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「Napster、Gnutellaは次世代の不正コピー」――BSAのソフトウェア著作権侵害状況説明会より

2001年02月08日 16時41分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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ビジネスソフトウェアアライアンス(以下、BSA)は8日、現在のソフトウェア著作権侵害の状況および米国や日本でのBSAの活動について関係者向けに説明会を行なった。

BSAの権利執行活動担当副会長のKruger氏(右端)と、日本担当顧問の石原氏(左端)

米国ではインターネットを介した不正コピーが増大

BSAは、コンピュータソフトウェアの権利保護を目的に世界65ヵ国で活動を展開している非営利団体。法律によるソフトウェア著作権保護の支援や、ソフトウェア著作権保護を強化する政策へのはたらきかけ、ソフトウェア著作権に対する認知向上のための教育などを中心に活動を行なっている。

BSA権利執行活動担当副会長のRobert M. Kruger(ロバート・クルーガー)氏は、不正コピーの種類について説明した。米国での不正コピー率は25%で、売上損害額は30億ドル(約3482億円)にのぼるという。まず企業など組織内で行なわれる不正コピーについては、その組織の予算の都合、あるいは管理者の不注意、社内規則に違反する社員の存在などが主な原因だという。また、海賊版など流通網における不正コピーは減少傾向にあるが、これは既存の流通網に変わりインターネットを介した不正コピーが増えているためだとしている。

最近は、米国を中心にインターネットを利用した不正コピーが増大しているという。これは不特定多数の顧客層に不正コピー品を提供できるほか、また伝送速度の高速化によって大容量データを短時間で送信できる、圧縮技術の発達により少量のデータ容量で受け渡しが可能、といった技術の進歩も要因となっているようだ。さらにインターネットを介した場合、既存の流通網を利用した場合に比べ当事者の特定が困難であることも要因に挙げられている。

インターネットでの不正コピー例としては、1対1でのやり取りが中心となる電子メールを介したものや、やり取りするファイルサイズにある程度限りがあるメーリングリストや電子掲示板を介したもの、初心者には操作が難しいFTPサイトを介したものなどは比較的数は少な目で、不正コピーを扱う通信販売サイトや、無償でソフトをダウンロードできるサイトなど、ウェブページを介した不正コピーが最も重大な問題となっているという。特に『Napster』や『Gnutella』などのファイル共有システムは「不正コピーサイトの次世代的なものだ。ファイルをユーザーが自由に交換できるフレンドリーなものだが、著作権保護という意味ではフレンドリーではない」(Kruger氏)としている。また、オークションサイトで新規ソフトが標準価格の数10分の1の価格で取引されていることも問題だという。

BSAは、これらの不正コピーへの対応策として、裁判所命令による差し押さえや損害賠償請求による不正コピーの抑止を働きかけている。また、寄与侵害および代位責任についても同様に働きかけを行なっている。これは、侵害行為を行なっているものに対し、その行為を支配する権利や能力を有しているものや、侵害行為について利害関係を有するものが代位責任を負うというもの。例えば、企業の社員が侵害行為を行なうと、その雇用者も責任を負うというもので、不正コピーサイトが存在する場合、そのサイトのISPも責任を負う。また、オークションサイトで著作権を侵害するやり取りがあった場合、そのオークションサイト管理者側が責任を負う。

ただし、これはISP側にリスクがかかるため、ISP側の責任に規定を持たせる“オンライン上の侵害行為に対する通知およびテイクダウン”が存在する。著作権保有者側が不正コピーサイトのISPに侵害行為を通知し、ISP側がその不正コピーサイトを閉鎖/削除した場合は、一定のISP側の責任を制限するというものだ。

Napster訴訟は、Napsterのユーザーが行なう侵害行為に対して、Napster側が寄与侵害を起こしているという告発となっている。Napsterはユーザーにファイルを共有させるために集中型サーバーシステムを用いているが、Gnutellaにはサーバーが存在しないため、活動拠点が明確ではなく責任の所在の判断については現状の法律では難しい部分があるという。Kruger氏は「技術そのものに対して異を唱えているのではないが、その技術が著作権を侵害するものであれば断固反対する」としている。

米国では著作権に関する憲法改正も行なわれており、非商業的な侵害行為でも告訴可能となり、また著作権侵害に対する刑事罰を強化したという。また、ドメイン名登録者の連絡先情報を収録したデータベースも用意されている。

日本での最も大きな問題は組織内の不正コピー

また、BSA日本担当顧問の石原修弁護士が日本におけるBSAの活動に関して説明した。BSA日本はACCSと連携して著作権に関する教育や啓蒙活動を行なっている。

日本での'99年度不正コピー率は31%で、損害額に換算すると1060億円になるという。日本では組織内における不正コピーが問題の中心で、インターネットを介した不正コピーはパソコンの普及率が米国より低いこともあって米国ほど急激に増大はしていないが、それでも次第に問題になりつつあるという。

BSA日本は2001年度の活動方針として、TVや新聞、雑誌などのメディアを利用した不正コピー撲滅キャンペーンを行なうほか、中小企業経営者向けに著作権に関するセミナーを実施する。さらに2000年度より設けている組織内不正コピーに関する通報受付窓口“BSAホットライン”についてもさらに積極的に展開していくという。日本は法律上、証拠がなければ告発できないため、この証拠をいかに集めるかが課題だという。

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