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アナログ・デバイセズ、GSM向け新チップと3G向けDSPコア採用計画を発表

2001年02月20日 21時25分更新

文● 編集部 佐々木千之

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アナログ・デバイセズ(株)は20日、都内で発表会を開催し、GSM方式(※1)携帯電話向けのダイレクトコンバージョンRF(※2)シングルチップ『Othello One』(オセロ ワン)と、米インテル社と共同開発した技術“Frio”(フリオ)に基づく、3G携帯電話向けDSPコアの計画を発表した。いずれもフランスのカンヌで21~23日(現地時間)まで開催中の携帯電話関連のトレードショー“2001 3GSM World Congress”で発表されたもの。

※1 GSM(Global System for Mobile Communications):ヨーロッパで利用されている、900MHz帯域を使用するデジタル携帯電話方式

※2 ダイレクトコンバージョンRF:携帯電話で一般的な増幅回路部分では、スーパーへテロダイン方式が使われている。これは、搬送波(GSMでは800~900MHz台)を、取り扱いやすい数百kHzの中間周波数(IF:Intermediate Frequency)に変換し、増幅やフィルタリング処理などを行なった後、デジタル信号処理を行なうベースバンド部に信号を送る仕組み。これに対して、中間周波数に変換することなく増幅や各種処理を行ない、搬送波からダイレクトにベースバンド部に送る方式をダイレクトコンバージョンRFと呼んでいる。

『Othello One』を搭載したサンプルボード
『Othello One』を搭載したサンプルボード

Othello Oneは、'99年9月に発表された第1世代のダイレクトコンバージョンRFチップセット『Othello』の次世代製品で、第1世代Othelloの機能を1つのチップに集積した。これによって、携帯電話における無線回路部分の部品点数を40%削減できる。また、スーパーへテロダイン方式で使用される、セラミック製IF弾性SAW(Surface Acoustic Wave)フィルターが不要になるなど、コスト低減にもつながるとしている。Othello Oneは、GSMだけでなくGPRS(※3)、EDGE(※4)といったGSM系のデータ通信標準に対応しており、データレートは最大384kbpsをサポートしている。さらに1チップになったことで低消費電力化され、待ち受け時間1000時間に及ぶ携帯電話も実現できるという。

※3 GPRS(General Packet Radio Service):GSMにパケット通信サービスを付加したもの。

※4 EDGE(Enhanced Data GSM Environment):GPRSのデータ通信速度を強化し、最大384kbpsとしたもの。

スーパーへテロダイン、Othello、Othello Oneの比較表
スーパーへテロダイン、Othello、Othello Oneの比較表。下段上が無線部分のモジュール面積、下が無線部分の部品点数
ワイヤレス・コミュニケーション フィールド・プロダクトライン・アプリケーション・エンジニアのカピル・カムラ氏
ワイヤレス・コミュニケーション フィールド・プロダクトライン・アプリケーション・エンジニアのカピル・カムラ氏

Othello Oneは現在携帯電話メーカーの型式認定テスト向けに出荷中で、今年半ばにはサンプル出荷を開始できるとしている。同社のワイヤレス・コミュニケーション フィールド・プロダクトライン・アプリケーション・エンジニアのカピル・カムラ(Kapil Kamra)氏によると「ダイレクトコンバージョンRFチップは、ごく最近になって米テキサス・インスツルメンツ社や米コネクサント社からも発表されたが、当社はすでにOthelloチップを出荷した実績があり、今回のOthello Oneによって、より進んだシステムを携帯電話メーカーに提供できる」としている。

また、2000年に米インテル社と開発発表した、CやC++言語などの高級言語でプログラミングが行なえる“Frio”アーキテクチャーに基づくDSPコアを、アナログ・デバイセズの3G携帯電話向けベースバンドプロセッサー『SoftFone』ファミリーに搭載する計画も明らかにした。この新DSPコアは最大600M(メガ)MACS(※5)で、SoftFoneが組み込まれた携帯電話やPDAなどのワイヤレスインターネット機器は、電話、ウェブブラウジング、ビデオやオーディオなどのマルチメディアコンテンツを利用できるという。

※5 MACSは1秒間に積和演算を100万回実行できるという処理速度単位。

アナログ・デバイセズが今回発表したOthello Oneは日本市場向けの仕様ではないが、松下通信工業(株)や三菱電機(株)などをはじめとして欧州市場向けに携帯電話を生産しているメーカーが日本に多いため、日本でも発表会を行なったと見られる。同社はこのOthello Oneを現在の2.5G携帯電話向けとして最も進んだチップセットとして、年間5億台以上といわれるGSM形式の携帯電話市場をねらう。

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