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NTT、一般向けワイヤレスブロードバンド実験を開始、渋谷が光ファイバーと無線でつながる!

2001年01月25日 21時13分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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東日本電信電話(株)(以下、NTT東日本)と日本電信電話(株)(以下、NTT)は25日、光ファイバーと高速無線技術を利用した“パーソナル・ワイヤレス・ブロードバンド”『Biportable(バイポータブル)』のトライアルを3月から8月まで東京/渋谷駅周辺で実施すると発表した。

トライアルで利用される無線基地局。幅229×奥行き177.5×高さ277.5mm。消費電力は100Wと白熱電球程度

同トライアルは、NTT東日本の光IPネットワークと、NTTアクセスサービスシステム研究所(以下、AS研)が開発した高速無線技術“AWA”を利用したもの。Biportableとは、Broadband IP Platform with the Optical & Radio Technical Abilityの略称で、光ファイバーと無線の融合による新しいブロードバンド時代の幕開けを表わすための造語。

Biportableのトライアルシステム構成は、光ファイバーをアクセスラインとする広帯域ネットワークを構築し、映像ストリーム配信サーバー、アプリケーションサーバー、インターネット接続サーバー、ネットワーク管理サーバーをNTT東日本ビル内に設置、これらのサーバーと、トライアルエリア内の家庭やオフィス、タウンスポットなどに設置されるモニター用端末を光ファイバー網でつなぐ。

トライアルエリア内の家庭やオフィス、タウンなどの各スポットの屋内部分には、AS研が開発したAWA(Advanced Wireless Access)を導入している。AWAは、MMAC(マルチメディア移動アクセス推進協議会)、ARIB(電波産業会)、およびETSI(欧州電気通信標準化機構)-BRAN(Broadband Radio Access Networks)に準拠した無線アクセス方式。屋内高速通信用周波数5GHz帯を利用しており、最大36Mbpsの高速伝送が可能。このAWA技術により、屋内配線を必要とせず、全てのスポットにおいて同一端末をシームレスに利用できる。家庭やオフィスでは無線LANを構築可能。

AWAの36Mbps帯域は、端末の状況に合わせて“上り”“下り”を柔軟に設定できる。例えば、動画を発信する場合には、帯域設定を“上り”を高速に、“下り”を低速にしたり、TV会議などの双方向映像コンテンツを利用する場合には、“上り”“下り”とも高速帯域を設定したりできる。また、1つの無線装置(基地局)で半径100mをカバー、最大122ユーザが同時に接続できる。

また、無線区間で利用する帯域を保証する“最低帯域保証”を実現し、動画などのリッチコンテンツをストレスなく利用できる。基地局の認証と、端末のIPアドレス設定をネットワーク側で自動的に行なう“位置管理機能”により、タウンスポット、オフィス、キャンパス、家庭など、さまざまな屋内スポットで同一端末を設定変更せずにシームレスに利用できる。

光IPネットワークは、アクセスラインに光ファイバーを利用し、ギガイーサ(Gigabit Ethernet:1Gbps)技術とファストイーサ(Fast Ethernet:100Mbps)技術を利用することで大容量のデータ通信が可能。これにより無線区間の36Mbpsデータをスムーズに送受信できるという。NTT東日本ビル内に設置するサーバーは、最新のストリーム配信技術に対応、数Mbpsクラスのリッチコンテンツを配信できる。また、課金/認証機能も用意されている。端末同士の直接通信も可能なほか、IP-VPNによるセキュリティー機能を提供するため、家庭やタウンスポットから企業内ネットワークへもアクセスできる。

今回のトライアルでは、基地局40台(一般家庭約10台/オフィス約10台/タウンスポット約20台)、およびモニター端末400台(ノートPCに装着して利用する無線カード型端末200台/PDA一体型端末200台(5月より))を用意する。期間は3月~8月で、場所は東京/渋谷駅周辺を中心としたオフィス、タウンスポット、一般家庭。

トライアル用の無線カード型端末。ノートPCに装着して利用する
ノートPCに装着した様子。ノートPC画面にはBiportableポータルサイトが映し出されている。写真のノートPCは松下の『人』だが、実際にトライアルで利用されるPCはB5サイズのサブノートになるとのこと

参加モニターは、継続モニターとして渋谷駅周辺のネットベンチャー企業の勤務者、インターネットヘビーユーザー、大学生、主婦などを選定、この継続的モニターはカード型無線端末およびPDA一体型端末を利用する。なお、渋谷駅周辺のタウンスポットを中心に体験コーナーが常設され、参加モニター以外の一般ユーザーも利用できる。

トライアルで利用されるPDA一体型端末のモック。本体仕様は未定とのことだが、OSにはWindows CEが採用される見込みで、PocketPCに近いものになるようだ。端末を一から開発していくと時間がかかりトライアル開始が遅れてしまうため、なるべく既存のOSや筐体をベースにし、トライアル用にカスタマイズする予定という。本体機能としては、動画の閲覧やメール送受信、インターネット接続、電子手帳、メモといった機能を搭載する。トライアル機にはないが、商用化の際はデジタルカメラも標準装備するとしている

トライアル期間中は、40社以上の企業がトライアル向けにコンテンツやアプリケーションを提供する。コンテンツは、モニターや一般参加者が双方向でつながるTV会議や遠隔授業などのインタラクティブ(双方向)型コンテンツ、映画や音楽、スポーツ、タウンガイド、ショッピング情報などを配信するオンデマンド(配信)型コンテンツ、掲示板への動画投稿などモニターや参加者自身がコンテンツを発信できる発信型コンテンツ、IP-VPNやPIMといったアプリケーションコンテンツなど、25ジャンル70番組が用意される。

NTT東日本は、トライアルの企画と運営、およびブロードバンドIP網の構築とビジネスモデルの検討を行なう。NTT(AS研)は、無線装置や無線端末の開発と、AWAの技術的な検証 、トライアルでの技術サポートを担当する。技術協力会社は松下電器産業(株)と松下通信工業(株)。端末が設置されるタウンスポットは、渋谷TSUTAYA、エクセルシオールカフェ、タワーレコード渋谷店、ビッグエコー表参道店、大井競馬場(4月より)など。

コンテンツやアプリケーションの提供などを行なうパートナー企業は、味の素(株)、(株)アルトビジョン、(株)イー・ゲート、(株)IMAGICA、(株)インプレスコミュニケーションズ、映像塾、(株)オルカビジョン、(株)カミングスーン・ティービー、(株)ギャガ・コミュニケーションズ、キンコーズ・ジャパン(株)、グランスフィア(株)、(株)ケアネット、慶應義塾大学メディアコミュニケーション研究所、サッポロビール(株)、(株)サテライトニュース、(株)ジェイティービー、(株)渋谷ツタヤ、(株)渋谷マークシティ、情報化メディア懇談会、(株)世界文化社、(株)セルリアンタワー東急ホテル、(株)第一興商、タワーレコード(株)、帝拳(株)、(株)デジタルスケープ、デジタルハリウッド(株)、東映(株)、東京急行電鉄(株)、東京シティ競馬、東京メトロポリタンテレビジョン(株)、(株)東京リーガルマインド、(株)ドトールコーヒー、(株)ナガセ、(株)中谷彰宏事務所、(株)二玄社、(株)ネオテニー、原宿クエスト、(株)パルコ・ドット・ティーヴィー、ぴあデジタルコミュニケーションズ(株)、(株)ビーマップ、(株)ビジネス・ブレイクスルー、フォーリンティブィ(株)、(株)読売新聞社、(株)リクルート。

また、トライアル開始に伴い“Biportable研究会”も発足、有識者およびトライアル参加企業などが参加し、コンテンツやアプリケーションの検討を行なうという。なお、トライアルモニターや一般ユーザーからも、コンテンツやアプリケーションに関するアイデアをトライアル用ウェブページで募集するとしている。

本日都内で行なわれた発表会で、NTT東日本代表取締役常務取締役法人営業本部長の森下俊三氏は、「36Mbpsの高速無線装置の開発に成功した。これを使うと建物の中の高速環境を実現できる。高速環境が整うことで、従来と異なる新しいコンテンツや利用方法、ビジネスモデルが生まれる。IT社会の発展にもつながるだろう。36Mbps無線技術は早期に商用サービスとしたい。また、現在行なっている10Mbpsの光IP通信網サービスの試験提供に続き、今春より100Mbpsの光IP通信網サービスも試験提供できるよう準備を進めている」

「一方ISDNはどうするか。現在6000万ユーザー(東日本3000万/西日本3000万)がいるが、家庭内でFAXといっしょに使いたいなど、ISDNの要望はまだ強い。2005年になっても、すべての人が“電話は必要ない”とはならないだろう。しかし、広帯域では10Mbps、100Mbpsとさらに高速を求めるユーザーもいる。電話を提供する一方で広帯域を広めていくなど、さまざまなサービスラインアップを用意し、その中でユーザーを広帯域に移していきたい」と語った。

NTT東日本代表取締役常務取締役法人営業本部長の森下俊三氏
無線基地局の次世代機イメージモデル。トライアル機と比べると非常に薄い
無線カード型端末の次世代機イメージモデル。トライアル機に比べ、カード部以外の体積が約3分の1程度に小型化されている
PDA一体型端末の次世代機イメージ。こちらもトライアル機に比べ小型化/薄型化となっている

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