場所は、シリコンバレーの中心であるSan Jose市のSan Jose Convention Centerである。
ハイエンドPCとローエンドPCのクロック向上の予想グラフ。グラフの上がハイエンドマシンのCPUクロック、下の赤い線がローエンドのクロックの向上を表わす。その間にある黄色い線は、アプリケーションが必要とするCPUクロックの最低ラインを表わす |
Intel Developer Forum(以下IDFと略す)は、年2回春と秋に行なわれるインテル製品関連の技術コンファレンスである。IDFは基本的に、インテルの製品を応用して開発を行なう開発者向けに最新技術などを講習会形式で提供するというものなのだが、インテル社幹部が行なうキーノートスピーチなどもあり、インテルの今後の方向性が示されたり、インテルのサードパーティによる展示会場があるなど、対外的なアピールの場という要素も強い。
今回のテーマは“Expanding the Power of the Net”と、やはりインターネットを含むネットワークを強く意識したものになっている。今回のIDFは、26日から3月1日まで開催されるが、明日27日は午前中にキーノートスピーチが行なわれたあと、カテゴリごとにコンファレンスセッションが同時進行で開かれる。メインの会場は、San Jose Convention Centerなのだが、周辺のホテルもコンファレンス会場として使われる。全体ではおよそ5000人が参加する予定という。この数字を聞くと大したイベントではないような気がするが、IDFは参加費用が1000ドル(約11万5000円)以上する有料のコンファレンスなのだ。それにこれだけの人が集まるのだから、さすがインテルという感じではある。
だが、米国経済後退の波は、このIDFにも押し寄せているように思える。昨年、参加者には資料などを入れる豪華なカバン(もちろんIDFのロゴ入り)が提供されたのだが、今年はなんと布の手提げ袋になっている(ただしアメリカンサイズの大きなベストが入っている)。筆者は、昨年の帰りに大きなカバンを持ち帰るのに苦労したので、今年は荷物を減らして来たのだが、これならそんなこともしなくて良さそうである。買い物にでも使ってレジ袋いらない運動に参加するか……。
さて、米国時間の今日(26日)は、プレス向けのセミナーが行なわれた。内容は今回のコンファレンスの概要やインテルの現状などの説明が主なところ。その説明の中の“Desktop Products Overview”では、Pentium 4関連の話があったのだが、インテルの予想によれば、2003年には、最高速度のPCは約5GHz(!)となるのに対して、最低価格のPCのクロックは、1GHz程度にしかならないという。また、このとき、アプリケーションが要求するCPUクロックは2GHzあたりになるらしい。
確かにこれだけ(4GHzもある)速度差が出てしまうと、下に合わせれば、ソフトウェアは進歩できないし、上に合わせれば、ソフトウェアが売れないという状況を生みだしてしまう。いままではこの上下の格差がユーザーをより高クロックの製品へと追い立てる原動力となっていた。「ワープロや表計算を快適に使いたい」ってやつである。
デスクトップ用CPUの今後の展開。Pentium 4は、i850チップセットとの組合せで、ハイエンドを受け持ち、メインストリームは、今年後半からPentium 4+Blookdaleチップセット(SDRAM/DDR SDRAMをサポートする)が入り込み始める |
問題はまず、大多数のユーザーは、この4GHzの差のどのあたりにいるのか? ということであろう。おそらくPCの最低価格は、今と比べてそれほど大きくは下がらないだろう。だとすると最高価格、インテルでいえばPentium 4の最高クロックの製品の価格がどのあたりに落ち着くかということが問題なのである。AMDが(おそらく2003年時点でも)安値攻勢をかけているので、高値安定ということはないだろうが、そんなに安くもならないだろう。その価格差が大きければ大きいほど、ユーザーは上位機種へアップグレードすることをためらうはずで、場合によっては、下のクロックにユーザーが集中する状況にもなりかねない。
そうした傾向がはっきりと出てしまうと、今度はソフトハウスがソフトウェアスペックを低いクロックに合わせざるを得なくなる。すると、高いCPU性能を使った高速処理を前提とするソフトウェアを作る(あるいはそういう分野のプログラムを開発する)といった方向は難しくなってしまう。これに米国経済の後退によって高いPCが売れないというようなことが重なるとすると、しばらく停滞した時期が訪れるという可能性もある。ちょっと不安にも思えるシナリオだ。
0.13μmプロセスで製造されたトランジスタの拡大写真 |
さて、説明にあったもう1つは“Manufacturing and Process Technology Innovation”という半導体製造などに関する話だ。次のプロセス技術である0.13μmプロセスは、すでにPentium IIIコアを使った製造テストが完了。0.13μ版Pentium 4の製造は、今年の第4四半期に開始する予定で、同時に銅配線を採用する。
歴代のシリコンウェハーを並べたもの。現在は200mm(8インチ)で、次は300mm(12インチ)を予定、2014年には、18インチつまり450mmになると予想されている |
インテルでは、2002年には現在の直径200mmのシリコンウェハーから、300mmというさらに大きなウェハーへの移行を開始する。これと製造プロセスの0.18μmから0.13μmへのプロセス縮小で、高い生産性を確保する狙いだ。また、ここでは、次期Pentium 4である“Northwood(ノースウッド)”(※1)と思われるデバイスのパッケージが公開された。
※1 現在のPentium 4(Willamette)を、0.13μmプロセスに移行したものとされる。パッケージのピン数も現在の423から478に変更されるとみられる。上がNorthwoodと思われるデバイスのパッケージ(下は現行のPentium 4)。もちろん中身は入っていないだろうが、これが次のPentium 4のカタチである |
また、今回のIDFでは、次期Itaniumである“McKinley(マッキンリー)”(※2)が公開される。Itanium普及の本命ともいえるMckinleyの登場で、IA-64の普及に弾みがつくかどうか。特にIDFのキーノートスピーチでは毎回、CPUを高クロックで動作させるデモが行なわれるが、今回はどこまで高いクロックをデモするか(前回はPentium 4を使って2GHzをデモ)、それはどのCPUで行なうのか? がポイントの1つでもある。明日は、注目のキーノートスピーチの概要などをレポートする予定。
※2 いまだに正式出荷されないItaniumコア(Merced)に続く、第2世代のItaniumコア。Itaniumの“本命”として、サーバーメーカーの中にはMcKinleyの出荷まで様子見を決め込んでいるところもあるという。26日には、近所で米NVDIA社のプレスコンファレンスも開かれた。これはMacworld Expo/Tokyoで発表されたNV20チップ(Geforce 3) |