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真実のおでん缶(後編)

2000年12月08日 22時14分更新

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チチブデンキ社長とバトルトークさく裂!!

お話をしていただいたのは、チチブデンキ代表取締役の小菅さん。パワフルでチャキチャキの神田っ子といった感じの伯楽だ。彼とのバトルトークを公開する前に、お約束の会社プロフィールを

チチブデンキ

チチブデンキは昭和33年(1958年)に創業した秋葉原でも老舗のショップ。もともとは東芝製品を中心に家電を扱う店舗だったが、ちょうど東芝のモバイル「リブレット」が発売された頃からモバイル専門店となった。同ビル上階に東芝のサービスセンターがある立地も手伝ってか、今では『リブレットの聖地』としてモバイル派には有名である。また、そのほかにもうひとつ、あたかも垣根のように、店舗のまわりをぐるりと囲んだ10台のドリンク自販機のマニアックな品揃えでも名を知られている

――まず「おでん缶」との馴れ初めを教えてください。



現在、自販機の中に並んでいるおでん缶

「ウチの外にある自販機、年間の売上ものすごいんだよ。だから、こっちとしても真剣に取り組んでてさ、新しい製品、おもしろい製品が出たらすぐに入れるようにしてるンだよね。で、ウチの自販機ベンダー業者さんが、天狗缶詰さんの東京営業所の専務さんと知り合いでさ、そのスジから「おでん缶を置いてもらえないか」って話がきたワケよ。こりゃ面白れえってんでためしに扱ってみたら、コレが売れる売れる。むかし某ポッカが缶入りの豚汁を出したときから、食い物はイケるって思ってたから予想通りなんだけど、ここまで名物になるとは思わなかったな」

――おでん缶が現在の極太缶になったのは'95年頃ですが、いつから置きはじめたのですか?

「えっ、そうなの!? ……マズイなぁ。いやね、ワタシ、こないだ某フジテレビの取材でさ、『おでん缶は10年前から置いてる』って思いっきり断言しちまったんだわ。あらら、記憶間違いだねえ。えー、ということは……5年前からだな。うん」

――実際ホントに売れてるのですかねぇ~?

「自販機の売上、毎日集計してるから細かい数字あるけど、まあ平均でいうとな。平日は自販機だと100本前後、店舗内で20本前後。休日になると1.5倍になって、自販機で最低でも150本以上、店舗内でも30本以上は売れてる。10台の自販機に数あるドリンクの中でも、おでん缶はナンバーワンの超優等生だよ」

――関西限定発売で『牛すじ入 おでん』という新味があるのですが、今後扱ってみるご予定は?

「おっ、おもしろいねえ。すぐにでもやりたいな。イヤ、やる。やることにした。アレだろ、君の話じゃ、その、今のおでん缶が新パッケージになるンだろ。セットで揃えたほうが楽しいじゃないか。すぐ業者に連絡しないとな……(矢部注:この12月中に入荷・販売開始することが大決定~!!)」

とそのとき、おお、なんということでしょう。自販機ベンダー業者の方がおでん缶を納品しにきたではないか! 天は我に味方せり!

ぼくは世界中のありとあらゆる神に感謝の祈りをささげ、すぐさま業者の方の腕をつかんで身柄を確保。さあ、アドリブでレッツ☆クエスチョン!

――おでん缶を自販機に入れる時のコツってあるんですか?

自販機業者の方: 「特にないっス。サイズがちょっと特殊だけどべつに問題ないです。フツーっス」

――ちなみにおでん缶は何時間ぐらい暖めればいいんですか?

自販機業者の方: 「そうっスねぇ……。普通のホットドリンクよりは長めに暖めないとダメっスよ。だって中に具(おでん種)があるからね。ショート缶(いわゆる缶コーヒー)だとだいたい2時間でオーケーなんスけど、おでん缶は3時間、いや、5時間だな。5時間あっためるとベリグーだと思います」

約2.5倍! おでん缶は通常の『あたたか~い』ドリンクの2.5倍保温する必要がある!! 思わず『シャア専用おでん缶(「牛すじ入」は赤色だし)』という異常な連想が頭をよぎり、またしてもレア過ぎるお話を聞き出してしまった自分に酔いしれていると、チチブ電機の小菅代表取締役がビシッとひとこと。

「つまりさ、5時間暖めないといけないってことは、そのぶん朝早くに缶を補給しないと、アツアツのおいしい状態でお客様に届けられないっつーわけだ。わかる? たかが自販機って思われてるかもしんないけど、真剣に仕事をしようってんなら、地味な努力が必ずあるもんだ。ウチだってそうだよ。こまめに自販機前を掃除して、空き缶入れがあふれないようにしてるしさ。たかがおでん、されどおでん。たかが自販機、されど自販機なんだよ」

おでん缶は名実ともに秋葉原の名物である。 しかし、その名声を作り出したものは、ただひとつの力だけではなかった。 まずおでん缶そのものが持つ魅力があり、それをベストなコンディションにするための自販機ベンダー業者の誠実な応対があり、さらにお客様に気持ちよく購入していただけるような環境作りを小売店がして、はじめて成立するものだったのだ。 いや、ホントは「おでんを缶入りにしちゃった大バカ野郎の顔を見物しにいっちゃうぜ、ヘイヘイ♪」なんて、めちゃ軽い気持ちで取材はじめたんですけど、ひょうたんから駒、トンデモ話がバンバン飛び出して好奇心のジェットコースター状態でした

予定した取材をすべて終え、私はフィニッシュ記念に「おでん缶」を一本買い、近くの公園へとぶらぶら歩いていった。そして、ふと気がついた。いま、自分がトータルの意味で、世界一おでん缶にくわしい男であることに!
<この知識を世界平和に活かせないだろうか……>
とちくわをほおばりながらじっくり考えてみる。
<難しいような気がする……>
私はおでんダシをゴクリと飲み干し、空き缶をゴミ箱へ放り込むと、再びアキバの町へ歩き出した。
さあ、次は何を食べようか。




  • 天狗缶詰

  • 「おでん缶を作っちゃった会社」ではなくて、 「トップレベルの缶詰業者」としての天狗缶詰の真実がココに! 掲示板にはインタビューにお答えしていただいた伊藤さんによる、熱き魂の書きこみがある。そちらも要チェックだ!
  • ネットショップこてんぐ

  • おでん缶をネットで買うのならココで。 「天狗」で「おでん」なのに、 なんとマウスポインタが流星になる!! このステキすぎる仕掛けに、 ハートがわしづかみになること間違いナシだ
  • チチブデンキ

  • 掲示板コーナーには、謎のおでん缶BBSが! 君も日本全国のおでん缶メイトと 熱き魂の叫びをかわしてみないか?

矢部直治氏プロフィール
某小料理屋4代目若旦那 兼 バカ系体力派ライター。文章力はともかく、料理に関する知識だけは豊富(本人談)。

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