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信長の野望 嵐世記

信長の野望 嵐世記

2001年02月10日 04時00分更新

文● 中村聖司

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信長の野望 嵐世記

コーエー

1万1800円

コーエーの「信長の野望」シリーズ第9弾「信長の野望 嵐世記」がついに発売された。同シリーズは、発売するたびに10万本を軽く上回る大ヒットを記録するという、名実ともに日本のPCゲームを代表する超ロングランのSLGだ。腕まくりをして発売日を待ちかまえていたファンも少なくないだろう。本稿では製品版を用いて、詳細なレビューを行った。ぜひともご覧あれ。

「信長の野望 嵐世記」のメイン画面。今回の内政はコマンド選択制だが、内政が進むにつれて、城郭や城下の街並みが発展し、人の往来が激しくなるなど、大まかだが視覚的に成長具合がわかるようになっている。

 信長シリーズは、2作ごとにゲームシステムに大幅な修正を図るという不思議な法則がある。もう少し具体的に言うと、奇数の作品に新しいゲームシステムが盛り込まれ、偶数の作品では基本的なシステムはそのままに徹底的に磨き抜く。そしてまた次作では、新しいゲームシステムが盛り込まれる、といった成長の過程を経てきているのだ。

今回のシナリオは全4本。信長より1世代前の英雄豪傑が活躍する1534年「信長誕生」シナリオがいいぞ。

 時系列で並べると、「信長の野望」と「全国版」、「群雄伝」と「武将風雲録」、「覇王伝」と「天翔記」、「将星録」と「烈風伝」という分類になる。それぞれのゲームシステムについては詳しく述べないが、たとえば、将星録で新しく盛り込まれ、烈風伝で磨かれたゲームシステムは、日本地図を丸ごと箱庭化して成長過程が視覚的にわかる内政システムと、個々の戦闘に焦点を当てた小規模な局地戦を連続して楽しむ合戦システムがそれにあたるだろう。信長シリーズのこの法則を知るファンにとっては、第9作「嵐世記」が前作の烈風伝とはまるで違う、斬新な作品に仕上がるのは明々白々だったわけだが、さて、どうなったのか。これまでASCII DIGITAL BUYERの嵐世記情報をチェックしてきた方には、とっくの昔に知り尽くした情報になるが、製品版での最終評価も含めて、もう一度簡単にまとめておこう。



内政は味わい深いコマンド選択制

内政でかなり役立つのが、小マップ右にひっそりと用意されている「報告」コマンドだ。報告を実行すると、軍師しか把握していない情報を知ることができる。

 まずは内政から見ていこう。嵐世記の内政は、メイン画面を見てもらえればわかるように、天翔記以前のコマンド選択制を採用している。このいわば“旧制復活”については、ファンの間で賛否まっぷたつに分かれているようだ。個人的には、長期間に渡ってシナリオや大名を何度も変えながらプレイするには、コマンド選択制のほうが適している気がする。将星録と烈風伝の箱庭内政も、視覚的なおもしろさがあり、開墾や商業、建築といったユニットたちのきびきびとした動きも見ていて実に心地よかった。ただ、序盤こそ夢中になれるこれらの要素も、ゲーム後半以降の合戦メインのゲーム展開になると、ちょっとした“たるみ感”が感じられた。



ある程度領土が広がってきたら、軍団長を立てた方が効率よく国を治められる。血縁武将なら軍団長として直接命令を下せるが、通常の武将でもさほど無駄なく仕事はこなしてくれるので、そこまでこだわる必要はない。
登用担当者は最低ひとりは必ず任命しておこう。優秀な武将をみすみす逃す手はない。

 嵐世記では、コマンド選択制のほか、これまでの城単位から国単位での内政になり、さらに天翔記以来の1国以上の領土をひとりの配下武将に任せて、権限委譲できる大型委任システム「軍団長システム」が復活した。これにより、大名であるプレイヤーが命令すべき内政作業量は、わずかで済むようになった。かといって、内政フェイズでプレイヤーの仕事がなくなったわけではない。嵐世記では、通常の内政作業に代わって、国人衆や寺社衆、海軍衆、忍者衆、といった諸勢力との交渉が、大きなウェイトを占めるようになっているのだ。



おっと、領内の警戒に当たらせていた武将が城下を巡回しているのを発見。「うむうむ、ご苦労」

 序盤は、資金的にも人材的にも乏しいため、「大したことないでしょう」と無視してしまいがちだが、独自の拠点と勢力を持つ国人衆や寺社衆は、合戦で敵にまわると、単独で城を陥としてしまうほどの威力を備えている。おそらく、うかつなプレイヤーの嵐世記の初ゲームオーバーは、国人衆を甘く見ていたことが原因になるはずだ(笑)。断言するが、嵐世記で大名がまず対処すべき問題は、国内の国人衆の懐柔である。敵国に攻め入る際も、あらかじめその地の国人衆を手懐けておく戦術は、基本中の基本といえよう。



おおっと、今度は同じく警戒に当たっていた柴田勝家が、領内で暗躍していたくのいちを発見。勝家、まるで容赦なくかぶと割りに。
忍者同士の戦闘もあり。伊賀衆の忍者は精鋭揃い。何はなくとも交流を深め、関係を親密にせよ。

 ちなみに、諸勢力との関係パラメータは「仇敵」「敵対」「疎遠」「友好」「親密」の5段階。友好だからといって安心していると、敵国との関係が親密だったりする。そうなると合戦の際に裏切られるので、必ず親密まで上げておきたい。余談だが、仇敵は検地スキルを持つ武将で、国人衆の石高をがりがり削っていくとなる場合がある。通常は、国人衆は第3者の立場として、味方、敵、中立側として参戦するだけだが、こうなると国人衆が大名と同じように、合戦フェイズに攻撃してくるようになる。もっとも、検地コマンドを使うのは国内の内政をしつくし、それでも石高が足りない場合に限られるので、そのころにはおそらく十分対処できるほどの戦力が整っているはずだ。



「とにかく、くのいちを借りたい!」と血迷ったことを抜かし、ついにヘンタイがばれた親父。忍者衆との関係が親密になると、このユニークな選択肢が表示されるようになる。
領土が大きくなっていくと、それにともない取引可能な商人の数も増えてくる。規模の大きい商人と早く昵懇(じっこん)になって、優秀な武将で値切りまくるのが得策である。

 そのほかの諸勢力もなかなか侮りがたい。たとえば、海軍衆は、貿易スキルをもった武将がいないからといって放置していると、倭寇のように国内を荒らし回り、内政パラメータをずたずたにされる。ともあれ、この諸勢力システムは大名の内的な苦労を巧みに表現しており、地味になりがちな内政フェイズに凄まじい緊張感をもたらすことに成功している。慣れるまでは、それこそ国盗りどころではないが、それもまたおもしろい。



敵海軍衆との水上決戦のために、金を無心に来た海軍衆。ここは親分ぶりを発揮して倍額を提供。

 ところで、内政フェイズのグラフィックスとサウンドも見事だ。メイン画面を見て貰えれば一目瞭然だが、実に細微に渡って丁寧に描き込まれた芸術性の高いグラフィックスは、ほれぼれとするぐらい見事な仕上がりだ。季節ごとに模様替えされる和風な演出も、こだわりが感じられていい。サウンドに関しては、お馴染みの信長節というかコーエー節を堂々と響かせており、元亀天正というささくれ立った時代の雰囲気を、ひびきのいい爽やかな音で余すところなくたっぷり聴かせてくれる。
 内政フェイズに関して特筆すべきところは、以上のような感じだが、天翔記以来のザクザク展開していく内政フェイズは実に楽しい。シリーズ最高傑作に仕上がっているといっても過言ではないだろう。



すると突如、海戦画面に切り替わった。
海戦は「三國志」の一騎打ちのような交互の削り合いで展開していく。倍額払うと、海戦に勝った際に家宝を貰えることがあるので、余裕があるなら狙っていくべきだろう。
国人衆は長く親しくつきあっていると、自ら仕官を申し出てくる。登用すると他家の者が新たに国人衆を率いるので、それまでの親密関係はなくなる。微妙なところだ。
これが検地。国人衆との関係がみるみる悪化するので、検地をやる際は、完全に削り取って消滅させてしまう気でやろう。

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